ベーチェット病に関する調査研究

文献情報

文献番号
200400805A
報告書区分
総括
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
金子 史男(福島県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 磯貝 恵美子(北海道医療大学歯学部)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所)
  • 小林 和人(福島県立医科大学医学部附属生体情報伝達研究所)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 石ヶ坪 良明(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 川島 秀俊(さいたま赤十字病院)
  • 水木 信久(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 小熊 恵二(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中村 晃一郎(福島県立医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成15年度(2003年)に改訂されたベーチェット病診断基準をもとに診断されたベーチェット病(BD)患者の試料を用いて、疫学的、免疫学的、細胞生物学的に疾患病態の検討を行う。
研究方法
1.前年度の研究方法を踏襲し、BDの病因・病態の更なる解析とともに、新しい治療法の開発を行った。
2.疫学面では一次調査で回答のあった施設を対象に患者数、予後、QOL調査を分析し、口腔内アフタに対するQOL調査についても検討した。
結果と考察
BD発症に関わる責任遺伝子の検討として、地中海沿岸諸国及び日本人患者のHLA-B*510101浸透性の解析から本症が中東地域に発症し、東方に伝播した可能性が示された。患者口腔内細菌S.sanguinis(旧S.sanguis)のheat shock protein (HSP)-65及びそのヒトホモログHSP-60間の相同ペプチドは患者T細胞エピトープと対応する。そのペプチドは患者末梢血単核球の炎症性サイトカイン産生を抑制し、免疫寛容を誘導できる可能性がある。活動期BD病変部組織および末梢血単核球には特徴的なT細胞が増加し、これらは治療により減少する。Th1反応によって産生されたTNF-α、IFN-γは細胞内の転写因子signal transducer and activator protein-1 (STAT-1)発現を増強、ケモカイン受容体CCR5、CXCR3の発現を亢進させた。患者の末梢血単核球は微生物由来CpG-DNA刺激で増殖し、その反応にはtoll-like receptor(TLR)-9が関与している。腸管型BD患者の診断と治療法の診療ガイドラインの試案を作成した。経口ステロイド剤使用法の見直しと、ステロイド徐放剤の眼内挿入の治療効果、シクロスポリン感受性に関わる遺伝子多型を検討した。マウスおよびラットの実験的自己免疫性ぶどう膜炎を利用した新規の治療法を試みた。2002年に15,000人受療、発症年齢は男女共30才代が最多で1972年調査より10才ほど高かった。
結論
BDのシルクロード沿岸諸国における発祥・伝播様式、一般細菌に対する過剰な免疫異常、および疫学や治療的な新知見が数多く得られ、より一層疾患の理解が深められた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400805B
報告書区分
総合
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
金子 史男(福島県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 磯貝 恵美子(北海道医療大学歯学部)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所)
  • 小林 和人(福島県立医科大学医学部附属生体情報伝達研究所)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 石ヶ坪 良明(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 川島 秀俊(さいたま赤十字病院)
  • 水木 信久(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 小熊 恵二(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中村 晃一郎(福島県立医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14年(2002年)からの3年間、ベーチェット病(BD)の病因・病態、治療に関する研究と疫学およびQOL(quality of life)について調査研究を行う
研究方法
1.地中海諸国、日本人BD患者から集めたpooled DNAをマイクロサテライトマッピング法で遺伝子解析を行なう。
2.Streptococcus(S.) sanguinis(旧 sanguis)(113-20株)から単離したBes-1遺伝子を用いてヒト眼網膜蛋白塩基配列(Brn-3b)との相同性の有無を解析し、BD患者の病変部からpolymerase chain reaction(PCR)法およびPCR-in situ hybridization(PCR-ISH)法にてBes-1の検出を試みた。
3.S.sanguinis由来熱ショック蛋白(HSP)-65とヒトHSP-60との相同部の合成ペプチドを抗原としてBD患者末梢血単核球細胞(PBMC)のサイトカイン産生に与える影響を検討した。
4.活動期BD患者のPBMC、病変部の免疫担当細胞の生物学的動態について検討した。
結果と考察
1.疾患感受性遺伝子の同定:BDはHLA-B51の近傍に疾患遺伝子の存在が推定される。HLA-B*510101前後のマイクロサテライトマーカーを用いたマッピング解析によって、BDは東方より伝播したものと推定した。
2.原因外因子としてのBD患者の口腔内細菌、S.sanguinisの関与について
1)S.sanguinisのBes-1遺伝子は眼網膜蛋白Brn-3bと60%の相同性がある。BDの各病変部にPCR法とPCR-ISH法にてBes-1の存在を確認した。
2)S Sanguinis HSP-65とヒトHSP-60には、6ヶ所に相同部が存在する。これらの合成ペプチドはBD患者PBMCのサイトカイン産生を抑制し、免疫寛容を誘導できる可能性を示した。
3.BD患者の活動期ではTh 1型細胞傷害性細胞が亢進し、寛解期には抑制され、病変部では炎症亢進作用を示すgranulysinが出現していた。
4.生体に生ずる抗炎症性因子のheme oxygenase-1の誘導、好中球、粘膜細胞からのhuman cationic antimicrobial protein-18のS.sanguinisに対する抗菌作用を利用して、治療への応用を検討した。
5.腸管型BDの診療ガイドラインを試案した。
結論
BDの発症にHLA-B51を中心とする内因子が存在し、外因子に対する異常免疫獲得が関与することが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-