ATLの分子病態に基づく治療層別化のためのマーカー開発と分子標的の同定、および革新的マウス急性型ATL実験モデルを用いた臨床応用への展開

文献情報

文献番号
201438010A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの分子病態に基づく治療層別化のためのマーカー開発と分子標的の同定、および革新的マウス急性型ATL実験モデルを用いた臨床応用への展開
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 加大(久留米大学・医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 都築 忍(愛知県がんセンター研究所・遺伝子医療研究部)
  • 大島 孝一(久留米大学・医学部)
  • 宇都宮 與(公益財団法人慈愛会今村病院分院)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma: ATLL)はHuman T-cell leukemia virus type 1 (HTLV-1)キャリアのうち約2-7%に発症するT細胞性腫瘍である。臨床症状から、ATLLは4つの病型(くすぶり型、慢性型、リンパ腫型、急性型)に分類される。本研究の目的は、ATLLの分子病態を解明し、臨床病理学的意義づけ並びに臨床病態と相関させることで、予後予測や治療層別化に有用なバイオマーカーを確立すること、また、ATLLモデルマウス実験系を用いて有用な小分子を探索することにより、ATLLの治療効果の向上に貢献することである。
研究方法
 高密度アレイCGH法により急性型と慢性型ATLL症例を比較することで、病型、病態に特徴的なゲノム異常領域を解明し、遺伝子発現様式と相関させることでその責任遺伝子を明らかにする。その遺伝子の臨床病理学的、臨床病態学的意義を考察する。また、臨床的に有用とされているCCR4の発現並びにTSCL1については多数症例を対象に免疫組織学的研究を進める。さらに、特許申請することができたATLLマウスモデルを用いて、有効な小分子ライブラリーのスクリーニングを進める。
結果と考察
 アレイCGHの解析から、細胞周期制御遺伝子群の異常を有する慢性型ATLL症例では比較的短期間で急性転化にいたることが明らかとなった。しかし、細胞周期遺伝子群のうちのP53については、コピー数異常はほとんど認められなかった。そこで、点突然変異による機能欠失の探索のために19症例(HTLV-1 キャリア期11例、慢性型検体8例)を解析した。しかし、一塩基多型を認めるのみ(SNP rs1042522)で、細胞周期の脱制御をもたらすようなTP53変異はみられなかった。しかし、急性型でのTP53変異は頻度が高く認められるので、急性型には重要な働きはするものの慢性型の急性転化のマーカーとしては有用ではないことが明らかとなった。がん抑制遺伝子TSLC1発現の免疫染色法による組織検体を用いた確認と臨床病態的な意義の検討をおこなったところ、ATLL症例は、PTCL-NOS症例・ALK陰ALCL症例・AITL症例と比較して、TSLC1の発現の割合が有意に高く、PTCL-NOS症例でTSLC1陽性群は、TSLC1陰性群と比べて有意に予後不良であったので、TSLC1染色性は予後予測マーカーとして有用である。ATLに関連する遺伝子群を用いたマウスATLモデルによる研究では、in vitroで誘導したT細胞に、HBZ, AKT, BCLxLの3者を発現させマウスに移植すると、移植後1~4か月にかけて全例(n=7)が死亡したのに対し、HBZを抜いたAKTとBCLxLの2遺伝子の場合には腫瘍死は認められなかった。HBZ, AKT, BCLxLの3者を発現させたT細胞は、サイトカインを加えない条件でもOP9DL1ストローマ上で増殖した(7日で数十倍)のに対して、AKT, BCLxLの組み合わせではT細胞はわずかな増殖を示したに過ぎなかった。そこで、HBZを標的とした薬剤の開発に有用であるので、の機能を抑制し、したがってATLの治療や発症予防に有用な薬剤の開発に役立つ可能性がある。そこで、化合物ライブラリーのスクリーニングのための実験系を確立し、小分子ライブラリースクリーニングを開始した。
結論
 細胞周期制御遺伝子群の異常を有する慢性型ATLL症例は急性転化を起こしやすいことが明らかとなったが、慢性型ATLLにはP53遺伝子の変異はほとんど認められず、予後予測マーカーとしてはあまり有用ではない。TSLC1染色は予後の悪い群に認められ、この染色性はATLLの予後予測に有用であった。また、PTCL-NOS症例でも同様であった。ATLLマウスモデルについては特許申請を行った。また、培養系で小分子スクリーニングのための実験系を確立できた。今後、スクリーニングを進めていく基盤が整った。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438010C

収支報告書

文献番号
201438010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,900,000円
(2)補助金確定額
29,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 21,064,750円
人件費・謝金 557,300円
旅費 995,399円
その他 382,551円
間接経費 6,900,000円
合計 29,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-09-04
更新日
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