アルツハイマー病における新規創薬ターゲット検索のための、APP細胞内ドメインの機能解析

文献情報

文献番号
200400875A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病における新規創薬ターゲット検索のための、APP細胞内ドメインの機能解析
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中山 耕造(信州大学)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 俊孝(エーザイ株式会社 シーズ研究所)
  • 樋口 進(国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はNotchやDeltaの解析結果から、γ―セクレターゼによって、I型膜蛋白質の細胞内ドメインが切り出されて核に移行し、特定の転写因子に結合して遺伝子の転写を調節するという新しいシグナル伝達の様式を提唱している。APPも同様のシグナル伝達の様式をとるという仮説のもと、APPの細胞内ドメイン(APPIC)が何らかの細胞内毒性を持ち、それがアルツハイマー病(AD)に関係している可能性を考えて、ADにおける新規創薬ターゲット分子の検索を目的に本研究をおこなっている。
研究方法
APPICの細胞内毒性を調べるために、cDNAをembryonic carcinoma P19細胞に導入して、APPICを発現する細胞を樹立した。また、APPICに結合する転写因子を同定するために、マウスの脳の核蛋白質に、既知の154種類の転写因子のDNA結合配列を合成して加え、APPICに対する抗体を用いて免疫沈降した。転写因子には合成DNAが結合しており、もし転写因子がAPPICに結合すれば、APPIC/転写因子/合成DNAの三者の複合体が免疫沈降されるはずである。この沈降した複合体からDNAを回収し、同じ合成DNAのセットをブロットしたアレイにハイブリダイズさせて、どの転写因子の結合配列が共沈降したかを調べることによってAPPICに結合する転写因子を推定した。
結果と考察
レチノイン酸処理による神経細胞への分化に伴って、APPICを発現するP19細胞が死んでいくのが観察された。しかしながら、親株のP19細胞やコントロールとして用いた発現ベクターのみを導入したP19細胞株では、この神経細胞への分化に伴う細胞死は見られなかった。従って、これらの結果は、APPICが神経細胞に選択的に細胞内毒性を持つことを示唆していると考えられた。また、APPICに結合する転写因子として、E2F1を同定した。さらに、APPICを発現するP19細胞が細胞死をおこすとき、E2F1の量が増加することを示した。E2F1は、アポトーシスを調節していることが知られている。従って、APPICが結合することによりE2F1に何らかの変化がおきて、神経細胞に細胞死を引き起こす可能性が考えられた。
結論
APPICは、神経細胞に選択的な細胞内毒性を持つことを明らかにした。またAPPICは、アポトーシスを調節する転写因子E2F1に選択的に結合することを示した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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