食物アレルギーにおける経口免疫療法の確立と治癒メカニズムの解明に関する研究

文献情報

文献番号
201126017A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーにおける経口免疫療法の確立と治癒メカニズムの解明に関する研究
課題番号
H22-免疫・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 力(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院臨床研究部)
  • 竹森 利忠(理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院医学系研究科小児科学)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
  • 吉原 重美(獨協医科大学医学部小児科)
  • 伊藤 節子(同志社女子大学生活科学部)
  • 五十嵐 隆(東京大学医学部小児科)
  • 北林 耐(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 松田 幹(名古屋大学大学院生命農学研究科・農学部 分子生体制御学研究分野)
  • 木戸 博(徳島大学疾患酵素学研究センター 酵素分子化学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食物アレルギーの疾病負担は大きいが、根本的治療法は確立されておらず、期待される経口免疫療法の報告も臨床試験としてのエビデンスレベルの低いものが多く、有効性と安全性は未確立である。本研究では我が国初のランダム化比較試験により経口免疫療法を安全性と有効性を兼ね備えた新規根本療法として確立すること、その機序の解明を目的とした。
研究方法
 鶏卵および牛乳アレルギー患者を対象に、二重盲検経口負荷試験で閾値確認後、当該食品を1日数回の摂取で、閾値以下の量から漸増、鶏卵1個、牛乳200mlまで到達させる急速免疫療法と同量の摂取を継続する維持療法を行った。科学性担保のためランダム化比較試験としたが、倫理的配慮で除去食を継続の対照群は3ヶ月の時点で治療群と比較した後に治療開始するDelayed control形式をとった。主要評価項目は、割付け3ヶ月後の負荷試験における誘発閾値とした。二次評価項目は割付け3ヶ月後の皮膚反応、アレルゲン特異的IgE, IgG, IgG4, IgA抗体、好塩基球活性化、QOLとした。さらに、維持療法1年後で2週以上の除去期間をおいて負荷試験を行い、耐性獲得の有無を判定した。免疫学的機序解明のため治療前後で有核細胞を凍結保存、T細胞のマイクロアレイ解析を行うこととした。
結果と考察
 鶏卵試験は45例が登録された(治療群23例、対照群22例)。主要評価項目である3ヶ月後の負荷試験閾値は治療群で有意に上昇、対照群は不変であった。特異的IgG,IgG4、IgA抗体は治療群で有意に上昇、対照群は不変、特異IgE抗体、抗原刺激好塩基球活性化は治療群でのみ有意に低下した。QOLも治療群のみ有意に改善した。摂取閾値の上昇は経口免疫療法によって食物アレルギーを治癒の方向に導いたことを意味するが、これにともない実際にQOLも改善したことは意義深い。免疫学的パラメーターの変化も臨床効果を裏付けるものであった。1年後の耐性確認の負荷試験では51%で改善した閾値が維持された。すなわち、少なくとも半数には耐性誘導も可能であることが示された。一方、副反応による脱落例は5例であり、治療不応因子の解明が必要と考えられた。牛乳試験は26例まで登録、試験継続中である。
結論
 鶏卵アレルギーに対して我が国初のランダム化比較試験による経口免疫療法を行い、有効性と免疫学的機序の一部を明らかにした。しかし、副反応は存在するため、安全性の確立にはさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126017Z