重度・重複障害児・者の包括的医療・療育に関する研究

文献情報

文献番号
199800298A
報告書区分
総括
研究課題名
重度・重複障害児・者の包括的医療・療育に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 公明(神奈川県総合リハビリテ-ション事業団、七沢療育園)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷公明(神奈川県総合リハビリテ-ション事業団、七沢療育園)
  • 黒木良和(神奈川県こども医療センタ-)
  • 落合幸勝(東京都立北療育医療センタ-)
  • 児玉和夫(心身障害児総合医療療育センタ-、むらさき愛育園、1999年から)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症心身障害児・者の包括的医療・療育に関しては、乳幼児・学童期を中心とする横断的取り組みが中心で、重症心身障害児のライフサイクルからみた縦断的取り組みは少ない。そこで、児の加齢に伴う包括的医療・療育、特にリハビリテ-ション(以下リハ)アプロ-チの体系化を検討課題として研究を行った。今年度は重症心身障害児の呼吸機能と補装具、摂食や姿勢保持についてのリハ効果、重度重複障害児リハ訓練の課題と実態、さらには重度・重複障害児・者へのリハ工学士の役割などについて検討を加えた。
研究方法
重症心身障害児者に対する包括的リハアプロ-チについての、乳幼児期、学童・思春期以降老年期までの、それぞれの各時期に対応するリハアプロ-チの連携とその体系化を目指し、次の研究体制で研究を行った。リハ訓練の実態調査(児玉、熊谷)、各リハ訓練の事例の集積:各分担研究者が本年度までに有している事例に加えて、各年代毎の集積が必ずしも充分でないので、各分担研究者の立場で充足に努めた、①重症心身障害児の呼吸機能に対する補装具の効果(黒木、半澤)、②ハイリスク新生児の評価と予後予測(黒木・半澤)、③食事指導の実際と介護支援(落合、高見)、④異常姿勢と筋緊張の異常に対するリハアプロ-チ:(落合、山川、成澤)、⑤リハ総合施設内七沢療育園での重症心身障害児者リハの実態について(熊谷、栗原)、3.福祉機器の重症心身障害児・者における活用:(熊谷、大橋、栗原、落合)。
結果と考察
個別研究結果は以下の通りである。
(1)呼吸機能に対する補装具の効果を動脈血酸素飽和度から検討し、車椅子・坐位保持 装置などは効果が見られるが、体幹装具は胸郭の動きを抑制しないことが大切であった。(黒木、半澤)
(2)ハイリスク新生児の評価と予後予測では、評価40項目中、脳性麻痺群では異常眼球運動、蛙姿勢発達遅滞群で引き起こし反応に関連を認めた。(黒木・半澤)
(3)食事指導の実際と介護支援:重度な症例ほど食事の問題は大きく、生活リズムを乱し育児困難を感じている。こうした症例への食事指導により育児困難は減少している。(落合、高見)。
(4)異常姿勢と筋緊張の異常に対するリハアプロ-チ:異常姿勢は児の成長発達に影響を与えるのみならず、介助を含む日常生活面でも大きな制約となる。26年間経過を見た症例から異常運動発達の早期徴候をまとめ、過緊張・ATNR・非対称性など6項目を捉え、3例の重障の理学療法・作業療法等の関わりから理学療法の有用性を得ている。(落合、山川、成澤)
(5)リハの課題と実態:重症心身障害児者のリハビリテ-ション課題と実態に関する全国調査:今年度はリハビリテ-ションの体系化を行うに当たり、まず全国の重症心身障害児施設での実態について予備的調査を行った。その結果率先して訓練を実施している施設とまだ訓練に対応仕切れない施設があり、その内容について見ると乳幼児期に発達訓練、加齢に伴い呼吸訓練を中心とする理学療法が重要な課題であった。
(6)重症心身障害児者に必要な福祉機器に関する検討:福祉機器は近年著しく進歩しているが、重症心身障害児に対しての応用はまだ十分とはいえない。そこで、如何なる機器が各時期で必要か、その有用性などうかなど、まだ多くの課題を抱えている。こうした問題を検討する。(熊谷、大橋)
(7)ライフサイクルから見たリハについて、リハ総合施設としての七沢療育園での過去20年間の実態について調査し、理学療法では機能維持、排痰訓練、車椅子作成など、言語療法では経管栄養からの離脱、コミュニケ-ション手段の向上などが行われていた。(熊谷、栗原)
結論
本研究班の目的である、重症心身障害児の包括的医療・療育の体系化に向けて、今年度は重症心身障害児施設に対するリハの実態調査のアンケ-トをもとに資料の解析を試み、施設による訓練内容に差が有る実態を報告した。次年度以降は訓練課題の整理を行う。また各分担研究者及び研究協力者毎に、それぞれの施設のの特徴を生かして、各種リハ訓練での療育実例を、各時期毎の呼吸、食事、姿勢に関する理学療法、作業療法等を中心に、具体的訓練の実態を報告した。さらに次年度は以前に報告された資料をも加え、リハアプロ-チの体系化を試みたい。また重症心身障害児者の医学的合併症も大きな課題で、最も多いのは呼吸器感染症、特に肺炎であり、次いで難治性てんかんである。今年度はリハ訓練との係わりを中心に行ったので、次年度は取り上げたい。
さらに、近づきつつある少子高齢社会に向けて、福祉機器の開発が高齢者を中心に急速になされつつあるが、このことは障害者にとっても、介護人口の減少につながる重要な問題点であり、今年度は実態調査とリハ工学士の係わりについて報告した。次年度以降は、各時期に応じて必要な 福祉機器の評価と実際の応用について、体系化に向けて研究を進めていきたい。

公開日・更新日

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