抗エイズ薬開発のための小動物評価系の開発と新規治療薬の開発研究

文献情報

文献番号
200400855A
報告書区分
総括
研究課題名
抗エイズ薬開発のための小動物評価系の開発と新規治療薬の開発研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩倉 洋一郎(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 志田 壽利(北海道大学遺伝子制御研究所)
  • 小柳 義夫(東北大学大学院医学研究科)
  • 岡本 尚(名古屋市立大学医学部分子医学研究所)
  • 小糸 厚(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV研究に必要な動物モデルとして、現在霊長類以外に適当な系がないことがエイズ治療薬開発上の大きな障害となっている。本研究では小動物を用いた、HIV感染モデルを開発することにより、発症機構を解析すると共に、抗エイズ薬評価系としての有用性を検証する事を目的としている。
研究方法
HIV感受性小動物を作製するために、宿主間障壁となっている宿主因子をヒト型化することを試みた。また、Balb/c Rag2-/-γc-/- 新生児マウスにヒト臍帯血より分離したCD34陽性細胞を移植し、ヒトT細胞の定着について解析した。一方、HIV感染初期過程の解析のためにHIV/MuLVシュードタイプウイルスのヒトCD4/CXCR4発現マウスリンパ球に対する感染能について検討した。また、アロ特異的CD8+CTLの培養上清中に認められたHIV抑制活性を持つ物質の単離同定を試みた。さらに、遺伝子発現プロフィール解析を実施し、Tatにより発現制御を受ける遺伝子を網羅的に検索した。
結果と考察
mRNAの核外輸送に関与する宿主因子CRM1をヒト型化したマウスを作製した。また、hCRM1を発現するラットの作製に成功し、そのT細胞でHTLV-1が効率よく増殖することを示した。さらにCD4、CXCR4とCCR5を発現させればHIV感受性ラットになることが示唆された。また、Rag2-/-γc-/-マウスにヒト細胞を長期に定着できる実験系を確立した。今後、このマウスへのHIV感染実験を計画している。一方、HIV/MuLVシュードタイプウイルスのHIVレセプター発現マウス細胞へのMuLVゲノムの導入が確認された。また、CTL由来HIV抑制因子を部分精製することに成功した。さらに遺伝子の網羅的検索から、TatがOGG1を誘導することを示し、このことによってHIVおよび宿主のゲノム変異を未然に防止している可能性を示した。
結論
マウスやラットのHIV感受性宿主障壁因子をヒト型化する試みは着実に進んでおり、ほかに、Rag2-/-γc-/- -huマウスやMuLVシュードウイルスの系も開発されつつある。また、Tatのウイルス増殖における新たな役割が明らかにされると共に、CTL由来HIV抑制因子の部分精製に成功した。今後、これらの成果を組み合わせ、個体レベルでの抗エイズ薬評価系を構築する予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-