生活習慣病増悪フェーズの鍵分子「HMGB1」に対する分子標的抗体薬の臨床応用研究

文献情報

文献番号
200917010A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病増悪フェーズの鍵分子「HMGB1」に対する分子標的抗体薬の臨床応用研究
課題番号
H21-トランス・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西堀 正洋(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 生体制御科学専攻 生体薬物制御学講座 薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 英夫(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科生体制御科学専攻生体薬物制御学講座 薬理学 )
  • 劉 克約(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科生体制御科学専攻生体薬物制御学講座 薬理学 )
  • 槇野 博史(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 病態機構学講座 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 松川 昭博(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 病態機構学講座 免疫病理学)
  • 伊達 勲(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 生体制御科学専攻 脳神経制御学講座 脳神経外科学)
  • 吉野 正(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 腫瘍制御学講座 腫瘍病理学 )
  • 森 秀治(就実大学 薬学部 薬学科 生体情報学)
  • 友野 靖子(医療法人創和会 重井医学研究所 細胞生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
71,386,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HMGB1抗体治療を臨床応用するために、作用機序、有効性、安全性全ての面から明確にする必要がある。本研究では、抗体の特性解析から最適抗体を選定し、脳虚血後の超急性期から生じると考えられる血液―脳関門の破綻に特に焦点をあて、抗体効果を解析した。安全性につながる毒性試験は、単回ならびに反複投与を実施した。脳血管攣縮ならびに脳動脈硬化症への応用可能性をモデル動物で証明した。
研究方法
3種類のクローン抗体から最適のクローンを選択した。ラット脳梗塞モデルを用いて、虚血後の血液―脳関門の構造を、透過型電子顕微鏡で観察した。アストログリア細胞の終足腫脹を定量化し、関門構造の破綻の指標とし、抗HMGB1抗体の効果を定量した。ApoEノックアウトマウスの動脈硬化症モデルを用いて、慢性的な抗HMGB1抗体投与が、粥状硬化巣発生を抑制できるかどうかを検証した。ウサギの自己血の大槽内投与によって誘導される脳底動脈血管攣縮に対する抗体投与の効果を検証した。急性単回ならびに反復投与による毒性試験をラットを用いて行なった。


結果と考察
HMGB1抗原特異性ならびに抗原親和性の観点から、治療抗体を選んだ。ラットの脳梗塞モデルにおいて、早期に血液―脳関門の広範な破綻が透過型電子顕微鏡観察で明らかになった。血液-脳関門の形態的変化は、200μg の抗HMGB1抗体の1回尾静脈内投与で約70%抑制された。経時的に撮影されたT2強調MRIでは、抗HMGB1抗体によって脳浮腫が顕著に抑制された。マウス粥状動脈硬化症では、抗HMGB1抗体の慢性投与によってその形成が著明に抑制された。ウサギのクモ膜下出血後の血管攣縮モデルでは抗HMGB1抗体投与が、HMGB1遊離を抑制した。薬用量の5倍量の急性単回投与では、行動学的、病理学的に毒性作用は検出されなかった。





結論
抗HMGB1抗体治療法は、血液―脳関門の保護、脳血管攣縮、動脈硬化症のいずれに対しても極めて優れた効果を発揮した。抗HMGB1抗体の静脈内投与は極めて簡便な投与法である。単回ならびに反復投与による毒性試験の結果、これまでに毒性を疑わせる所見は認められていない。実用化開発にとって、極めて重要な知見である。

公開日・更新日

公開日
2011-11-04
更新日
-