HIV融合過程を標的とする耐性克服型新規治療薬の開発

文献情報

文献番号
200400854A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV融合過程を標的とする耐性克服型新規治療薬の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 信孝(京都大学大学院薬学研究科)
  • 千葉 卓男(秋田工業高等専門学校)
  • 大高 章(京都大学大学院薬学研究科)
  • 児玉 栄一(京都大学ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不治の病と考えられたエイズは多剤併用療法の著しい効果によりコントロール可能な疾患へと変貌しつつあるが耐性ウイルスの出現から新規分子標的に対する薬剤の開発が必要である。HIV外皮蛋白質gp41に由来するペプチドT-20は融合阻害により抗HIV活性を有しているが高額な治療費と経皮投与という問題がある。本研究ではgp41を介したHIVと細胞膜融合を新規分子標的として1)強い融合阻害活性を有する小分子化合物を合成・同定し、その作用機序を明らかにする。2)より強力で分子量が小さな融合阻害ペプチドを合成すると共に非ペプチド化を目指す。
研究方法
1)C34耐性ウイルスはNL4-3株を用いたdose escalating法によって誘導した。塩基配列を決定し耐性変異を同定した。
2)HIV融合に重要な働きをするgp41領域の2つのα-helix部位をそれぞれMBPとGSTの融合蛋白として合成し、ELISAによる検出系を確立した。
3)合成された種々の化合物の抗HIV活性をMAGI法にて検討した。
結果と考察
1)C34に対する耐性機序の解明
融合阻害ペプチドC34に対する耐性変異を明らかにした。gp41領域はRev responsive element領域もコードしており、この領域の変異はアミノ酸としてだけでなく核酸の配列からの制約を受けるため変異しにくく標的として最適であると考えられた。
2)ペプチド性膜融合阻害剤の低分子化、非ペプチド化
SC34EKはT-20と比べ約70倍の効果を有するペプチドであり低分子化を検討したところ、29アミノ酸までは活性を維持し小分子化することが可能であった。
3)融合阻害活性を有する小分子化合物の作用点の解析および高活性化
ELISA法によって今年度は3剤の融合阻害活性を有する小分子化合物を新たに同定した。
4)ELISA法の最適化
ELISA法で使用する結合ペプチドを改良しT-20の活性測定に初めて成功した。従来の細胞を用いた方法では細胞毒性が強い場合、活性を測定することは事実上不可能であり有用なリード薬剤であってもスクリーニングできなかったが、本方法では融合阻害活性があれば同定できることが示された。
結論
今年度の研究からgp41を標的とした融合阻害剤が抗HIVの標的として優れていることが示され、更に融合阻害活性を有する小分子化合物・ペプチドの同定により今後、新規の融合阻害剤開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-