病態時の侵害情報伝達に関与するプリン受容体の機能解明

文献情報

文献番号
200400863A
報告書区分
総括
研究課題名
病態時の侵害情報伝達に関与するプリン受容体の機能解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学大学院 薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥光慶一(NTT物性科学基礎研究所)
  • 松岡 功(福島県立医科大学)
  • 野口 光一(兵庫医科大学)
  • 中塚 映政(佐賀大学医学部)
  • 加藤 総夫(東京慈恵会医科大学)
  • 安藤 穣二(東京大学大学院医学系研究科)
  • 小泉修一(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疼痛は発症機序が不明の部分が多く、有効な治療薬や治療法が確立されていないために、多くの患者が痛みに苦いる。我々はこれまでに「末梢神経損傷モデルでは脊髄内ミクログリアが著明に活性化し、ATP受容体サブタイプP2X4が非常に高率に発現すること、そしてP2X4刺激が神経因性疼痛の発症と維持に深く関与する」ことを明らかにした(Nature 424, 778-783, 2003)。本論文は世界的な注目を浴び(Nature, 424: 729-730, 2003)、P2X4タンパクが鎮痛薬の新しいターゲットとして紹介された(Nature Reviews /Drug Discovery 2, 772-773, 2003)。しかし、より本質的な多くの疑問点が残されている、本研究の目的は、これらを明らかにすることにより、難治性疼痛の発症・維持メカニズムを解明し、もって世界的に通用する難治性疼痛に有効な鎮痛薬創製のシーズを得ることにある。
研究方法
研究方法としては、脊髄損傷モデルあるいは慢性炎症モデルによる行動薬理学的手法をメインに据え、それを遺伝子分子生物学的手法(ノックアウト動物、アンチセンスDNA、siRNA、DNAチップ)、組織解剖学的手法(免疫染色、in situ hybridization)、電気生理学的手法(in vivo、培養細胞系あるいは脳スライス標本)および in vitro 画像解析法(電位依存性色素イメージング、カルシウムイメージング等)で立体的に補完する。
結果と考察
代謝型ATP受容体であるP2Y2受容体が一次求心性神経C線維に存在し、痛覚、特にメカニカルアロディニア誘発に重要であることが明らかとなった。炎症性疼痛では、炎症によりDRG神経におけるP2X受容体の興奮性が増強され、侵害受容を亢進させていることが明らかとなった。脊髄後角細胞におけるグルタミン酸を介する興奮性シナプス後電流は、ATP灌流投与によって、初期増強、後抑制という二相性の変化を示した。神経因性疼痛モデルの上位中枢では、アロディニアの成立に扁桃体中心核におけるシナプス伝達の増強が関与していること、および、adenosine A1受容体活性化によってその増強が特異的に抑制されることが明らかとなった。
結論
痛み情報伝達システムの各ステップに発現するATP受容体各種サブタイプが多様に痛みを修飾し、難治性疼痛の発症に関与していることが推測された。

公開日・更新日

公開日
2005-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-