網羅的なゲノム異常解析に基づく多段階発がん過程並びに臨床病態の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200924001A
報告書区分
総括
研究課題名
網羅的なゲノム異常解析に基づく多段階発がん過程並びに臨床病態の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所 生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所 ウイルス部)
  • 柴田 龍弘(国立がんセンター研究所 ゲノム構造解析プロジェクト)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 村上 善則(東京大学 医科学研究所)
  • 森下 和広(宮崎大学 医学部)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
74,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、多段階発がん過程および多様性のあるがんの臨床病態を、がん細胞内に蓄積しているゲノム異常との対応で把握し、個々のがんに最適の治療法を提供する個別医療・予知医療の実現へ向けて、がんの分子診断や分子標的療法に有用な新たな情報を集約することである。
研究方法
高精度なゲノム解析技術を駆使して、死亡率の高い肺がん、膵がん、白血病などのゲノム異常に関して網羅的な解析を行った。高頻度にゲノム異常を起こしている遺伝子に関しては、臨床病理学的所見との関連性を明らかにし、診断的意義を検討した。また、正常上皮細胞やがん細胞株を用いて細胞のがん化過程の再現とがん形質の抑制・誘導の検討を行い、ゲノム異常を起こしている遺伝子によるがん特性発現の分子経路を明らかにし、その制御法を検討した。
結果と考察
新規肺がん感受性遺伝子としてHLA-DQA1を同定し、TERTの多型と組み合わせることで個々人の肺がん体質の違いを推定できる可能性を示した。MYC過増幅を呈する小早期肺腺がん患者が予後不良であることを見出した。アレイ解析、発現プロファイル解析、miRNA発現解析、メチル化プロファイル解析やsiRNA libraryを用いた機能解析を組み合わせて、PHLDA3などの新規難治がん関連遺伝子、肝細胞がん抑制遺伝子型miR-124とmiR-203などを複数同定し、個別診断法や新規治療法の開発へのシーズを構築した。変異CBLは造血前駆細胞のサイトカインに対する感受性を亢進することで造血器腫瘍の発症に関与していることを見出した。成人T細胞白血病に特異的なゲノム異常として同定したNDRG2は口腔がんでもがん抑制遺伝子として働いており、白血病と固形がんに共通の発がん機構があることが分った。CADM1は、上皮性腫瘍では発現欠如が浸潤、転移を促進し、成人T細胞白血病では浸潤促進因子として働くことを明らかにした。舌がんのin vitro多段階発がんモデルを作製し、膵がん、大腸がんのモデル作製のために正常不死化細胞株を樹立した。
結論
HLA-DQA1とTERTの多型から肺がんリスクを推定する手法を提示した。早期肺腺がんの予後を規定する遺伝子としてMYCを同定した。難治がんの新規がん関連遺伝子を複数同定し、治療応答性や予後判定などへの有用性を示した。変異CBLによる白血病発症機序の一端を解明した。成人T細胞白血病では固形がんで見られる情報伝達系異常も存在することを見出した。CADM1は上皮性腫瘍ではがん抑制蛋白質、成人T細胞白血病では浸潤促進因子として機能することを示した。舌がんのin vitro多段階発がんモデルを作製した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200924001B
報告書区分
総合
研究課題名
網羅的なゲノム異常解析に基づく多段階発がん過程並びに臨床病態の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所 生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所 ウイルス部)
  • 柴田 龍弘(国立がんセンター研究所 ゲノム構造解析プロジェクト)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 村上 善則(東京大学 医科学研究所)
  • 森下 和広(宮崎大学 医学部)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、多段階発がん過程および多様性のあるがんの病態をがん細胞に蓄積しているゲノム異常との対応で把握し、個々のがんに最適の治療法を提供する個別医療・予知医療の実現へ向けて、新たな分子診断法や分子標的治療の開発研究を進めることである。
研究方法
肺がん、肝臓がん、膵臓がん、白血病等の難治がんを中心に様々な最新の手法を導入して網羅的なゲノム異常解析を行ってがんの診断・治療に役立つ標的分子を同定し、新たな診断法への導入の可能性を追求するとともに、ゲノム異常によるがん細胞特性発現の分子経路を明らかにして新規治療法の開発研究を展開する。
結果と考察
肺がんの新規感受性遺伝子としてHLA-DQA1を、候補がん抑制遺伝子としてPTPRD、KEAP1、PHLDA3を、再発予後を規定する遺伝子としてMYCを同定した。神経芽腫でメチル化している候補がん抑制遺伝子としてPTGDR/PTGER2を、口腔がんと肝細胞がんのがん抑制遺伝子型マイクロRNAとしてmiR-137/miR-193a、miR-124/miR203を、白血病で転座している遺伝子としてPAX5とCBLを、失活している遺伝子としてZEB1を同定した。肺がんにおけるLKB1の変異は男性喫煙者の低分化腺がんに多く、肺がんの上皮間葉移行を引き起こすことを明らかにした。CADM1は上皮性腫瘍ではがん抑制蛋白質として、白血病では浸潤促進因子として相反して働くことを明らかにした。正常上皮細胞を用いて子宮頚がん、上皮性卵巣がん、舌がんのin vitro多段階発がんモデルを
作製し、すべてのがんに共通のがん化経路があることを明らかにした。
結論
難治がんの発生とその悪性化に関わる分子として、HLA-DQA1,PTPRD,KEAP1,PHLDA3,PTGDR/PTGER2,PAX5,CBL,ZEB1などの新規遺伝子とmiR-137/miR193a,miR124/miR203などのマイクロRNAを同定し、発がんにおける異常の意義を明らかにした。これらの情報に基づいた難治がん予後改善を目指した新規分子診断法や新規治療法の開発研究が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924001C