HIV-1制御遺伝子を標的とした新規抗ウイルス剤開発

文献情報

文献番号
200400857A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1制御遺伝子を標的とした新規抗ウイルス剤開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 博幸(京都大学ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 土方 誠(京都大学ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性変異ウイルスの出現が問題となる抗HIV剤の開発においては、多面的にウイルスの複製を抑制することが重要である。この研究課題では新規抗ウイルス剤の標的として、ウイルス固有の遺伝子でありエイズ発症に重要であることがわかっているVprとNefに着目し、その機能解析、及び作用機構を阻害する分子の検索・同定を目指している。
研究方法
1.VprとhAXINの相互作用を介したWnt/β-catenine経路の制御機構について生化学的な解析を加え、分子レベルでの研究の基盤を確立する。
2.Nefによる細胞表面CD4の発現抑制のウイルス学的な意義を検討する。特に重感染阻止に関して、細胞毒性やウイルス複製への影響をリポーターウイルスなどを利用することで解析する。
結果と考察
1.Vprの中央30アミノ酸程度の領域とhAXINのC末100アミノ酸程度の領域が相互作用していることが分かった。更にこの相互作用がこの領域のペプチド断片で阻害されることを見出した。hAXINの過剰発現によりVprによるアポトーシス誘導と細胞周期停止機能が抑制されることが示された。Vprと相互作用する因子として他にnucleophosmin M(NPM,別名B23)を同定している。NPMはリボソームの生合成、およびcentrosome(中心体)の複製などに機能している。Vprの発現により、NPMは核膜周辺に蓄積し核仁への局在が弱まることが確認された。NPMの過剰発現によりVprによる細胞周期停止効果が減弱した。
2.NefのCD4発現制御機能が欠失し重感染が成立すると、感染性ウイルスの産生が減少することが見出された。このことはNefによる重感染阻害はウイルスの増殖性を維持する上で重要な機能を果たしていることを示している。
結論
hAXINとの相互作用を介したVprによる細胞機能の調節を示すことが出来た。この相互作用は下流のTCF/Lefを介して標的細胞であるT細胞の活性化に影響するものと考えられる。NPMに関してはこれまで多くのウイルス性核内因子が相互作用することが報告されており、Vprの機能、特に細胞増殖性への関与が考えられた。NefによるCD4発現抑制がウイルスの増殖性に有意の効果を示したことから、NefやVpuによるCD4発現制御を標的にした抗ウイルス剤検索は新規薬剤開発に向けて有望であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-