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文献情報

文献番号 201824018A
報告書区分 総括
研究課題 危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究
課題番号 H29-医薬-指定-009
研究年度 平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関) 井村 伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター) 
研究分担者(所属機関)   
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
開始年度 平成29(2017)年度
終了予定年度 2019年度
研究費 7,540,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
 我が国における薬物乱用では覚醒剤に次ぐ事例が多かった所謂危険ドラッグの販売ルートが取締りの強化で地下に潜行し、一見流通が減少したかに見えたが、手段の巧妙化などにより相変わらず摘発件数も多く、対策の強化が求められている。一方、大麻の事犯が増加し低年齢層の大麻汚染が憂慮すべき事態となっている。大麻に関する不適切な情報が氾濫する中、平成28年度の特別研究に引き続き29年度からの指定研究の2年目として海外の動向を含め正確な情報を収集・分析して我が国における薬物乱用に対する施策確立に資する目的で調査研究を行った。また、我が国の現状に即した薬物濫用防止活動の様態とそれを可能にするための一般市民対象の濫用防止教育のあり方に関する社会薬学的考察を加えた。
研究方法:
平成29年度に引き続き、大麻草の特性、大麻及びカンナビノイドの人体への作用に関する文献調査を行うとともに、大麻に関する規制の緩和が進行している米国、カナダ、EUにおける制度設計の状況、医療用、産業用等の使用状況の調査分析を行い、普及啓発をより効果的に行うための基礎となる従来の濫用防止活動の分析・評価及び地域における濫用防止活動を推進するための地域資源の発掘、地域活動の試行を行った。 
結果と考察:
 カンナビノイド含量は生育に従って増加すること、成長過程においてchemotypeは変化しないことなどが確かめられた。大麻の神経精神薬理学的作用については、大麻の使用により精神病の発症リスクは有意に上昇すること、CBDがてんかん治療薬として関心を集めていること、大麻が小児期や青年期の脳の発達に影響を及ぼすこと、低濃度のカンナビノイドでは海馬の神経新生が誘発されること、大麻は使用の初期段階から攻撃行動を誘引すること、長期大麻使用者では突然の使用中止により大麻離脱症候群(精神・神経症状)が発現し、離脱症状はアルコールやタバコより有病率が高いこと、THC、CBDの医薬品への応用については、欧米諸国においてすでに使用が認められている例があり、特定の疾患への臨床効果も示唆されているが、THC単独での臨床応用は困難であること、THCとCBDの配合による薬剤もその効果に関する研究の大部分が前臨床試験によるものであることなどから今後更なる臨床研究が必要であることが確認できた。産業用大麻については、欧州においてTHC濃度の低減、繊維含有量の増加などを目的とした品種改良の研究が進んでおり、現在68種の大麻が登録されていること、分子生物学的研究、遺伝子操作による品種改良も一部で進められていることが確認された。大麻の医療目的使用については、欧州及びカナダで合法化が進み医療目的の生産量が2000年から2017年の間に300倍近く増加していること、米国では、33州とDCで医療用大麻法が定められているが、対象疾患や使用量などの運用は州ごとに異なること、カナダでも、大麻抽出物から生成した数種類の医薬品が販売されていることなどが確認された。薬物濫用防止のより効果的な方法については、従来の地方自治体の薬物濫用防止計画が必ずしも地域住民の生活の中で重要なものとして捉えられておらず、地域住民の自助意識を高め、共助組織を確立して普及させていく社会システムの必要性を確認し、本来そのような目的で活動すべきと考えられる「地域包括ケアシステム」にすでに一定の自助・共助システム、専門家の日常的な関与を実現している災害救助システムと同様の活動を組みこむべく、地域の薬剤師・薬局の具体的な活動の方策を研究する団体を立ち上げた。また、地域における経営形態を異にする企業体の連携の可能性を検討し、そのためには企業組織を超えた人材育成の必要性を確認した。行政は斯様な活動の重要性を認識することが重要であろう。
結論:
大麻草の成長過程や栽培条件によって大麻固有のカンナビノイド類の量やケモタイプがどのように変化するかについての文献調査の結果及び欧州で利用が拡大している産業用大麻について遺伝子操作の利用まで含む栽培品種改良への努力と各国の利用状況についての文献調査結果は、今後、我が国の大麻の取り扱いに関する施策の決定で重要な役割を果たすことになるであろう。 欧州、カナダ及び米国で医療用大麻のみならず嗜好用大麻の規制が緩和されている状況を現地調査した報告は偏見を排した科学的に正確な情報であり、その内容は、大麻の有害性と有益性を文献調査し薬理学的に詳細な検討を加えた結果とともに、我が国における大麻関連法制度を評価し運用する上で重要な示唆を提供したといえよう。 一方、この指定研究の課題となっている薬物濫用防止の有効な手法の開発に正面から向き合い、社会薬学的アプローチの開発を目指して立ち上げられた研究会があと1年と区切られた中で独創的な普及・啓発の手段に到達できることを期待したい。
公開日 2019年09月05日
研究報告書
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公開日・更新日

公開日 2019年09月05日
更新日 2019年07月30日

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