ヒト成体間葉系幹細胞の再生医療実現のためのゲノム科学に基づく品質管理と体内動態研究

文献情報

文献番号
201406018A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト成体間葉系幹細胞の再生医療実現のためのゲノム科学に基づく品質管理と体内動態研究
課題番号
H25-実用化(再生)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(独立行政法人国立がん研究センター 分子細胞治療研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 俊平(東京医科歯科大学 難治疾患研究所、ゲノム病理学分野)
  • 石井 強(ロート製薬株式会社、再生医療研究企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 最近、複数のウイルス種の感染機構やウイルス依存的疾患発症メカニズムにエクソソームが仲介することが報告されている。HBV感染時に、NK細胞、NKT細胞、DC等の自然免疫系が抑制され、感染拡大につながり、また逆に、HBV慢性肝炎では、免疫系の過剰な活性化が誘導され、肝障害の増悪化やがん化につながることもある。従って、HBV感染細胞から放出されるエクソソームが、それらの免疫系細胞に作用して感染を制御している可能性が大きい。HBV根絶を目指したB型肝炎創薬実用化研究を効率良く推進するためには、HBVの感染、伝播、薬剤耐性、ならびに発がんメカニズムに、エクソソームがどのように関係しているかを解明する。
研究方法
1) 細胞外分泌顆粒であるエクソソームによるHBV感染、免疫細胞制御、星細胞の活性化、および薬剤耐性メカニズム解明
2) エクソソームによる発がんメカニズム解明
3) HBV感染培養系を用いたエクソソームによる感染機構の解明とエクソソーム阻害による感染防御の検討
4) HBV感染肝細胞の分泌するエクソソーム内のHBV関連タンパク質および宿主因子の同定、を実施することで、エクソソームを起点としたHBV感染とそれに由来する肝臓疾患の防御の創薬研究
5)上記を目標に、最終的にエクソソームを阻害する新規HBV治療薬を開発する。
結果と考察
1)初年度、2年時の研究結果から、本課題の主眼のひとつである、完全後の肝細胞から放出されるエクソソームが、星細胞の活性化に重要な役割を持つ事を実証した。最終的な目的である、創薬に向けて、エクソソーム阻害という明確な標的が明らかとなった。
2)HBV感染細胞からはエクソソームに加えて、HBV粒子も放出され、この混入の評価をする必要が生じた。エクソソームに含まれる宿主因子の同定という当初の目的解明に加えて、エクソソームの有効性を評価する上でも定量的な解析が必要である。
3)エクソソーム内で発現が見られたmicroRNAを導入すると、マクロファージによるTNFaの産生が抑えられた。肝臓内にはクッパー細胞と呼ばれるマクロファージが豊富に存在し、肝臓内の免疫反応の中枢を担っていると考えられる。またTNFaは肝細胞に対してアポトーシスを誘導することがよく知られている。よって、エクソソームによりクッパー細胞からのTNFaの産生が抑制されて、肝細胞のアポトーシスが抑制されている可能性が考えられる。また今回見られたmiR-29のヒト肝星細胞に対する抗線維化作用は既報と一致する結果であった。さらに、肝線維化におけるクッパー細胞と星細胞の相互作用が重要であるとの結果も得られつつあり、星細胞のみならず各種の肝非実質細胞に対するHBV感染細胞由来のエクソソームの作用の解析も視野に入れる必要がある。また、HBxが肝前駆細胞に作用する可能性を示唆する報告があり、肝前駆細胞への作用にも興味が持たれる。
4)血清中のHBV RNAとHBV DNAを定量する系を確立した。測定範囲はそれぞれ102~109 copies/mLであった。HBs抗原の測定系も感度、測定範囲とも十分であり、今後エクソソーム内のHBVウイルスマーカーの測定系として使用可能と考えられる。
以上、B型肝炎感染肝細胞のエクソソームに、星細胞の活性化を促し、ひいては肝臓の線維化を誘導する能力が有る事を明らかにした。つまり、エクソソームの分泌阻害薬は、B型肝炎治療薬そのものであり、すでに見いだしているエクソソームの分泌経路を阻害する因子(複数の候補)がその可能性を持つ。さらに、エクソソーム中のマイクロRNAの情報を精査する事で、そのマイクロRNAそのもの、あるいはその制御因子に対する拮抗剤、阻害剤などが、新たな創薬の候補である。
結論
血清中のHBV RNAとHBV DNAを定量する系を確立した。測定範囲はそれぞれ102~109 copies/mLであった。HBs抗原の測定系も感度、測定範囲とも十分であり、今後エクソソーム内のHBVウイルスマーカーの測定系として使用可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201406018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
59,800,000円
(2)補助金確定額
59,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 17,751,640円
人件費・謝金 11,527,653円
旅費 431,870円
その他 16,288,837円
間接経費 13,800,000円
合計 59,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-