プリオン複製機構の解明とプリオン病の治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400789A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン複製機構の解明とプリオン病の治療法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
金子 清俊(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第7部)
研究分担者(所属機関)
  • 北條 浩彦(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第3部)
  • 桑田 一夫(岐阜大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトプリオン病に対する治療法の開発を目的とする。
研究方法
我々が同定したUnfoldinは、新規クラスの分子シャペロンである。今までの研究結果をを元に、(1) Unfoldin同定法の哺乳動物細胞への応用による異常プリオン蛋白質の複製に関与する補助因子(プロテインX)の同定と、(2) Unfoldinのin vivoにおける活性制御機構を解明し、コンフォメーション病等の治療・予防法を開発することを主たる目的としている。研究分担者の役割分担としては、岐阜大学医学部の桑田は、NMRを用いた相互作用の検討を分担し、国立精神・神経センター疾病研究第三部の北條は、RNAi等の遺伝子手法による検討を分担する。
結果と考察
本年度は、実際の生体内凝集体に対する解きほぐし能を検討するために、ピック病脳に蓄積する異常凝集体であるピック小体を用いた検討を行った。レーザーマイクロダイセクターでピック小体を単離回収し、ウエスタンブロット法における抗体との反応性を指標として検討した結果、Unfoldinはサンプルバッファー処理にすら極めて抵抗性の高いピック小体を容易に解きほぐし、抗体による検出能を500倍以上改善した。プリオン病におけるプリオン斑をはじめ、種々の疾患における難溶性異常凝集体の構成成分を、Unfoldinにより解明することができれば、疾患の本体に迫る大きな手がかりとなる。またプリオン複製に関与する同様の解きほぐし因子の同定に向けて、現在哺乳動物細胞からUnfoldinアッセイ系を応用し、新規解きほぐし活性の同定を行っている。桑田らは、NMRを用い,ハムスター・プリオンの正常構造におけるグローバルな揺らぎと熱力学的安定性とを,原子分解能で特徴づけた。また、北條らは、RNA interference (RNAi)による遺伝子ノックダウン技術を用いて、プリオン病の原因遺伝子であるプリオン(PrP)遺伝子の発現抑制を試みた結果、マウス内在性プリオン遺伝子に対して70~75%発現抑制を誘導するshRNA発現プラスミドを得ることができた。
結論
Unfoldinは異常凝集体の高次構造を試験管内でunfoldするのみならず、実際に生体内凝集体に対する解きほぐし能を有することが確認された。Unfoldinに活性調節機構を付加する事によって、いわゆる蛋白質凝集病の治療法への可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-03-29
更新日
-