CBRNE事態における公衆衛生対応に関する研究

文献情報

文献番号
201429014A
報告書区分
総括
研究課題名
CBRNE事態における公衆衛生対応に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大友 康裕(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
  • 明石 真言(国立研究開発法人放射線医学総合研究所)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所)
  • 黒木 由美子(公益財団法人日本中毒情報センター つくば中毒110番)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部 救急災害医学)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院救命救急センター・救急科)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 井上 潤一(山梨県立中央病院救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班はCBRNEテロ/災害に対する急性期医療に関して実効性ある体制整備に寄与することを目的とする。実効性を考え、原因物質毎の対策でなく、テロ発生時の直近救急医療機関が、その原因物質の如何に関わらず、適切な初期対応が実施できることに主眼を置いた研究を行ってきた。現在はテロ現場での早期医療開始に軸足を置いて研究を進めている。
研究方法
CBRNE事態の現場で対処にあたる職種(消防・警察等)を対象とした、全国標準の研修コースを開発した。これは日本集団災害医学会が全国で開催しているMCLSコースを土台とするものである。CBRNE特殊コースの教授内容・コースの実施方法等に関して、特殊災害に対する医療提供の専門的知見が必要なことから、本研究班の研究テーマとして取り組んだ。
厚生科学審議会健康危機管理部会緊急提言(2014年7月発出)の根拠となった平成24年度厚生労働科学「化学テロ等健康危機管理事態における医薬品備蓄及び配送に関する研究」で用いられたシナリオ(化学剤テロ)に基づき、大阪市消防局・大阪府警察・大阪府立急性期総合医療センターの協力の下、机上シミュレーションを実施した。
結果と考察
MCLS-CBRNE試行コースを全国各地で9回実施し、正式コース開催に向けて教育内容のブラッシュアップおよび全国に指導者を育成した。コースの内容はほぼ完成し、平成27年7月頃より正式コースとして全国展開していく。
大阪市の化学剤テロ対応机上シミュレーションでは、解毒剤投与を要する1,000名の被害者のうち、実に875名が死亡する結果となった。合計60隊(特別救助隊・NBC対応部隊含む)、209名(レベルA防護服116着)というわが国有数の対応能力を持つ消防局が対応した結果であることを勘案すると、総務省消防庁が発出している現状の「化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアル」に改善の余地があると考える。
結論
現在のわが国におけるCBRNE事態対応に関して、未解決の重要な課題がある。CBRNEテロ発生時の現場対応は、出動する各機関の隊員の2次被害防止のための対策が適切に図られている。しかしその結果、テロ現場において個人防護・ゾーンニング・除染を実施すると、病院への搬送開始は非常に遅延する。これまでの研究の結果、事件発生後1時間以上となることが明らかとなっている。平成26年度の本研究班で実施した大阪市での化学剤テロの机上シミュレーションでは、解毒剤投与を要する1,000名の被害者のうち、実に875名が死亡するという惨憺たる結果となった。現状では地下鉄サリン事件においては社会復帰となった症例の救命すら困難な状況である。2020年に東京オリンピック開催を控えているわが国において、この化学テロ対応体制の現状では国民の理解を得ることは到底できない。
 その解決策は「テロ現場に医療チームを派遣し、早期に医療を開始すること」である。しかしCBRNEテロ現場における早期医療開始には、次のような課題が残されている。
1. DMATは、現状ではテロ現場へは出動しない。
2.消防および警察の現場対応体制が、十分整備されているとは言えない。その結果、消防・警察の対応にアドオンされるべき現場派遣医療チームの対応体制について整理することができない

これら課題への対応として、本研究班では、1) CBRNE事態の現場で対処にあたる職種(消防・警察等)を対象とした、全国標準の研修コースを開発した。2) 現在、総務省消防庁が発出している「化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアル」に基づいて本研究班が実施した化学剤テロ対応の机上シミュレーション(大阪市で開催)において、大多数が死亡するという惨憺たる結果を受け、消防・警察他、各関係機関の対応計画・対応体制に関して、研究班からの提言として、必要な体制改善・整備を提案する。3) テロの現場に出動するDMAT特殊チームの体制確立が求められる。そのために「CBRNE-DMAT現場活動マニュアル」を策定・出版すると共にこのマニュアルに基づいたCBRNE-DMAT研修会の試行を実施する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201429014Z