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文献情報

文献番号 199900458A
報告書区分 総括
研究課題 インフルエンザワクチンの効果に関する研究
課題番号  
研究年度 平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関) 神谷 齊(国立療養所三重病院) 
研究分担者(所属機関) 鈴木幹三(名古屋市厚生院),鈴木 宏(新潟大学医学部),田代眞人(国立感染症研究所ウイルス第一部),廣田良夫(大阪市立大学医学部) 
研究区分 厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
開始年度 平成11(1999)年度
終了予定年度 平成12(2000)年度
研究費 27,000,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
高齢者(65歳以上)に対するインフルエンザワクチンの有効性に関する評価を今年度は次の項目を含めたデザインのもとで行う。 ・過去の調査結果のデータベース化 ・1回接種と2回接種による抗体取得の比較 ・重症化・死亡阻止効果の証明 ・ADLによる抗体取得の比較 ・年齢階級別抗体取得の比較
研究方法:
経年接種による効果を確認することも視野に入れ、10年度に実施した老人保健(福祉)施設、病院を中心とし、その施設に入所(入院)している65歳以上の高齢者で、自身が予防接種を希望した場合及び家族にワクチン接種に関する説明を行い、ワクチン接種に同意が得られた(本人が判断できない場合)ものを対象とする。 1) ワクチン接種の方法と時期 ・我が国で発売されている1999年度用インフルエンザHAワクチンを使用する。 ・1・ディスポーザブル注射器を使用し、注射針は26Gとする。 ・接種回数は、、協力が得られれば昨年接種者は1回接種、昨年非接種者は2回接種とする。 ・1回接種の接種時期は、2回接種者の2回目接種の時期と同時期とする。 ・1回0.5・、上腕皮下接種とし、1回目と2回目感覚は概ね4週間とする。 ・1999年12月中頃までに接種を完了する。 ・ワクチンの製造会社、ロット番号は各研究者ごとに統一する。 2) 血清学的検査 ・ワクチン接種者に対しては以下を原則とする。 ・接種前に実施する。 ・接種後4〜8週後または2回目接種前に実施する。 ・2回接種者は接種後4〜8週後に実施する。 ・インフルエンザ抗体はCDCによって決められた10倍希釈のHI法にて測定する。 ・抗原は感染研から分与された統一抗原を使用する。不足する場合は田代班員に直接連絡して分与を受ける。 3) ウイルス分離 ・発熱、呼吸器症状を呈する患者を対象の中心として、集団発生のみられた施設は最低10検体採取する。 ・可能であれば無症状者からも同時期にウイルス分離を試みる。 ・検体は原則として患者の咽頭拭い液とする。 ・ウイルス分離に使用する細胞はMDCK細胞とする。 ・分離されたインフルエンザウイルスは感染研田代眞人ウイルス部長宛に送付する。特に重症例、死亡例における感染ウイルスの特性について田代班員が検討する。 ・迅速診断キットを各施設に配布し、インフルエンザ様疾患が疑われる患者は発生した場合、施設において迅速診断キットで検査を実施し陽性反応が出た場合、うがい液(咽頭ぬぐい液)検体の採取を行う(三重県のみ) 4) インフルエンザ調査記録 対象者一人一人についてインフルエンザ調査記録票を作成する。 1)対象者の属性、採血時期等の記載 ・性、生年月日、生活自立度(ADL)、基礎疾患、ステロイド、免疫抑制剤の服薬 ・過去のワクチン接種歴 2)インフルエンザ予防接種予診票 3)副反応記録票 ・ワクチン接種後48時間以内の副反応 4)臨床記録経過票 ・1日単位での最高体温、症状 ・併発症状、併発症状の転帰 5)死亡調査票 ・インフルエンザ流行期間中に死亡された方の状況 ・転院先で死亡された場合も可能な限り作成する。 5) 解析 各班が統計解析ソフト「SAS」による解析を行う。
結果と考察:
