拡張型心筋症に対するβ遮断薬療法の個別化医療実現のための研究

文献情報

文献番号
200400797A
報告書区分
総括
研究課題名
拡張型心筋症に対するβ遮断薬療法の個別化医療実現のための研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 純一(大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 北畠 顕(北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学)
  • 岡本 洋(北海道大学医学部付属病院循環器内科)
  • 東 純一(大阪大学大学院薬学研究科臨床薬理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
拡張型心筋症は、進行性に心機能が低下し、心不全増悪そして死にいたる疾患であるが、β遮断薬が心不全の進行を抑制し、死亡率の低下をもたらす。しかしながら、β遮断薬療法に関する未解決の問題点として、(1)β遮断薬療法に対しresponder、non-responderが存在し、non-responderへのβ遮断薬の投与は心不全を増悪させる危険性が高いこと、(2)最終投与量が、症例により著しく異なることから投与目標量に指標がないこと、がある。そこで、(1)アドレナリン受容体、酸化ストレス関連の遺伝子多型に基づきβ遮断薬療法に対する反応性を予測し、responder、non-responderの推定を実現すること(2)β遮断薬代謝酵素の多型により血中濃度を予測し最終投与量の目標値を遺伝子多型ごとに設定すること、を目的として、本研究を施行した。
研究方法
遺伝子解析手法はprimer extension法を用い、SNPs解析を行った。アドレナリンシグナルに関係する遺伝子群の中から、日本人における多型頻度が、約10%以上である遺伝子多型もしくは文献的に機能変化が明らかな多型を抽出し、総数73遺伝子173SNPs、2Ins/Delに関して多型頻度とβ遮断薬に対する反応性を検討した。
結果と考察
ACEとeNOSの遺伝子多型の組み合わせにて、β遮断薬に対する有効性を予見できる可能性が示された。また、responder/ nonresponderの各群内における変異アレルの偏りを解析した結果、ノルアドレナリン系賦活化関連遺伝子(2遺伝子)、代謝関連遺伝子(1遺伝子)、受容体後シグナル伝達関連遺伝子(2遺伝子)、アドレナリンシグナル下流シグナル関連遺伝子(1遺伝子)、その他(1遺伝子)に有意な相関(p値0.05未満)を確認した。さらに、これらの遺伝子多型を組み合わせて評価することにより、約85%の確率でresponder/non-responderが予測可能である計算式を考案できた。β遮断薬の代謝酵素であるCYP2D6の遺伝子多型と反応性・薬物血中濃度の相関に関する検討では、CYP2D6の遺伝子多型と反応性に相関を認めず、また、薬物血中濃度と薬物反応性にも相関は認められなかった。
結論
本研究の結果は、β遮断薬の心機能改善の作用機序のみならず心不全の病態解明に貢献するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200400797B
報告書区分
総合
研究課題名
拡張型心筋症に対するβ遮断薬療法の個別化医療実現のための研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 純一(大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 北畠 顕(北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学)
  • 岡本 洋(北海道大学医学部付属病院循環器内科)
  • 東 純一(大阪大学大学院薬学研究科臨床薬理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
拡張型心筋症は、進行性に心機能が低下し心不全が増悪し死にいたる。近年β遮断薬がその進行を抑制することが示されたが、β遮断薬療法に関する問題点として、(1)β遮断薬療法に対しresponder、non-responderが存在し、non-responderへのβ遮断薬の投与は心不全を増悪させる危険性が高い、(2)最終投与量が症例により異なり投与目標量の指標がない、がある。本研究は(1)アドレナリン受容体、酸化ストレス関連の遺伝子多型に基づきβ遮断薬療法に対する反応性を予測し、responder、non-responderの推定を実現する、(2)β遮断薬代謝酵素の多型から血中濃度を予測し最終投与量の目標値を遺伝子多型ごとに設定する、を目的とした。
研究方法
アドレナリン受容体遺伝子多型を検討し、拡張型心筋症での遺伝子多型出現頻度を健常人と比較した。またβ遮断薬投与に対するresponderとnon-responderに分類し、アドレナリン受容体や酸化ストレス関連の遺伝子多型の頻度解析を行った。また、β遮断薬治療をうけている拡張型心筋症患者でのCYPs遺伝子多型を解析するとともに血中薬物濃度の測定を行った。遺伝子解析手法としては、複数の手法を組み合わせ、SNPs解析のバリデーションを行った。
結果と考察
アドレナリン受容体遺伝子多型β1Ser49Gly、β1Arg389Gly、β2Arg16Gly、β2Gln27Gluに関しては、日本人では拡張型心筋症での頻度増加を認めず、アドレナリンα2C受容体の変異も、日本人においては重要性が低かった。またACEとeNOSの遺伝子多型の組み合わせや、ノルアドレナリン賦活関連遺伝子(2遺伝子)、代謝関連遺伝子(1遺伝子)、受容体後シグナル伝達関連遺伝子(2遺伝子)、アドレナリンシグナル下流シグナル関連遺伝子(1遺伝子)、その他(1遺伝子)に、β遮断薬に対する反応性との有意な相関(p値0.05未満)を確認した。β遮断薬の代謝酵素であるCYP2D6の遺伝子多型と反応性・薬物血中濃度の相関に関する検討では、CYP2D6の遺伝子多型と反応性に相関を認めず、また、薬物血中濃度と薬物反応性にも相関は認められなかった。
結論
本研究の結果に基づきβ遮断薬療法の適否を個別に判定するフローチャートを作成すれば、拡張型心筋症に対するβ遮断薬療法の個別化医療を実現する第一歩となりうる。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-02-28
更新日
-