加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究

文献情報

文献番号
200938018A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究
課題番号
H21-労働・指定-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆宏(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 人間工学・リスク管理研究グループI)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 元也(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 人間工学・リスク管理研究グループ)
  • 大西 明宏(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 人間工学・リスク管理研究グループ)
  • 東郷 史治(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 作業条件適応グループ)
  • 石松 一真(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部)
  • 篠原 一光(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 権藤 恭之(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 臼井 伸之介(大阪大学大学院人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、加齢に伴う機能変化のどのような側面がどのような災害リスクにつながるのかを明らかにし、高年齢労働者を対象とした具体的・効果的・実践的な安全対策の検討・立案を図る。特に、高年齢労働者の心身機能の変化、特に機能低下を補うような作業方法・作業内容を工夫することで、就労を通じた高年齢労働者の社会参加を促進し、社会的な活力の増進、及び社会的生産性の維持・向上につながる方策について検討する。
研究方法
休業4日以上の労働災害に関するデータに基づき、高年齢労働者の災害の特徴について検討した。また、急ぎステッピング動作を用いた転倒リスクの評価に関する予備的検討、歩行実験による動作所要時間に関する検討、展望的記憶に関する調査を通じた認知的機能低下と補償的機能に関する検討を行った。
結果と考察
「転倒」「墜落、転落」といった災害では、年齢が高まるにつれて次第にその割合が高くなる一方、「はさまれ、巻き込まれ」「動作の反動、無理な動作」については、年齢が上がるにつれて減少していた。また、類似の災害であっても、年齢が上がるほど重篤度が高まることが伺えた。急ぎステッピング動作を用いた転倒リスクの評価に関しては、一部の項目で加齢による影響が認められたが、転倒経験の有無との関連は明確ではなかった。歩行実験からは、高齢者は歩行所要時間を実際よりも長く見積もる過大評価傾向にあること、「急いで歩く」場合の見積もりは「普通の速さで歩く」場合の見積もりに比べ過大評価傾向が小さいこと等が見いだされた。また、展望的記憶の失敗を補償する機能としてのメモの利用には、一定の補償効果はあるものの、課題条件によっては効果が小さいことが示されており、メモの利用によって補償される認知的側面がある反面、補償されない側面が存在することが示唆された。
結論
急ぎステッピング動作を用いた実験では、ステップ幅が短いステッピング動作の有効性を確認できれば、より安全にかつ容易にセルフチェックができる評価法となり得る。歩行実験に関しては、時間的に余裕がない状態で横断するというより現実的な条件設定、ならびに若年者を対象とした実験結果との比較によって、高年齢者の歩行時リスク評価の精緻化が可能である。展望的記憶に関しては、補償方略を提供するだけでなく、補償方略のメカニズムおよびその限界も考慮することで、高齢労働者の災害リスクの低減につながる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
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