特定疾患に対する自己免疫モデル開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400838A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患に対する自己免疫モデル開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学医学部皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 西川武二(慶應義塾大学医学部皮膚科)
  • 小安重夫(慶應義塾大学医学部微生物・免疫学)
  • 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 結城伸泰(獨協医科大学神経内科)
  • 石河 晃(慶應義塾大学医学部皮膚科)
  • 桑名正隆(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所)
  • 松井 稔(東京大学医科学研究所神経ネットワーク分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己抗原ノックアウトマウスを用いた新しい方法により実際の病態にできるだけ近い自己免疫モデルマウスを作成し、作製されたモデルマウスを用いて、自己免疫疾患の発症機構および病態の解明、治療法評価系の確立、疾患特異的的治療法の開発をする。
研究方法
自己抗原ノックアウトマウスにおいて欠損した抗原に対する免疫寛容が成立していない事実を巧みに利用し、自己抗原ノックアウトマウス(ドナー)のT細胞、B細胞を野生型のマウス(レシピエント)に移植すると、ドナーのT細胞やB細胞がレシピエントの発現する内在性の抗原に対して反応し、自己抗体の生産や自己組織に対する細胞傷害性T細胞の誘導が期待される。本作成法は、自己抗原ノックアウトマウスが、致死的とならない、免疫系が正常に機能している、という二つの条件を満足すれば、様々な自己免疫疾患に応用が可能である。
結果と考察
 本作成法により、天疱瘡モデルマウスのみならず、アセチルコリン受容体M2ノックアウトマウスの脾細胞移植により、拡張型心筋症モデルマウスが作成された。我々の方法では、短期間に高い抗体価を得られるばかりでなく、同受容体に対する細胞性免疫が誘導出来る点が特長である。
 また、129/SvバックのDsg3-/-マウス、Dsg1トランスジェニックマウスと交配したC57BL/6バックのDsg3-/-マウスを用いることにより、遺伝子背景を同一にしたモデルマウスの作成が可能となり、より詳細な免疫学的な検討ができるようになった。
 天疱瘡モデルマウスより得られたDsg3に対するモノクローナル抗体AK7を用い、IgMを発現するB細胞トランスジェニックマウスを作成した。本マウスではB細胞は正常に成熟し、末梢において、除去、不活化の影響を受けていなかった。さらに、病原性を有する抗体AK23 mAbをAK7-Tgマウスへ接種すると末梢リンパ組織から、B細胞は除去された。病原性抗体により表皮で誘導される危険信号により、自己反応性B細胞を除去する免疫寛容のメカニズムが存在することが示唆された。
結論
我々が開発した自己免疫モデル作成法が広く応用可能であり、開発されたモデルマウスを用いて、自己免疫発症機序を解明する数多くの有用な知見が得られることが実証された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400838B
報告書区分
総合
研究課題名
特定疾患に対する自己免疫モデル開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学医学部皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 西川武二(慶應義塾大学医学部 皮膚科)
  • 小安重夫(慶應義塾大学医学部微生物・免疫学)
  • 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所 免疫研究部)
  • 田中 勝(慶應義塾大学医学部 皮膚科)
  • 結城伸泰(獨協医科大学 神経内科)
  • 石河 晃(慶應義塾大学医学部 皮膚科)
  • 桑名正隆(慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所)
  • 松井 稔(東京大学医科学研究所神経ネットワーク分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、自己抗原ノックアウトマウスが欠損した自己抗原に対する免疫寛容が成立していない事実を利用した新しい方法により、自己免疫モデルマウスを作成することである。さらに、作製されたモデルマウスを用いて、自己免疫疾患の発症機構および病態の解明、治療法評価系の確立、疾患特異的治療法の開発をする事である。
研究方法
自己抗原ノックアウトマウスにおいて欠損した抗原に対する免疫寛容が成立していない事実を巧みに利用し、自己抗原ノックアウトマウス(ドナー)のT細胞、B細胞を野生型のマウス(レシピエント)に移植すると、ドナーのT細胞やB細胞がレシピエントの発現する内在性の抗原に対して反応し、自己抗体の生産や自己組織に対する細胞傷害性T細胞の誘導が期待される。本作成法は、自己抗原ノックアウトマウスが、致死的とならない、免疫系が正常に機能している、という二つの条件を満足すれば、様々な自己免疫疾患に応用が可能である。
結果と考察
自己免疫性皮膚疾患・天疱瘡、自己免疫性心筋炎に対するモデルマウスが作成され、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、自己免疫性神経炎、自己免疫性脱毛症に関してモデルマウスの作成が進行中である。天疱瘡モデルマウスを用いて、天疱瘡を誘導する病的モノクローナル抗体(AK mAb) が複数単離され、それらの抗体のエピトープ解析により、水疱形成の分子メカニズムの解明が進んだ。さらに、AK7 mAb可変領域cDNAより、Dsg3反応性B細胞トランスジェニックマウスを作成し、末梢抗原に対するB細胞トレランスとして新しい機序が存在する可能性が示唆された。さらに、Dsg3特異的自己反応性T細胞が複数分離され、病的抗体産生に関与するT細胞クローンの特徴が明らかになりつつある。これらの結果により、我々が開発した自己免疫モデル作成法は広く応用可能であり、開発されたモデルマウスを用いて、自己免疫発症機序を解明する数多くの有用な知見が得られることが実証された。
結論
本研究により作成されたモデルマウスは、様々な自己免疫疾患の病体解明、新しい治療法の開発に有用なツールとなり、数々の難治性疾患を克服する上で、国際的・学術的・社会的に高い意義を持つ。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-