LCAT遺伝子導入前脂肪細胞を用いた家族性LCAT欠損症患者に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200917013A
報告書区分
総括
研究課題名
LCAT遺伝子導入前脂肪細胞を用いた家族性LCAT欠損症患者に対する新規治療法の開発
課題番号
H21-トランス・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武城 英明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 佐藤 兼重(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 白井 厚治(東邦大学医療センター 佐倉病院)
  • 花岡 英紀(千葉大学 医学部附属病院)
  • 黒田 正幸(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,427,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症に脂肪細胞自己移植による持続的LCAT蛋白補充治療法を確立し、多くの難治性疾患における新規遺伝子治療としての可能性を提示する。
研究方法
平成21年度は、ヒト、マウス前脂肪細胞を用い、1)前脂肪細胞から分泌されたLCAT蛋白の機能を検討するための薬効評価系及び生着率評価系の確立、2)移植後の持続的なLCAT産生を確保するための、移植細胞の生着率向上を目的とする製剤化検討を実施した。同時にヒト前脂肪細胞について、治療用遺伝子の運び屋としての特性をLCAT遺伝子、マーカー遺伝子を搭載したレトロウイルスベクターを用いて精査した。また、3)本治療法を用いた遺伝子治療臨床研究実施に向けた申請業務を実施した。
結果と考察
レトロウイルスベクターによる高陽性率の遺伝子導入とその導入コピー数が低いヒト前脂肪細胞の調製法を確立し、本細胞が遺伝子治療用細胞として薬効・安全性で優れていることを明らかにした。LCAT欠損症患者血清はHDLの成熟が障害され、低分子サイズの未熟HDL粒子のみ観察される。LCAT遺伝子導入前脂肪細胞の培養上清を、健常人血清LCAT蛋白濃度と同等濃度になるように患者血清に添加したところ、ApoAIを指標としたHDLサイズ分布解析では患者HDLは高分子域に移動し是正され、健常人分布に近づいた。このことは、前脂肪細胞から分泌されたLCAT蛋白が、患者の病態を改善することを示唆する。本技術実用化に必要な移植細胞の生着性について、Scaffoldに関する検討をマウス移植実験で実施した。日常臨床で組織接着剤として使用されているフィブリンゲルがScaffoldとして使用可能であることが明らかになった。
結論
LCAT遺伝子導入前脂肪細胞はLCAT欠損症患者の病態を改善し得る機能を持つLCAT蛋白を遺伝子導入コピー数に依存して分泌することが明らかとなった。遺伝子治療臨床研究申請書類を千葉大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会に提出し、審議・承認を受け、現在は厚生労働省への申請を行っている。

公開日・更新日

公開日
2011-11-04
更新日
-