siRNA発現ライブラリーによる新興・再興感染症の原因ウイルスの複製に必須な遺伝子の検索および創薬への応用

文献情報

文献番号
200400912A
報告書区分
総括
研究課題名
siRNA発現ライブラリーによる新興・再興感染症の原因ウイルスの複製に必須な遺伝子の検索および創薬への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木要介((株)ジェノファンクション・研究部)
  • 高崎智彦(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 水谷哲也(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 倉根一郎(国立感染症研究所ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、全遺伝子を対象とした網羅的なsiRNA発現ライブラリーの作製技術が開発された。本研究は、SARS・西ナイル熱・ヒトサル痘などの重篤な新興・再興ウイルス感染症や生物兵器への利用が危惧される天然痘ウイルス等の増殖に必須な細胞遺伝子を同定しこれらの発現を効率良く阻害するsiRNAを新しい抗ウイルス薬として開発することを最終目的とする。
研究方法
Vero E6細胞の遺伝子の網羅的siRNA libraryを構築した。 ACE2及び蚊のJNK のsiRNAを作製した。昆虫細胞のJNK の機能を解析し、蚊の幼虫へのJNKのsiRNA導入による、脱皮阻害を検討した。SARSウイルス感染Vero E6細胞のシグナル伝達系の経時的動態を解析した。ACE2のsiRNAによるSARSウイルスの感染阻止効果を検討した。また、網羅的siRNA libraryを導入したVero E6細胞にワクチニアウイルスを感染させ、細胞障害活性の抑制効果を検討した。
結果と考察
蚊の細胞では、JNKはアポトーシスを抑制し、そのsiRNAが幼虫の脱皮を阻害したことから、西ナイルウイルスを媒介する蚊をsiRNAでコントロールできることを示唆する。一方、SARSウイルス感染Vero E6細胞では、種々のシグナル伝達系が活性化された。ERK,PI3K/Aktはアポトーシスを抑制し、p38の活性化はSTAT3の不活性化を誘導してアポトーシスを促進した。ACE2のsiRNA によりSARSウイルスの感染過程の阻害効果とACE2発現低下が認められた。また、網羅的siRNA libraryを導入したVero E6細胞にワクチニアウイルスを感染させると、生存細胞が確認された。これらの結果は、siRNAにより発現抑制されると少なくともウイルス感染による細胞死を逃れる細胞遺伝子が存在することを示唆する。
結論
SARSウイルス受容体蛋白の発現をsiRNAで阻害することにより感染が抑制できた。西ナイルウイルスを媒介する蚊のJNKを発現抑制することにより幼虫の脱皮を阻害できた。ワクチニアウイルスによる細胞死を抑制するsiRNAが、網羅的siRNA library中に含まれていた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-