食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
202224010A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
20KA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の食品への移行は食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施しており、毎年行われているガイドライン改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、それらのデータを基にガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案に資することを目的とする。また、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:非破壊式装置を用いた測定法について検討する。試料中の放射性セシウムの分布や試料形状など試料ごとの特性が、形式の異なる複数の非破壊式装置の検出効率に及ぼす影響を調べ、検査性能を担保するための条件並びにその評価手法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データの解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを解析し、検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等の実態調査:食品からの内部被曝は、事故で放出されたセシウム等の人工核種よりも天然核種由来のものの方が大きいことが指摘されているものの、その実態はデータ不足で不明であることから、食品群ごとの混合試料中のポロニウム210を測定し、被曝線量の推定を行う。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
結果と考察
①同一の実試料を用いて異なる機種の非破壊式装置による測定とGe検出器を用いた公定法による測定結果との比較を主体に、野生きのこ全24種84検体を用いて検討した。これら野生きのこの100 Bq/kgに対するスクリーニング検査への適用性について、本年度を含む過去4年間(令和元年~4年)のデータを活用して回帰直線の予測区間による方法を用いて検討し、99 %予測区間の上限値が100 Bq/kgの場合の予想される試料の放射能濃度を評価した。その結果、機種及び品種によって異なるが、むきたけ、なめこ、ならたけについて、すでに非破壊検査の適用対象となっているまつたけと同等レベルのスクリーニングレベルが確保可能であることが分かった。本研究成果により令和5年3月になめこ、ならたけ、むきたけが「非破壊検査法による食品中の放射性セシウムスクリーニング法」の対象食品に追加された。
②平成24年度から令和4年度までの検査データのうち、「その他」のカテゴリの食品について解析した。多種多様な食品が含まれていたが、乾燥など濃縮工程を経る食品に基準値超過が見られたことから、これらの食品に関しては検査の必要性が示唆された。
③食品からのポロニウム210の摂取量では、最も寄与率の高い食品群は魚介類で約8割であった。これら実測に基づく摂取量と公開データに基づく喫食量、預託実行線量係数から、食品中ポロニウム210からの年間被曝線量は0.3-05mSvと推定され、現在の公称値とされる0.7mSvよりも低い可能性が示唆された。
④「食品の安全性」に関する一般的認識調査から、放射性物質に限らず、食品中の望ましくない物質とその基準値の設定に関する理解度が、食品安全への信頼と関連する可能性を見いだした。食品にゼロリスクを要求することと食品安全への不安が関連する可能性から、食品そのものの避けられないリスクについてのより一層のコミュニケーションを引き続き推進する必要があると考えられた。
結論
非破壊式測定装置を用いる検査法が、今回検討を行ったきのこ3種の試料および測定条件の範囲内においては、試料の前処理を伴う従来のスクリーニング検査とほぼ同等の性能で可能であると考えられたことから、これらの成果は検査法に反映された。効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224010B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
20KA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
  • 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の食品への移行は食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施しており、毎年行われているガイドライン改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、それらのデータを基にガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案に資することを目的とする。また、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:非破壊式装置を用いた測定法について検討する。試料の放射性セシウムの分布や形状などの特性が、形式の異なる複数の非破壊式装置の検出効率に及ぼす影響を調べ、検査性能を担保するための条件並びにその評価手法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データの解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを解析し、検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等の実態調査:食品からの内部被曝は、事故で放出されたセシウム等の人工核種よりも天然核種由来のものの方が大きいことが指摘されているものの、その実態はデータ不足で不明であることから、食品群ごとの混合試料中のポロニウム210を測定し、被曝線量の推定を行う。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
結果と考察
①同一の実試料を用いて異なる機種の非破壊式装置による測定とGe検出器を用いた公定法による測定結果との比較検討を主体に、野生きのこの計560検体(令和元年度~4年度)、皮付きたけのこ計49検体を用いて検討した。その結果、野生きのこでは、Ge検出器の測定結果と比較し、非破壊式装置による測定結果の多くで低めに評価される傾向が見られたものの、両者間で良好な相関が得られた。また、野生きのこの4種及びたけのこについて100 Bq/kgに対するスクリーニング検査への適用性について回帰直線の予測区間による方法を用いて検討し、99%予測区間の上限値が100 Bq/kgの場合の予想される試料の放射能濃度を評価した。その結果、機種及び品目によって異なるが、40~70 Bq/kg程度のスクリーニングレベルの設定が可能であることが分かった。本研究成果により事務連絡「非破壊検査法による食品中の放射性セシウムスクリーニング法について」が新たに発出され、3年間で野生きのこ4品目及び皮付きたけのこが当該検査の適用対象となった。
②平成24年度から令和4年度までの検査データのうち、水産物では特に海水魚及び淡水の養殖魚の安全性が高く、果実類では生鮮果実類の基準値超過は近年報告されていない一方で、果実を含む乾燥など濃縮工程を経る加工食品では基準値超過が見られたことから、これらの食品に関しては検査の継続性が示唆された。
③食品からのポロニウム210の摂取量では、最も寄与率の高い食品群は魚介類で約8割であった。これら実測に基づく摂取量と公開データに基づく喫食量、預託実行線量係数から、食品中ポロニウム210からの年間被曝線量は0.3-05mSvと推定され、現在の公称値とされる0.7mSvよりも低い可能性が示唆された。
④「食品の安全性」に関する一般的認識調査から、放射性物質に限らず、食品中の望ましくない物質とその基準値の設定に関する理解度が、食品安全への信頼と関連する可能性を見いだした。食品にゼロリスクを要求することと食品安全への不安が関連する可能性から、食品そのものの避けられないリスクについてのより一層のコミュニケーションを引き続き推進する必要があると考えられた。
結論
非破壊式測定装置を用いる検査法が、今回検討した条件の範囲内においては、試料の前処理を伴う従来のスクリーニング検査とほぼ同等の性能で可能であると考えられたことから、これらの成果は検査法に反映された。効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224010C

収支報告書

文献番号
202224010Z