安全な薬物治療を促進する多職種間情報共有システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201424018A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な薬物治療を促進する多職種間情報共有システムの開発に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森本 剛(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 作間 未織(兵庫医科大学 医学部)
  • 太田 好紀(兵庫医科大学 医学部)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、電子カルテやオーダリングシステムを用いて、薬剤性有害事象の発生しやすい状況やハイリスク患者、実際の発生状況を、多職種医療従事者間で迅速かつ円滑に共有するシステムを開発し、その結果、多職種間のコミュニケーションの向上が、薬剤性有害事象の防止、早期発見を可能にし、日常診療における医療安全推進に寄与するかどうかを検証することを目的とする。
研究方法
 多職種医療従事者間で、迅速かつ円滑に薬剤性有害事象に関する情報を共有するシステムを開発し、電子カルテ・オーダリングシステムに導入する段階と、開発したシステム導入の効果を検証する段階の2段階で行う。
 第一段階では、入院患者における薬剤性有害事象研究(JADE Study)のデータを基に、薬剤性有害事象に関連するハイリスク薬剤や、薬剤性有害事象の中でも頻度の高い症状や重症度の高い症状、患者や診療環境におけるリスクファクターを抽出し、ナレッジベースを作成する。それを基に、ハイリスク薬剤の投与を受けている患者、薬剤性有害事象を高率で起こしやすい患者、薬剤性有害事象を疑う症状の出現などを抽出し、その情報を多職種医療従事者間で共有することを可能にするシステムを開発する。
結果と考察
 今年度は、予定通りJADE Studyのデータを基に、薬剤性有害事象に関連するナレッジベースを作成した。このナレッジベースを基に、抗生剤投与中の患者に下痢が発生した際に、医師、看護師、薬剤師ら医療従事者に下痢の発生を知らせると共に、それら多職種医療従事者間で情報を共有する下痢アラートシステム(1)と、患者の腎機能を随時モニタリングし、腎機能の低い患者をハイリスク患者として多職種医療従事者間で共有すると共に、腎機能の低い患者にとってハイリスクな薬剤処方時にはアラートが発生し、腎機能に応じた推奨投与量が表示されるシステム(2)を開発した。開発したシステムを導入する前のプレデータとして、島根県立中央病院に該当期間中入院した全入院患者3202人を対象に、患者の基礎情報及び入院期間中の血液検査値を収集した。対象患者の総入院日数は47465日、年齢中央値が68歳で、男性が3085人(48%)であった。入院時クレアチニン値の中央値は0.75mg/dl、入院期間中に腎機能が悪化した患者は2587人(51%)であった。
 薬剤性有害事象に関連するハイリスク薬剤や、薬剤性有害事象の中でも頻度の高い症状や重症度の高い症状、患者や診療環境におけるリスクファクターを抽出することができた。
結論
 JADE Studyを基に作成したナレッジベースから、抗生剤投与による下痢の発生と、腎機能低下患者へのハイリスク薬剤投与の頻度が多いことが明らかとなった。頻度の高いこれらの事象に注目し、抗生剤投与中の下痢発生と、腎機能低下患者の同定ならびに、それらの患者へのハイリスク薬剤投与について、多職種医療従事者間の情報共有をスムーズにするシステムを開発した。
 これらの研究を通じて得られた知見と医療従事者向けの横断研究による、受容性の解析と合わせて分析することにより、多職種間情報共有システムの有効性がより一般化可能な形で提案できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2016-02-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201424018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,750,000円
(2)補助金確定額
3,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 181,783円
人件費・謝金 2,251,495円
旅費 507,414円
その他 559,308円
間接経費 250,000円
合計 3,750,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-