アミロイド沈着による病的要素の検索に関する研究

文献情報

文献番号
200400847A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイド沈着による病的要素の検索に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
石原 得博(山口大学医学部構造制御病態学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 東海林幹夫(岡山大学大学院医歯学総合研究科神経病態内科学)
  • 前田秀一郎(山梨大学医学工学総合研究部第一生化学)
  • 樋口京一(信州大学大学院医学研究科加齢適応医科学系加齢生物学分野)
  • 池田修一(信州大学医学部神経内科)
  • 松井高峯(帯広畜産大学獣医学部家畜病理学)
  • 河野道生(山口大学医学部寄生体(免疫血液)学)
  • 加藤昭夫(山口大学農学部生物機能科学科)
  • 内木宏延(福井医科大学第2病理)
  • 山田 学(つくば動物衛生研究所)
  • 田平武(国立長寿医療センター研究所)
  • 宇根由美(麻布大学獣医学部病理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アミロイドーシスとは、さまざまな前駆蛋白が共通の線維構造からなるアミロイドとなり,諸臓器に沈着し、障害を引き起こし致死的ともなる疾患群である。しかし,その病態の詳細は不明で、治療法も十分に確立されていない。本研究班では、ヒトからヒト、動物からヒトへのアミロイド線維の導入による発症促進の可能性の検討を中心に、さらに新しい動物モデルの開発、治療法を検討する。
研究方法
培養細胞あるいは各種モデル動物を使用し,伝達・誘発実験,治療・予防法の開発を行う。動物のアミロイドの摂取の可能性を検討する基礎に、ウシ,鳥類等の動物でのアミロイドーシスを検索し,これらのアミロイド線維による発症促進効果を検討する。トランスジェニックマウスを使った新しいモデルの開発を行う。
結果と考察
公的屠殺場で処理されている高齢牛のAAアミロイドーシスの頻度は約5%で,病性鑑定を行ったウシでの頻度は0.35%であった。チーター由来のAAアミロイドにも,マウスアミロドの発症促進効果を認めた。白鳥においても高頻度にアミロイド沈着を認めた。酵母で,分子シャペロンの機能異常により,アミロイド型蛋白の細胞外分泌が増えた。アルツハイマー病のワクチン療法について,Aβ分泌リコンビナントアデノウイルス随伴ウイルスベクターの経口投与腸管免疫により,長期間の抗原提示が確認された。TTRが遺伝性アルツハイマー病モデルマウスの脳内アミロイド沈着を促進した。ALアミロイドーシス発症骨髄腫細胞において細胞増殖がバイカレインによって抑制された。Lipid rafts内のAβオリゴマーの蓄積が脳アミロイドーシスの重要な病態で,メラトニンがこれを減少させた。実験的マウスアミロイドーシスでは,triptolideに発症抑制効果を認めた。FAPモデルマウスでは,ATTRの投与がTTRの沈着を促進した。ヒトβ2Mトランスジェニックマウスを作製した。
結論
アミロイドーシスの発症機序および治療法についての知見を得たが,病態の解明・治療法の開発とともに,アミロイドの経口摂取に伴う危険性についてもさらに検討する必要がある。特に,高齢の牛や鳥で内臓にAAアミロイドーシスがある個体の骨格筋について検索しなければならない。線維の摂取による発症促進作用についてのさらなる詳細な検討が必要であるが,これには,より適切なモデル動物の開発が必須である。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400847B
報告書区分
総合
研究課題名
アミロイド沈着による病的要素の検索に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
石原 得博(山口大学医学部構造制御病態学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 東海林幹夫(岡山大学大学院医歯学総合研究科神経病態内科学)
  • 前田秀一郎(山梨大学医学工学総合研究部第一生化学)
  • 樋口京一(信州大学大学院医学研究科加齢適応医科学系加齢生物学分野)
  • 池田修一(信州大学医学部神経内科)
  • 松井高峯(帯広畜産大学獣医学部家畜病理学)
  • 河野道生(山口大学大学院医学研究科独立専攻応用医工学系生体シグナル解析医学講座細胞シグナル解析学)
  • 加藤昭夫(山口大学農学部生物機能科学科)
  • 内木宏延(福井医科大学第2病理)
  • 山田 学(つくば動物衛生研究所 生産病研究部 病態病理研究室)
  • 田平武(国立長寿医療センター 研究所)
  • 宇根由美(麻布大学獣医学部病理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アミロイドーシスとは、さまざまな前駆蛋白が共通の線維構造からなるアミロイドとなり,諸臓器に沈着し、障害を引き起こし致死的ともなる疾患群である。しかし,その病態の詳細は不明で、治療法も十分に確立されていない。本研究班では、ヒトからヒト、動物からヒトへのアミロイド線維の導入による発症促進の可能性の検討を中心に、さらに新しい動物モデルの開発、治療法を検討する。
研究方法
各種モデル動物を作製し,治療・予防法の開発,伝達・誘発実験を行う。動物からの摂取の可能性を検討する基礎に、ウシ,鳥類等の動物でのアミロイドーシスを検索する。アミロイドのモデルとして,反応速度論的解析をもとに、Aβ蛋白質とfAβからなる生体反応系の部分的なモデル化や,酵母でのアミロイド型蛋白質を分泌するシステム等を用いて、アミロイドーシスの分子機構,発症因子を解析する。Aβアミロイドでは,アルツハイマー病のワクチン療法を検討する。
結果と考察
動物のアミロイドについては,高齢牛では約5%,チーターでは約90%,水禽類でも高頻度にアミロイドを認め,いずれもAAアミロイドーシスであった。アルツハイマー病における病因としてのAβオリゴマー,ダイマーの関与を示し,Aβのワクチン療法についても,経口投与腸管免疫や変性Aβダイマーに特異的な抗体を得て実用性を示した。TTR, APP, SAP, Aβ2M, 等の各種トランスジェニックモデルマウスを開発し,それらを利用した発症機序の検討を行い,共存物質としてのTTRやSAPの重要性を示した。治療法として,メラトニン,Triptolide,抗IL-6抗体等が有力である可能性を示した。アミロイドの発症促進効果の伝播については,各種異種アミロイドをアミロイド発症可能状態の動物に,経静脈,腹腔内および経口投与することで,発症促進効果を確認し,用量依存性であることが示唆された。また母子間では,母乳からの移行も示唆された。線維を含む臓器の導入によっても発症促進効果を認め,その効果は,線維のオートクレーブや強アルカリによる処理よって消失した。
結論
各種アミロイドーシスの病的要素の検索では、特にアミロイド線維による伝播の可能性が示され,アミロイドーシスの治療法・病態の解明とともに,線維の摂取による発症促進作用についてのさらなる詳細な検討が必要と考えられた。これには,適切なモデル動物の開発が必須である。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-