抗フリーラジカル療法を目指した基盤研究と創薬への応用

文献情報

文献番号
200400894A
報告書区分
総括
研究課題名
抗フリーラジカル療法を目指した基盤研究と創薬への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
綱脇 祥子(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田 清二(昭和大学 医学部)
  • 松永 政司(日生バイオ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 最近、食細胞以外にも活性酸素生成酵素が続々と発見され、今後、フリーラジカルに起因する病態の解明と抗フリーラジカル療法の確立は益々重要となるであろう。各種神経疾患に於いてもフリーラジカルが病態の進行・重症度に関与することが指摘されている。しかし、寿命が短いためその動態は殆ど捉えられていない。そこで、脳虚血時に於ける血中フリーラジカルの動態、及び、酸化ストレスによるDNA損傷と虚血性神経細胞死との関連を探った。
研究方法
 一過性前脳虚血モデルは、両総頚動脈を12分間閉塞し再潅流したマウスを用いた。経時的に血漿を分離し、FREE法により酸化ストレス、抗酸化ポテンシャルを測定した。LPSは腹腔投与した。一過性中大脳動脈閉塞モデルは、中大脳動脈を遮断し、1時間後再灌流したマウスを用いた。脳凍結切片は、8-OH-dG(酸化DNA)、NF200(神経細胞)、COX(ミトコンドリア)、cytochrome cに対する抗体で染色した。
結果と考察
 脳虚血や炎症時にラジカルが産生されることが指摘されている。しかし、脳虚血負荷およびLPS投与3時間後の血漿中の酸化ストレスは予想に反して低下し、抗酸化ポテンシャルは大きく上昇していた。従って、ストレス負荷後、大量の抗酸化性物質が動員され、見かけ上、酸化ストレスが軽減されたと考えられる。
 DNAの酸化ストレスマーカーである8-OH-dG陽性反応は、脳虚血により増加し、核ではなく、主に神経細胞のミトコンドリアに認められた。脳虚血6時間後には、cytochrome cがミトコンドリア周囲の細胞質でも観察され、TUNEL染色と一致した。従って、酸化ストレスによるDNA損傷が、脳虚血・再灌流後、数時間で神経細胞のミトコンドリアに生じてcytochrome cの放出を促し、アポトーシス性神経細胞死を誘導すると考えられる。
結論
 脳虚血やLPS投与によるストレス負荷後、大量の抗酸化性物質が動員され、見かけ上、血中の酸化ストレスが低下することが明らかになった。この背景として、酸化ストレスから個体を防御する機構が循環器系に備わっている可能性が考えられる。
 脳虚血時、核DNAの障害に先立ってミトコンドリアDNAが酸化障害を受ける。その結果、ミトコンドリア誘発性のアポトーシスによって神経細胞死が起こる事が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-03-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-