文献情報
文献番号
200400846A
報告書区分
総括
研究課題名
涙腺の分化増殖機構の解明と再生医療への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学 医学部眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 斎藤 一郎(鶴見大学歯学部病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
スティーブン・ジョンソン症候群やシェーグレン症候群などの難治性疾患により消失または著しく障害された涙腺の機能を回復することが本研究の目的である。涙腺・唾液腺細胞に効率よく増殖・分化を誘導する因子を同定するとともに、同定された因子を用いてin vitroで大量培養した組織幹細胞より分化誘導した涙腺の構成細胞を移入することによりその機能の回復をはかる。
研究方法
涙腺・唾液腺分泌障害を呈する患者の新規治療法として組織幹細胞を用いた細胞治療が応用可能か否かを検討する目的で、放射線照射により涙液・唾液分泌障害を誘導したマウスを用いて細胞移入実験を行った。GFPトランスジェニックマウスの涙腺・唾液腺それぞれから採取したSP細胞を放射線照射マウスの当該組織に移入した後、経時的に涙液・唾液分泌量を測定した。また、cDNA microarrayを用いてSP細胞特異的な発現遺伝子を明らかにし、その機能を解析するためにマウス線維芽細胞株(STO細胞)に遺伝子導入した。
結果と考察
GFPトランスジェニックマウスの涙腺・唾液腺それぞれから採取したSP細胞を放射線照射マウスの当該組織に移入した後、経時的に涙液・唾液分泌量を測定した結果、分泌量の回復が認められた。SP細胞を移入した涙腺・唾液腺組織の摘出標本ではGFP陽性細胞が少数しか確認されなかったことより涙液・唾液量の回復はSP細胞から分泌される液性因子などを介した残存組織の活性化による可能性が考えられた。この可能性について検討するためcDNA microarrayを用いた解析により同定されたSP細胞特異的な発現遺伝子をマウス線維芽細胞株(STO細胞)に導入し導入遺伝子を恒常的に発現する細胞株を樹立した。樹立した細胞株のストレス応答性を検討するためにH2O2刺激後にtrypan blue染色による生細胞数を計測するとともに細胞内で産生される活性酸素種(reactive oxygen species, ROS)量を蛍光色素であるCM-H2DCFDA染色後FACSにより解析した。導入遺伝子の一つを恒常的に発現するSTO細胞ではH2O2刺激による細胞死が抑制され、かつ細胞内のROS量も減少していた。
結論
SP細胞を用いた細胞治療が涙液・唾液分泌障害患者の新規治療法として奏効する可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2005-05-13
更新日
-