若年黄斑変性カニクイザルの病理学的および分子生物学的解析

文献情報

文献番号
200400799A
報告書区分
総括
研究課題名
若年黄斑変性カニクイザルの病理学的および分子生物学的解析
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(国立病院東京医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 徹(国立病院東京医療センター臨床研究センター)
  • 寺尾 恵治(国立感染症研究所筑波霊長類センター)
  • 吉川 泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 溝田 淳(順天堂大学浦安病院眼科)
  • 西村 俊秀(東京医科大学臨床プロテオームセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
黄斑は角膜と水晶体によって収束した光が網膜上で結像する領域で、視覚を司る視細胞が最も密に集中しており、視力を決定する重要な部位である。ここが障害されると著しい視力低下、ひいては法的失明に至り、その代表的な難治性眼疾患に加齢黄斑変性などがある。加齢黄斑変性は日本でも高齢化や生活の欧米化にともなって患者数は増加の一途をたどっており、その原因解明と治療法の開発は急務である。黄斑は解像度の高い視力を獲得した霊長類や鳥類で発達しており、通常の実験動物として利用されているラットやマウスなどの夜行性のゲツ歯類には存在しない。加齢黄斑変性はその詳細な発症機序は明らかにされていない。その原因の一つとして適切な動物モデルの不在が上げられる。今回我々が発見した若年性黄斑変性カニクイザルは世界で唯一の大家系として生存する黄斑変性動物モデルである。
研究方法
(1)交配実験による遺伝子変異ホモ疾患カニクイザルの作製
(2)若年黄斑変性カニクイザルのデータベースの構築
(3)ドルーゼンのプロテオーム解析
(4)若年性黄斑変性カニクイザルの連鎖解析
(5)加齢黄斑変性カニクイザルの自己免疫抗原体の解明
(6)加齢黄斑変性患者の血液検体の収集と質量分析計による血漿解析による疾患マーカーの検索
結果と考察
疾患サルのドルーゼン組成を質量分析計によって解析し、ヒトと比較した結果、疾患サルのドルーゼンにはヒトと同様に補体活性因子、補体活性抑制因子、クリスタリンなどが存在することが明らかになった。若年性黄斑変性カニクイザルは生後2年でヒトと同様なドルーゼンを黄斑と網膜周辺部に蓄積していることが直接的な方法で確認された。若年性疾患サルの原因遺伝子検索についてはヒト黄斑変性の原因遺伝子であるELOVL4, TIMP, ABCA4, RDS, VMD2, EFEMP1について遺伝子変異を検索した結果、相関性はなかった。連鎖解析を行った結果、染色体6qに位置するマーカーに対して相関性を示した。加齢性黄斑変性カニクイザルの血清中に含まれる自己免疫抗体の検索を行った結果、網膜に含まれる2種類のタンパク質について自己免疫抗体が存在することが明らかとなった。
結論
質量分析計によるドルーゼンの網羅的プロテオーム解析によって、加齢性のサルやヒトのドルーゼンときわめて組成が類似していることが明らかとなった。また、疾患サル家系の連鎖解析によって染色体6qに原因遺伝子の連鎖が確認され、ポジショナルクローニングが進行中である。加齢性黄斑変性カニクイザルの自己免疫疾患抗原分子を2つ同定し、ヒトでの解析を開始した。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-