小規模な食品事業者における食品防御の推進のための研究

文献情報

文献番号
201823019A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模な食品事業者における食品防御の推進のための研究
課題番号
H30-食品-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部マネジメント学科食ビジネスコースフードシステム研究室)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部 )
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
14,481,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年食品への意図的な毒物混入事件が頻発したことも相まって、特に大規模食品事業者(食品工場等)では食品防御への対応が進んできた。一方、サプライチェーンの大部分を占める小規模食品事業者(飲食店を含む)では、参考となる食品防御ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。本研究では既存研究を発展させ、大規模食品事業者だけではなく、飲食店を含む小規模食品事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策の検討を目的とする。
研究方法
今年度は、以下に示す7つの項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。中小規模の事業所のうち製造工場1箇所、飲食提供施設15箇所を訪問し、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理し、これまでの研究成果で策定された「食品防御対策ガイドライン」への改善を行い、より中小事業所にとっても実用的なものとなるような改訂を検討した。
結果と考察
(1)食品防御対策の実態調査
食品流通業(運搬・保管施設)を対象として食品防御対策ガイドラインに記載された項目に対応したアンケート調査を行い、協力が得られた企業への現地聴き取り調査を行った。アンケート調査の結果から食品防御対策は、大手企業が中小企業より先行している傾向が認められた。
(2)中小事業所の食品防御に関する脆弱性の評価 
中小規模の事業所について、製造工場(1箇所)、飲食提供施設(15箇所)を訪問し、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理した。その結果、今後の中小事業所向けガイドライン作成に反映できる可能性のある内容が9項目あった。
(3)フードチェーン全体の安全性向上に向けた食品防御対策ガイドラインの改善 
(4)中小事業所向けの食品防御対策教育ツール等の検討
2017年度に試作した「調理・提供施設向け」ガイドライン(試作案)の方向性について検討した。過年度調査で作成している「食品製造工場向け」の改善を行うと共に、2017年度に試作した「運搬・保管施設向け」、「調理・提供施設向け」のガイドライン(試作案)について、「中小事業所の食品防御に関する脆弱性の評価」の結果や、外食産業、給食施設受託会社、物流施設等の事業者への訪問・ヒアリング調査の結果を踏まえ、より実用的なものとなるように改訂を行った。
(5)国立医薬品食品研究所における人体(血液・尿等)試料中の毒物の検査手法の開発と標準化
有機リン系農薬等9種について、HPLCとLC-MS/MSによるヒト全血及び人工尿の分析法を検討した。
また、人体試料中の病原細菌(遺伝子または毒素)の検査方法の開発と標準化について検討した。
(6)地方自治体試験検査施設における人体(血液・尿等)試料中の毒物の検査手法の開発と標準化
人体試料及び人体試料含有液の理化学試験における取扱方法について、地衛研の一モデルとして安全管理要綱の検討を行い、人体試料等管理区域の運営について要領にまとめた。また安全管理要綱及び運営要領の運用上の手順書案を作成した。今後、案について適当かどうか関係者と協議のうえ完成を目指す。
(7)海外(主に米国、英国)における食品防御政策の動向調査
平成30年度に講じられた主な食品テロ対策の最新情報を抽出し、その概要をとりまとめた。英国については、ロンドン五輪において食品防御対策を担当した専門家を日本に招聘し、ロンドン五輪の際の食品防御対策に関する講演及びヒアリングを行った。オリンピック・パラリンピックの食品安全計画は初期の段階から計画し、明確なわかりやすい基準でありモニタリングツールまで含むべきであるということが示唆された。
結論
これまでの研究によって得られた成果は、大規模事業所にとっては取り組むことができる内容であったが、フードチェーンの大部分を構成する中小規模事業所にとっては、コスト負担等の問題から取り組み難いものであった。本研究において得る中小規模事業所や食品流通業・飲食店(小売店・レストラン)の実態に即した成果(ガイドライン、教育ツール等)は、わが国のフードチェーン全体の安全性向上に寄与するはずである。またこれらを通じて、意図的な食品への毒物混入からの国民の保護、及び大規模イベント時の訪日外国人に対する安全・安心な日本食の提供にも寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-10-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,582,409円
人件費・謝金 3,255,361円
旅費 1,192,008円
その他 6,451,225円
間接経費 519,000円
合計 15,000,003円

備考

備考
支出の合計には、口座利息3円を含む

公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
-