がん対策推進基本計画の進捗管理に資する評価指標の実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202307016A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策推進基本計画の進捗管理に資する評価指標の実装に向けた研究
課題番号
23EA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所がん医療支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 市瀬 雄一(国立がん研究センター がん対策研究所医療政策部)
  • 加藤 元博(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 小児科)
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センター がん対策研究所がん政策評価研究部 )
  • 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究院 食道胃腸外学)
  • 増田 昌人(琉球大学 琉球大学病院がんセンター)
  • 森島 敏隆(大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 南 哲司(国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)
  • 澤田 典絵(倉橋 典絵)(国立がんセンター がん対策研究所 コホート研究部)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 令和5年3月に策定された第4期がん対策推進基本計画では、ロジックモデルに基づいて、がん対策を評価することとされている。本研究では、第4期計画の策定時に定められた個別目標の評価指標について、患者体験調査等の患者視点のデータに加えて、レセプトデータやがん登録等から得られるデータによる医療の質の評価に関する検討を行い、第4期計画の進捗管理に必要な評価指標の開発や改善を目的とする。
研究方法
 本研究は、成人患者・小児患者を対象とした患者体験調査や先行研究の結果を分析し、第4期計画の進捗評価の継続的な体制を発展させることを目的に、以下の課題を設定し、研究を実施する。
① 患者視点による評価指標の改善
 これまでの患者体験調査(成人、小児)を通じて明らかとなった課題について検討し、次回の患者体験調査の改善に向けた検討を行う。
② 患者視点のデータと医療データを用いた医療の質評価方法の開発
 患者視点からの医療の質評価指標の検討とともに、より客観的な指標として、院内がん登録、DPCデータなどの医療データを用いた評価指標の開発等の検討を行う。
③ 第4期計画の目標値の試行的策定
 がん対策推進基本計画に基づく施策の効果を客観的に評価するため、基本計画の目標値の設定可能性や各指標間の関連に関する検討を行う。
結果と考察
結果
 患者視点による指標評価の改善については、平成30年度実施の第2回患者体験調査、令和元年度実施の小児患者体験調査の結果および調査実施における課題を研究班で共有するととともに、令和5年度に実施した第3回患者体験調査の進捗状況を共有し、調査方法等の改善に向けた議論を行った。患者体験調査については、高齢者における無回答割合の実態を把握し、多選択肢方式での調査票作成の必要性や対象者の選定手順等に関する検討を行うとともに、セカンドオピニオンの分析について、患者視点からの患者報告によるデータとレセプトデータ等で得られるデータとの差異について検討した。小児患者体験調査については、患児への病状説明の状況等を加味した、本人回答の意義や実施可能性等について検討した。
 医療の質の評価方法の開発については、院内がん登録情報とDPCデータのリンケージデータベースを二次利用して、がん患者とがん診療の捕捉・同定を行うこととした。診療ガイドラインや診療エビデンス等を基に推奨される標準治療、標準的な診療過程等に関して、院内がん登録、DPCデータを用いて評価可能な指標を立案・策定し、指標の算出方法について検討を進めた。
 第4期計画の目標値の試行的策定については、第4期計画の目標値設定の可能性や各評価指標間の関連について検討した。年齢調整死亡率について、現在の傾向が継続すると仮定した場合の将来推計を試行的に行うとともに、がん医療の提供の分野における各評価指標間の関連を検討した。がん診療連携拠点病院による現況報告、Quality Indicator研究、患者体験調査から得られる各評価指標が最終アウトカムへ与える影響について検討することによって、目標値を設定しうると考えられた。

考察
 患者体験調査の課題解決に向けた検討においては、例として、セカンドオピニオンに関して、患者報告と医療データによる頻度に乖離があり、調査を実施する際にはその違いを認識し、調査における留意点を明らかにするため、今後の詳細な検討が必要と考えられた。小児患者体験調査については、小児がん対策の経時的な評価のため、本人回答や少数診療施設の調査参加等の課題を早急に解決し、次期調査の準備を進めていくことが必要と考えられた。
 医療データを用いた医療の質評価の指標の開発を推進することにより、患者の主観的評価に基づく評価分析に加えて、より客観的な指標による評価が可能となり、対策効果の可視化につながることが期待された。さらに、医療者と患者の両視点からの指標の開発をすすめることで、総合的な効果検証も期待できると考えられた。
 第4期計画の目標値の試行的策定については、年齢調整死亡率の将来推計や各評価指標間の関連について検討を行った。各分野のアウトプット指標が改善し、アウトカム指標へ与える影響に関する分析を行うことで、より緻密な目標値設定が可能になる可能性があることから、各指標間の関連を検討した上で、目標値の設定可能性について検討することが重要と考えられた。
結論
 患者視点による評価指標の改善に向けた成人患者・小児患者を対象とした患者体験調査の改善に関する検討、院内がん登録情報とDPCデータのリンケージデータベース等を活用した医療の質評価指標の立案・策定、第4期計画の指標間の関連性や目標値設定の可能性に関する検討を行った。本研究の取組・成果が、がん対策推進基本計画の進捗評価に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202307016Z