HB-EGFにかかわる新規拡張型心筋症モデルマウスの作成とその治療薬開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400836A
報告書区分
総括
研究課題名
HB-EGFにかかわる新規拡張型心筋症モデルマウスの作成とその治療薬開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター生理機能検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 宮武 邦夫(国立循環器病センター)
  • 駒村 和雄(国立循環器病センター研究所)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学)
  • 高島 成二(大阪大学健康体育部)
  • 目加田 英輔(大阪大学微生物研究所)
  • 東山 繁樹(愛媛大学医学部第二医科)
  • 小粥 章子(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
増殖因子HB-EGFの心筋における役割を生化学的に検討するとともに、HB-EGFの心筋保護因子としての作用を検討した。さらに高感度ELISAを作成し、ヒト心不全症例におけるHB-EGFの血中濃度測定をおこなった。またHB-EGF遺伝子改変心不全モデルマウスの表現型を統一させ、心不全治療薬のスクリーニングを開始した。
研究方法
ラット培養心筋細および各種、HB-EGF遺伝子改変マウスを使用して、HB-EGFの心筋細胞保護作用を有するかどうかを検討した。さらにヒトHB-EGF用の高感度ELISA作成を行った。HB-EGF遺伝子欠損マウスを昆虫ウイルス由来の高純度ヒトHB-EGFで免疫することによりmonoclonal抗体を作成、これらを組み合わせることによりサンドイッチELISAの作成を行った。次にHB-EGF遺伝子改変拡張型心筋症モデルマウスにおいて、遺伝的背景の均一な表現型を得られる系統の選別を行った。また、このマウスを使用して心不全死をエンドポイントとした心不全治療のスクリーニングをおこなった。
結果と考察
ラット心筋細胞では各種心筋障害をHB-EGFは抑制した。またドキソルビシン腹腔内投与による心筋障害を作成すると、野生型に比し、HB-EGF強制発現マウスでは軽度の、HB-EGF欠損マウスではより重度の心筋障害をきたした。このことよりHB-EGFは心筋細胞障害時に心筋保護的に働くことが示された。さらに本研究にて作成されたELISAはヒト血清中の10pg/mlのHB-EGFを測定可能となった。本EILSAを利用してヒト血清中でのHB-EGFを測定し、疾患との関連を検討していく予定である。 またマウスを心不全自然発症マウスとして薬剤や他の治療法のスクリーニングに利用するため遺伝的背景の均一化を行った。これらのマウスを使用して、低用量のβ遮断剤を経口投与し、非投与群と比較し生命予後の改善が見られた。今後他の薬剤のスクリーニングにも使用する予定である。
結論
EGFファミリーのリガンドの一つであるHB-EGFがほかの増殖因子にはない特異的生理作用を心筋細胞に対して及ぼすことが明らかになった。HB-EGFは今後新しいタイプの心不全治療薬となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-07-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400836B
報告書区分
総合
研究課題名
HB-EGFにかかわる新規拡張型心筋症モデルマウスの作成とその治療薬開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター生理機能検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 宮武 邦夫(国立循環器病センター)
  • 駒村 和雄(国立循環器病センター研究所)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学)
  • 高島 成二(大阪大学健康体育部)
  • 目加田 英輔(大阪大学微生物研究所)
  • 東山 繁樹(愛媛大学医学部第二医科)
  • 小粥 章子(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性拡張型(うっ血型)心筋症は厚生労働省の特定疾患であると同時に循環器領域ではもっとも重要な疾患のひとつである。病因はいまだ不明でその治療法確立のためにはモデル動物の存在が必須であった。増殖因子HB-EGFはカテコラミンなどの生理活性物質の刺激により、心筋細胞から遊離し心筋特異的なシグナルをきたすことが知られている。本研究ではHB-EGFの生化学的解析、遺伝子可変マウスの解析、ヒトサンプルにおけるHB-EGFのシグナルなどを総合的に評価し、HB-EGFの心不全における役割、治療薬としての可能性を明確にすることを目的とした。
研究方法
ラット培養心筋細胞を利用したHB-EGFの心筋でのシグナル経路の解明、及び各種HB-EGF遺伝子改変マウスが示した拡張型心筋症様病態の発症メカニズムの解析をおこなった。さらにそれら心不全マウスを利用した心不全治療薬のスクリーニングを行った。 臨床例では家族性心不全症例におけるHB-EGF関連遺伝子の解析、ヒトHB-EGFの血中濃度測定のための高感度ELISAの作成をおこなった。
結果と考察
HB-EGFはG共役受容体の刺激により、細胞膜のプロセシング酵素ADAM12により遊離し、心筋肥大及び心筋保護的なシグナルを惹起することが明らかになった。細胞膜からのHB-EGFの遊離の重要性はHB-EGFの遺伝子改変マウスが心臓特異的に障害をきたしたことから明らかになった。さらにヒト心不全症例においてもADAM12に変異が検出され、疾患との関連性が示唆された。今後はHB-EGFが心不全治療薬として使用できるかを検討すると共に、ヒト心不全と類似して予後の一定したHB-EGF遺伝子改変心不全モデルマウスは敏速な心不全治療法のスクリーニングに使用できると期待される。
結論
生化学的解析、臨床検体にいたるまでHB-EGFの特にその心臓における機能を詳細に検討した。HB-EGFは心臓に多く発現しているがその作用には細胞膜からの遊離が重要な調節過程でありヒトを含めた心不全の発症に関与することが明らかとなった。さらにHB-EGFの心不全治療薬としての可能性を示したと共に、心不全の病態マーカーとして血中HB-EGFの測定が臨床応用できる可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2005-07-11
更新日
-