末梢血幹細胞の分化増殖機構の解明と創薬への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400880A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢血幹細胞の分化増殖機構の解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
葛西 正孝(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高子 徹(第一製薬.東京研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主任研究者らは、Translin(TSN)遺伝子を欠損するマウス(TSN-KO)が造血系細胞の分化増殖に重篤な障害を示すことを明らかにした。 本研究では、TSN-KOマウスにおけるリンパ系細胞と骨髄系細胞の分化成熟機構の破綻について詳細に解析し、造血幹細胞から各前駆細胞への振り分け機構の解明と移植治療への応用を目的とした基盤研究をおこなった。
研究方法
Translin ノックアウトマウスの作製
Translin遺伝子を含むターゲッティング ベクターをES細胞にエレクトロポレーション法で導入した。 次に、遺伝子欠損ES細胞をマウス初期胚に導入し、ES細胞がキメラ個体内で生殖系列に分化したマウスを選択した。 
  
定量的RT-PCR解析
末梢血から全RNAを抽出後、逆転写酵素によりcDNAを合成した。 さらに、定量的RT-PCRによってcDNAを鋳型とした各遺伝子の発現を測定した。
結果と考察
TSN-KOマウスを作製して異常を観察した結果、幼年期のTSN-KOマウスでは末梢血中の白血球数が激減していることを見出した。 この現象は末梢血Bリンパ球がリンパ球前駆細胞(CLP)の段階で分化を停止したことに因るものであった。 CLPは、転写因子、E2A, EBF, Pax-5 によって分化することが知られている。 実際、定量的RT-PCR解析によってTSN-KOマウス末梢血中のE2A, EBF, Pax-5のmRNAの発現は低下していることが明らかとなった。 従って、CLPの分化初期段階でTranslin遺伝子が深く係わっていることを示唆している。 また、生後1年を経過したTSN-KOマウス骨髄では幼若骨髄系細胞が激減し、末梢血では再びBリンパ球の分化停止が認められた。 さらに進行すると、骨髄の造血能は廃絶し、脾臓肥大を伴う髄外造血が観察された。 以上の結果を総合すると、Translin遺伝子は幼若リンパ系細胞と骨髄系細胞の分化成熟過程の両方を制御していると結論することができる。 
結論
遺伝子欠損マウスの異常を解析することによって、Translin遺伝子が幼若リンパ系細胞と骨髄系細胞の分化成熟機構に重要な機能を有していることを証明した。 また、幼年期における造血では末梢血が深く関与していることを支持する実験事実を始めて明らかにした。 今後、末梢血と骨髄に存在する造血幹細胞の関連が明らかにされなければならない。 本研究成果は造血機構の解明と制御因子の発見につながり、最終的には移植治療の発展と医薬品の開発に発展する可能性を示唆している。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-