免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索

文献情報

文献番号
200400870A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 淳(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 寺井 勝(千葉大学大学院医学研究院)
  • 平尾 豊(株式会社ベネシス研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、川崎病における免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法の治療標的分子を同定して、その作用機序を明らかにするために、(1)IVIG療法前後での川崎病患者の末梢血中の免疫細胞の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイで解析する、(2)発現が有意に変動した遺伝子を抽出し、蛋白レベルでの発現量を確認した上で、(3)これらの蛋白の発現量変化と川崎病患者の臨床経過との関連、および(4)免疫グロブリンによるこれらの蛋白の産生制御機構、について解析する、(5)川崎病でみられる血管透過性の著名な亢進に対する免疫グロブリンの作用について解析する、以上の5点を目的とする。
研究方法
川崎病急性期の患者から、IVIG療法の開始前と投与後間もない時期にヘパリン加静脈血を採取し、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファイルを解析した。有意に発現の変動した遺伝子群を抽出し、リアルタイムRT-PCR、フローサイトメトリー、ELISAなどを用いてmRNA発現量および蛋白発現量の変動を確認した。培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の管腔形成能は、HUVECをマトリゲル上で培養し、形成された血管長を画像解析で定量した。透過機能は、トランスウェルを用いてFITC dextranの漏出率を蛍光吸光度計で測定した。
結果と考察
(1)IVIG療法の前後で有意に変動する遺伝子群が多数見出された。とくに、モノサイトの多彩な生理機能を担う遺伝子群の発現がIVIG療法後に低下しており、同療法の抑制作用の複雑さが推察された。(2)このうちFCGR1A、FCGR3A、S100A9の3つの遺伝子について、今回川崎病患者では初めて、蛋白レベルでのIVIG療法後の発現抑制を証明した。(3)HUVEC管腔形成能の障害とHUVEC透過性機能の亢進とが、IVIG療法に不応だった患者血清の添加後に強く認められた。
結論
IVIG療法は川崎病患者の末梢血モノサイトの多彩な機能を抑制することが推察された。この中で、血管炎の病態に直接関与する可能性がある遺伝子についてmRNAおよび蛋白レベルでの発現変動を確認した。治療効果判定の指標および新しい治療標的としての応用が期待できる。患者の治療反応性と、治療後血清によるHUVECの管腔形成能と透過性機能の障害との間に相関が認められた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-