ボツリヌス神経毒素有効成分を利用したジストニア・痙縮等の治療法の確立と筋萎縮性側索硬化症に対するdrug delivery systemの開発

文献情報

文献番号
200400895A
報告書区分
総括
研究課題名
ボツリヌス神経毒素有効成分を利用したジストニア・痙縮等の治療法の確立と筋萎縮性側索硬化症に対するdrug delivery systemの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
梶 龍兒(徳島大学)
研究分担者(所属機関)
  • 小崎俊司(大阪府立大学)
  • 小熊恵二(岡山大学)
  • 高橋元秀(国立感染症研究所)
  • 原川哲博((財)化学及血清療法研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ボツリヌス菌が産生する毒素は神経・筋接合部に作用し、強力な弛緩性麻痺をきたす。この筋弛緩作用を利用し、微量の精製A型毒素がジストニアなどの筋緊張亢進症の治療に臨床応用されている。しかし現在用いられている毒素製剤は分子量90万の巨大蛋白であり、長期連用で抗体が産生され有効性が消失する例がある。抗体の毒素認識部位もまだ明らかではない。本研究では本毒素の臨床応用を図るため、安全性に注意を払いながら長期保存にも耐える安定性を得るための方法を開発する。また抗体の毒素認識部位についても明らかにする。
研究方法
(1) A型神経毒素中和抗体認識部位の検索
(2) 神経毒素重鎖C末端領域(Hc)リコンビナント蛋白の調製と受容体結合活性:コンビナントHcを調製しB型神経毒素受容体結合部位に関わるアミノ酸残基を同定。
(3) 毒素の安全性:肝炎ウイルスB(PCR), C (RT-PCR), AIDSウイルス (高感度定量法)、プリオン(WB法)による汚染の有無の検討。
(4) 製造方法の改良:植物由来ペプトンに換えてA型ボツリヌス菌の培養を行った。
(5) 動物モデルにて複合筋活動電位の振幅を指標とする毒素評価系:後肢下腿三頭筋に毒素施注後、CMAPの投与前値との比を毒素効力の指標とした。
(6) ヒトにおける臨床研究
 徳島大学倫理委員会に諮り答申を得た後に痙縮、脳血管障害後遺症、重症ジストニア患者の計12名において十分な説明に基づく同意を得、初回神経毒素(NTX)100単位を罹患筋1箇所に施注し、1ヶ月ごとに初回と同じ筋、または他の異常な筋緊張を示す筋に最大500単位まで追加して検討した。安全性、有効性の評価を毎月行った。
結果と考察
抗体は毒素の重鎖成分親水基に結合することが判明し、drug delivery systemの開発に不可欠なリコンビナントの重鎖を作成することに成功した。NTXはBTXに比して高い有効性と安全性を有することが示唆され、少数例ながら日常生活上の動作の改善が認められた。今後更に安全性を検討すると同時により痙縮・ジストニアなどの治療を試みる根拠を得た。
結論
抗毒素抗体の認識抗原が重鎖であることを明らかにし、毒素有効成分NTXは十分な安全性を持ち有効性においても従来のボツリヌス毒素製剤をしのぐ可能性が示唆された。drug delivery systemの開発に必要なリコンビナント重鎖の精製に成功した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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