可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400907A
報告書区分
総括
研究課題名
可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳 雄介(九州大学大学院医学研究院ウイルス学教室)
  • 星野 洪郎(群馬大学医学部衛生学教室)
  • 森山 雅美(慶応義塾大学医学部微生物免疫学教室)
  • 福島 正和(大鵬薬品工業株式会社応用開発研究所)
  • 曽根 三郎(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
可溶性ウイルス受容体や合成受容体ペプチドは、ウイルスの変異に拘わらずウイルスを中和するため、様々なウイルス感染症における有望な治療薬の候補である。本研究の目的は、これらの製剤によるウイルス感染防御法確立のための基盤的研究であり、ウイルスと受容体の相互認識機構の解明を行う。
研究方法
マウス肝炎ウイルス受容体(MHVR)のウイルス結合部位と考えられる領域の20残基からなるR1(34-53)及び30残基からなるR1 (29-58)を合成し、その中和活性を調べた。麻疹の動物モデルとして、マウスSLAMのVドメインを対応するヒトSLAMのVドメインで置換えた遺伝子置換マウスをES細胞を用いて作製し、GFP発現組み換え麻疹ウイルス(MV)に対する感受性を検討した。HIVのコレセプターorphan GPCRのG protein-coupled receptor 1 (GPR1)のN末端側細胞外領域に由来する27残基合成ペプチドを作成し、HIV感染に対する影響を培養細胞レベルで検討した。
結果と考察
MHVRの20及び30残基からなる合成ペプチドは,いずれも中和活性を示すことはなかった。今後、大腸菌で発現したより長いペプチドを用いて、中和活性部位の最小単位を同定したい。麻疹動物モデルとして、SLAM遺伝子をヒトSLAM遺伝子で置換した遺伝子改変マウスを開発し、組み換えMVを用いて解析した。作成したマウス由来の細胞培養及びマウス個体はMV感染に対して感受性を示した。今後、本マウスの性状を詳しく解析するとともに、抗ウイルス活性物質のスクリーニングに役立てる。HIV-1感染のco-receptorとなりうるGPR1のアミノ末端側細胞外領域の合成ペプチドが、広い範囲のHIV-1に対して感染抑制作用を示した。このペプチドは、ウイルス粒子と結合することで、ウイルスの細胞への結合を阻害した。この結果は、HIV-1の細胞への侵入を阻害する新規ペプチド性抗HIV-1薬開発の糸口となる可能性を示した。
結論
MV感受性の遺伝子組み換えマウスが作成され、今後の野生株MVを用いた感染実験による麻疹の発症機構解明が期待される。また、抗MV剤のスクリーニングに有用であり、抗MV剤開発に重要な基盤研究である。本年度発見された多種のHIV感染を阻止する合成ペプチドは新たな抗HIV剤開発の端緒となることが予想される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-