文献情報
文献番号
200400794A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性腸疾患の画期的治療法に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 守(国立大学法人東京医科歯科大学大学院(消化器病態学))
研究分担者(所属機関)
- 日比 紀文(慶應義塾大学医学部(内科))
- 浅香 正博(国立大学法人北海道大学大学院(消化器内科学))
- 坪内 博仁(国立大学法人宮崎大学医学部(内科学第二講座))
- 高後 裕(国立大学法人旭川医科大学(内科学第三講座))
- 岡崎 和一(関西医科大学(内科学第三講座))
- 石川 博通(慶應義塾大学医学部(微生物学・免疫学))
- 中村 和彦(国立大学法人九州大学大学院(病態制御内科))
- 鈴木 健司(国立大学法人新潟大学大学院医歯学総合研究科(消化器内科学分野))
- 竹田 潔(国立大学法人九州大学生体防御医学研究所(発生工学分野))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
71,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は難治性炎症性腸疾患に対し、これまでとは異なる発想による病態遷延機構の解析を行い、それに基づく画期的治療法の開発とその臨床応用を目指すものである。主任研究者が独自に見いだしてきた、炎症性腸疾患の病態維持機構には「腸管免疫機構の破綻」および「傷害粘膜上皮の再生不全」の両者が深く関わる新しい考え方を基盤とし、腸粘膜局所での免疫調節と上皮再生の連鎖・協調を人為的に統合制御し、粘膜局所免疫調節および組織再生誘導を促す新規治療法開発を目指す萌芽的研究を行い、患者のQOL向上に直結する治療様式を開発することを目的とする。
研究方法
「粘膜局所免疫調節」および「組織再生誘導」を促す新規治療法開発を目指し、1) 上皮細胞再生のための分子療法、細胞移植療法の確立、2) 腸管特異的免疫調節機構を標的とした治療法開発、3) 選択的細胞除去療法開発、および4) 分子・細胞デリバリーシステムを用いた治療法確立、の4プロジェクトを設定し研究を進めた。
結果と考察
1)では腸炎モデルマウスを用いHGF投与の効果を検討しその有効性を明らかにした。また、急激な上皮傷害を起こしたヒト腸管上皮において骨髄由来細胞が未分化上皮細胞、および多様な上皮機能を持った成熟した腸管上皮細胞の両者へ分化し、腸管上皮機能の回復に貢献することを示した。2)では、基礎研究レベルにおいて、自然免疫制御分子あるいはγδ型IELのIBDへの関与、小腸パネート細胞が有する抗菌活性に関する知見、および研究代表者による粘膜IL-7機構に関わる新しい知見など、大きな進展が得られた。3)では、潰瘍性大腸炎に対する血球除去療法に関わる臨床研究の推進とともに、制御性Tリンパ球の選択的除去を導入した改変型白血球除去療法の開発が進められた。4)については、高分子バイオマテリアルを用いた免疫調節剤封入マイクロカプセルを作成し、モデル動物においてその安全性と有効性が確認された。
結論
本研究プロジェクト開始後、社会的インパクトの高い論文発表が可能であったのみならず、臨床応用の点でも4件のプロジェクトが分担研究者の施設で臨床試験としてすでに承認あるいは承認間近となるなど、十分な成果が挙げられつつある。これら成果は基礎研究の先進性を確保しつつ、かつ既存の炎症性腸疾患治療を凌駕し患者QOLの改善にも有効な画期的治療開発を可能にすることが予想され、国際的にも評価に耐え得る研究である。
公開日・更新日
公開日
2005-04-27
更新日
-