先天性水頭症に関する調査研究;分子遺伝子学アプローチによる診断基準・治療指針の策定と予防法・治療法の開発

文献情報

文献番号
200400816A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性水頭症に関する調査研究;分子遺伝子学アプローチによる診断基準・治療指針の策定と予防法・治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 麻美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター先進医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部生理学教室)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター企画調査部)
  • 金村 米博(独立行政法人産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研究部門 組織・再生工学研究グループ)
  • 上口 裕之(理化学研究所 脳科学総合研究センター神経成長機構研究チーム)
  • 坂本 博昭(大阪市立総合医療センター小児脳神経外科)
  • 佐藤 博美(静岡県立こども病院 脳神経外科)
  • 白根 礼造(宮城県立こども病院 脳神経外科)
  • 鈴森 薫(名古屋市立大学医学部医学研究科 生殖・発生医学講座)
  • 中川 義信(独立行政法人国立病院機構 香川小児病院 脳神経外科)
  • 中村 康寛(聖マリア病院 病理部)
  • 秦 利之(香川大学医学部 母子科学講座周産期学婦人科学)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院医学研究科 分子病態病理学)
  • 森竹 浩三(島根大学医学部 脳神経外科)
  • 師田 信人(国立成育医療センター脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能制御外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性水頭症は単一の疾患ではなく、適切な時期に治療を行えば、正常発達を得られるものがある反面、予後の極めて不良な水頭症も少なくない。先天性水頭症は1000出生あたり7から8人と少なくない疾患である。現在ではその55%は胎児期に診断されている。この研究の目的は、胎児期水頭症の診断と治療ガイドラインを作成すること、先天性水頭症に分子遺伝子学的アプローチを取り入れることによって、予後不良因子を明らかにし、水頭症の発症機序を明らかにし、発症リスクの同定・予防法の開発、将来的には水頭症の治療をも目指すものである。
研究方法
本研究班は胎児期水頭症の診断基準と治療指針のガイドラインの策定、水頭症遺伝子バンクの形成と遺伝子解析、水頭症の治療法開発の為の基礎的研究を3つの柱に班研究を展開してきた。
結果と考察
①臨床系を中心に産科・新生児科・放射線科・臨床遺伝・小児脳神経外科・疫学の専門家でプロジェクトを作りは、わが国で始めて胎児期水頭症の診断と治療のガイドラインを完成させた。②また水頭症遺伝子バンクで同定された神経接着因子L1遺伝子異常を有する水頭症の臨床解析を行い、重症型の診断基準を明らかにした。臨床レベルに達しており、出生前診断のツールとして確立しつつある。③神経接着分子L1の機能解析ではアンキリンGが神経突起の極性維持に関与することを明らかにしたRNA結合蛋白質Musashiの水頭症発症機序の解明を行い、標的mRNAであるmNumbを介してNotchシグナルが抑制され、中脳水道付近の神経幹細胞の未分化性が維持できなくなった結果形成されたポリープ様構造物が中脳水道狭窄症をきたしたものであると考えられた。発生過程で神経組織の主要なアクチン結合モーターであるNonmuscle myosin heavy chain II-B遺伝子変異マウス(NMHC-Bのモーター活性の低いR702C)を作成し、神経細胞の移動や突起伸展が高度に複雑な顔面神経核、橋核、小脳にとりわけ顕著な形成不全を示す事を明らかにした。これらの基礎的研究は水頭症の難治化の要因を明らかにするものである。
結論
これまでほとんど手がつけられていなかった胎児期水頭症のガイドラインを発刊できたことの成果は特に大きい。これらの研究の成果は、水頭症研究に新たな新展開をもたらすものであり、今後の治療への可能性の期待を抱かせるものである。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200400816B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性水頭症に関する調査研究;分子遺伝子学アプローチによる診断基準・治療指針の策定と予防法・治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 麻美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター先進医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部生理学教室)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター企画調査部)
  • 金村 米博(独立行政法人産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研究部門 組織・再生工学研究グループ)
  • 上口 裕之(理化学研究所 脳科学総合研究センター神経成長機構研究チーム)
  • 坂本 博昭(大阪市立総合医療センター小児脳神経外科)
  • 佐藤 博美(静岡県立こども病院 脳神経外科)
  • 白根 礼造(宮城県立こども病院 脳神経外科)
  • 鈴森 薫(名古屋市立大学医学部医学研究科 生殖・発生医学講座)
  • 中川 義信(独立行政法人国立病院機構 香川小児病院 脳神経外科)
  • 中村 康寛(聖マリア病院 病理部)
  • 秦 利之(香川大学医学部 母子科学講座周産期学婦人科学)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院医学研究科 分子病態病理学)
  • 本山 昇(国立長寿医療センター研究所 老年病研究部)
  • 森竹 浩三(島根大学医学部 脳神経外科)
  • 師田 信人(国立成育医療センター脳神経外科)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能制御外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性水頭症は先天異常の中で心室中隔欠損症などについで4番目に多い疾患である。現在ではその55%は胎児期に診断されている。先天性水頭症は単一の疾患ではなく、適切な時期に治療を行えば、正常発達を得られるものがある反面、予後の極めて不良な水頭症も少なくない。この研究の目的は、先天性水頭症に分子遺伝子学的アプローチを取り入れることによって、予後不良因子を明らかにし、胎児期水頭症の診断と治療ガイドラインを作成すること、水頭症の発症機序を明らかにし、発症リスクの同定・予防法の開発、将来的には水頭症の治療をも射程に入れている。
研究方法
本研究班は胎児期水頭症の診断基準と治療指針のガイドラインの策定、水頭症遺伝子バンクの形成と遺伝子解析、水頭症の治療法開発の為の基礎的研究を3つの柱に班研究を展開してきた。ガイドラインの作製には、全国疫学調査や予後調査を行い、文献レヴューと討議を重ねた。
結果と考察
①本年4月に「胎児期水頭症の診断と治療ガイドライン」を完成した。②また水頭症遺伝子バンクには40施設より450検体が集積し、X連鎖性遺伝性水頭症における神経接着因子L1遺伝子の解析に関しては、信頼度が厚く、これまでに国内外からの100検体近い解析を行った。臨床レベルに達しており、出生前診断のツールとして確立しつつある。③水頭症の治療法開発の為の基礎的研究においては、神経接着因子L1CAMの機能解析、L1CAM遺伝子異常を有するヒト神経幹細胞/前駆細胞用いた研究の中で、水頭症の難治性要因を明らかにした。またノックアウトマウスが重症の水頭症を呈する3つの分子(RNA結合蛋白質Musashi、発生過程で神経組織の主要なアクチン結合モーターであるNonmuscle myosin heavy chain II-B、DNA polymerase λの上流の新規遺伝子DKFZP566F08)の研究から明らかになってきたことは、いずれも水頭症の発症が、脳室の周囲に存在するといわれている神経幹細胞や前駆細胞の増殖や脳脊髄液の動きに深く関与している可能性を示唆するものであった。
結論
これまでほとんど手がつけられていなかった胎児期水頭症のガイドラインを発刊できたことの成果は特に大きい。これらの研究の成果は、水頭症研究に新たな新展開をもたらすものであり、今後の治療への可能性の期待を抱かせるものである。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-