鈴木幹三らは名古屋市内6カ所の老人福祉施設及び名古屋市厚生院の入院者計507名にワクチン1回接種を行った。副反応の出現頻度は24.3%で、発熱0.6%、発疹0.6%、注射部位の発赤21.3%、腫れ9.7%、痛み4.1%、その他4.9%で重篤なものはなかった。ワクチン接種で4倍以上の抗体上昇を認めたのでは、A/北京262/95(H1N1)で51%、A/シドニー/15/97(H3N2)で53%、B/山東/7/97/で32%で、そのうち40倍以上の抗体保有率はA/北京15から53%へ、A/シドニー50%から87%へ、B/山東12%から36%へ上昇した。対象施設で調査期間中にインフルエンザの患者発生が少数みられたが、流行には至らなかった。 廣田らは1998-1999シーズンの詳細解析を行い福岡市K老人病院入院患者の内、575人(80歳以上73%)を対象とし、ワクチン希望者248人に接種した。結果はワクチン有効性OR でみると、38℃以上の発熱をインフルエンザ様疾患(ILI)と定義した場合ORは0.57である。また39℃以上の発熱をILIと定義した場合ORは0.49であった。これはワクチン有効率51%に相当する。基礎疾患を有する老人入院患者では50〜60%の有効性が認められたとしている。 また廣田の共同研究者奥野らは、55歳以上の高齢者の初回接種対象者69名(平均年齢83.3歳)に1回接種をし、さらに51名に対して2回目接種を行った。また同施設職員44名(平均年齢34.3歳)についても1回接種を行った。1回で抗体価4倍以上の上昇を示したものは入所者でA/ 北京21/39(54%)、A/シドニー/32/39(82%)、B/山東/10/39(26%)であった。同様に職員では52%、63%、57%であった。また追加免疫の効果については、2回目と3回目の血清抗体価については、4倍以上の上昇はA/ 北京4/26、A/シドニー/2/26、B/山東/1/26であり、その効果は認められなかった。職員は6名のみであるが、血清の得られた5名で有意な上昇は認めなかった。高齢者に対するインフルエンザワクチンの追加免疫効果はほとんど認められなかった。 神谷らは三重県下の6老人保健施設に入所している290名を対象に昨年度のワクチン接種者は1回、非接種者は2回接種を行った。ワクチンの接種回数では、発熱の有無に差はみられなかった。抗体価4倍以上の獲得の有無別による発熱の違いや有意差はなかった。ワクチン接種1回により、発熱率の軽減、死亡率の減少がみられており、ワクチン接種の有効性はあるものと思われた。 鈴木 宏らはインフルエンザワクチンを1回皮下接種法で本年も実施し、接種率は高齢者47.0〜96.0%、スタッフ37.2〜97.9%で全体として3年目は高率であった。ワクチン効果は発症阻止効果の単変量解析において、発症例は82例であり、RR;1.22(95%C.I0.70-2.12)と有効性は示されなかった。その他の関係因子としてスタッフ接種率が高い程発症を阻止し、反対に介護度が高いほど、基礎疾患に呼吸器疾患を有する人で発症し易かった。発症者の重症化(入院例)は17例のみでRR;0.60(0.22-1.69)と有効性は示されなかった。
結論:
ワクチン接種後の副反応についてはほとんどが局所の反応であった。発熱は三重県0/177(0%)、新潟県7/747(0.7%)、名古屋市3/507(0.6%)であった。局所の発赤は三重県31/177(17.5%)、新潟県92/747(12.3%)、名古屋市108/507(21.3%)、腫脹は三重県9/177(5.1%)、新潟県28/747(3.7%)、名古屋市49/507(9.7%)であった。また、局所の痛みは三重県0/177(0%)、新潟県19/747(2.5%)、名古屋市21/507(4.1%)であった。 A/北京株に対する平均抗体価(幾何平均)は三重県(1回接種群)では接種前12.9、接種後54.0、名古屋市では接種前22.8、接種後86.0、A/シドニー株に対する平均抗体価は三重県(1回接種群)では接種前57.5、接種後189.3、名古屋市では接種前61.0、接種後202.0、B/山東株に対する平均抗体価は三重県(1回接種群)では接種前10.6、接種後28.3、名古屋市では接種前14.0、接種後37.3であり、A/北京、シドニー株に比較しB/山東ではワクチン接種による抗体価の上昇が悪い傾向が認められた。 ワクチン効果については、解析に必要な流行が認められた1998-1999年シーズンの結果を統計パッケージSASを用いて再度解析を行ったところ、38℃以上の発熱を発症の指標とした解析では、三重県0.47、名古屋市0.51、福岡県0.49とすべての地区でワクチン接種によりオッズ比の有意な低下が認められ、発熱に対するワクチンの有効性を確認することができた。 以上より65歳以上の高齢者へは、ワクチン1回接種で有効性があることがより明らかになった。
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