開発優先度の高いワクチンの有効性・疾病負荷及び安全性・副反応の評価に資する医療ビッグデータ等を用いたデータベース構築に関する探索的研究

文献情報

文献番号
201919012A
報告書区分
総括
研究課題名
開発優先度の高いワクチンの有効性・疾病負荷及び安全性・副反応の評価に資する医療ビッグデータ等を用いたデータベース構築に関する探索的研究
課題番号
H30-新興行政-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
中島 一敏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部 総合研究センター診療情報分析部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部公衆衛生学)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,492,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
予防接種基本計画(平成26年3月厚生労働省告示121号)では、MRワクチンを含む混合ワクチン、改良インフルエンザワクチン、ノロウイルスワクチン、RSウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンの6つのワクチンの開発優先度が高いとされている。導入の際には、公衆衛生上の効果と安全性の継続的な評価が必要であり、そのシステム構築が本研究の目的である。
研究方法
1.疾病負荷研究
(1)NDBサンプリングデータを用い、RSウイルス感染症、急性胃腸炎・ノロウイルス感染症・ロタウイルス感染症、髄膜炎、腸重積などの疾病負荷評価のパイロット研究を行った。
(2)次世代医療基盤法に基づくデータのパイロット研究としてNCDA データを利用することの妥当性を検討するため、フィージビリティーテストを行い、NCDAデータ利用の準備を行った。
(3)インフルエンザサーベ-ランスの仕組みをノロウイルス感染症に適応した。三重県全域、沖縄県全域の2か所において、インフルエンザ定点医療機関から、個人情報のない年齢群・性別のみの集計情報の収集し、一部の医療機関からの便検体の採取と病原体検索を行うことで、全年齢の感染戦胃腸炎の推定受診患者数、ノロウイルスの割合、ノロウイルスによる受診者数を推定した。RSV感染症については、沖縄県立宮古病院と宮古島徳洲会病院をフィールドとし、琉球大学医学部附属病院でリアルタイムPCRによる病原体検索を行う体制を構築した。
2.ワクチンの安全性に関する研究
(1)ML-Fluを応用し医師のネットワークを構築した。参加医師に対する質問表調査、英国のシステムの詳細のレビューによりシステムの課題を検討した。
(2)WHOワクチン安全性に関する世界諮問委員会(GACVS)にオブザーバー参加し、世界的な副反応因果関係評価手法、リスクコミュニケーションに関する情報収集を行った。
(倫理的配慮)
本研究に関する包括的な倫理審査を、大東文化大学人を対象とする医学系研究に関する倫理審査委員会で承認を得た。さらに、分担研究に関して、分担研究者の所属組織における倫理審査組織の承認を得た。いずれの研究も個人が特定できる情報は取り扱っていない。
結果と考察
疾対象疾患の疾病負荷の評価に関し、①NDBを用いた研究では、適切な病名定義を用いることにより疾病負荷の推計は可能であることが検証された。②次世代医療基盤法に基づくデータはまだ利用可能な状況ではないが、NCDAデータを用いた研究でノロウィルスとRSウィルスについて罹患患者が月時単位で正確に抽出できることがわかり、パイロット研究となりうることが示された。また、③インフルエンザサーベイランスの仕組みを応用することで、全年齢層での感染性胃腸炎・ノロウイルス感染症の全数推定が可能であることが示された。RSV感染症の疾病負荷評価に関しては、沖縄県における研究枠組みの調整が進んでいる。①の代表性、②の質的評価、③の日常診療で実施されていない病原体診断情報の利用と感染症発生動向調査を強化することによる持続可能なシステムの構築を相互補完することで、包括的かつ継続可能なシステムが構築できる。
副反応の評価に関し、④日本外来小児科学会と連携しML-fluを応用した双方向ネットワーク(日本版GPRD)について、英国のシステムとの比較、参加者の質問表調査からいくつかの課題が特定された。⑤WHOのCAAEFIは迅速性に優れるが、想定外の副反応、慢性経過をたどる副反応の評価が困難であることが明らかとなり、迅速性とリスク評価が可能な仕組みが必要だと考えられた。さらに、GVSB、GACVSで検証されたコミュニケーションにおいて、そのシステムが我が国には欠如している点は大きな課題であると考えられた。
今後、これらの研究を継続し、我が国で継続利用可能なシステムについて引き続き検討したい。
結論
疾対象疾患の疾病負荷の評価に関し、各分担研究は利点と限界を有している。NDBの代表性、NCDAの質的評価、インフルエンザサーベイランス方法の応用における新たな病原体診断の利用と強化感染症発生動向調査の可能性が各々の利点であり、各手法を発展、相互補完することで、包括的かつ継続可能なシステム構築できる。
副反応の評価に関しては、英国のシステムとの比較、参加者の質問表調査からいくつかの課題が特定され、その改善が必要と考えられた。WHOのCAAEFIは迅速性に優れるが、想定外の副反応、慢性経過をたどる副反応の評価が困難であることが明らかとり、迅速なリスク評価が可能な仕組みが必要だと考えられた。さらに、GVSB、GACVSで検証されたコミュニケーションのシステムが我が国には欠如している点は大きな課題であると思われた。
今後、これらの研究を継続し、我が国で継続利用可能なシステムについて引き続き検討したい。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,056,000円
差引額 [(1)-(2)]
944,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,568,643円
人件費・謝金 1,275,689円
旅費 2,917,058円
その他 3,488,363円
間接経費 807,000円
合計 11,056,753円

備考

備考
直接経費の差異は、神谷元国立感染症研究所主任研究官分担研究において、今年度のインフルエンザシーズンに合わせて実施する予定であったパイロット研究が、COVID-19のパンデミックの影響から実施できなかったため、研究費の一部の支出が不可能となったことから生じた。 また、間接経費については、研究代表者の所属校での受入を行わなかったため、残金が生じたものである。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-