高速シークエンサーを用いたnon-coding RNAまで包括されたトランスクリプトーム解析による新規安全性バイオマーカーの同定

文献情報

文献番号
200909012A
報告書区分
総括
研究課題名
高速シークエンサーを用いたnon-coding RNAまで包括されたトランスクリプトーム解析による新規安全性バイオマーカーの同定
課題番号
H20-バイオ・若手-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 創健(京都大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、non-coding RNAが生理作用や病態発現に重要な役割を果たすことが明らかとなったが、non-coding RNAに着目したトキシコゲノミクスの研究報告は皆無である。本研究課題では、ギガシークエンサーを用いてnon-coding RNAまで包括されたデジタルトランスクリプトーム解析を世界に先駆けてトキシコゲノミクスに適用し、従来より高感度・高精度な薬物毒性予測を実現する肝毒性の新規安全性バイオマーカーを同定することを目的とする。本課題により、従来の限定された解析では見いだせなかった新規バイオマーカーの同定を試みるとともに、non-coding RNAの関与する薬物毒性の発症・分子メカニズムの解明、さらに細胞障害・細胞死を抑制するための治療標的分子の発見を目指す。
 平成21年度は、従来では不可能であった転写方向性情報を有するnon-coding RNA包括デジタルトランスクリプトームデータ取得法を新規に開発し、トログリタゾン肝毒性モデルにおける経時的データを取得・評価した。
研究方法
WST-1法による細胞生存活性を指標にして、HepG2細胞に対する毒性発現に最適なトログリタゾンの薬物処理時間・用量を同定し、ギガシークエンサーを用いて、トログリタゾンによる薬物肝毒性の転写方向性情報を有するnon-coding RNA包括デジタルトランスクリプトームデータを取得した。得られたリードはアライメント解析され、UniGeneのカテゴリーにおいて発現比較解析及び主成分分析を行った。
結果と考察
アライメント解析の結果、tRNAやrRNAを除いた転写産物のうち、読まれたリードの約半分がnon-coding RNAに由来することが示唆された。UniGeneのカテゴリーにおいてトログリタゾンの毒性刺激依存的に発現変動した転写産物の半分以上はnon-coding RNAだった。さらに主成分分析の結果、トログリタゾンの肝毒性に強く影響していることが示唆された11個のUniGeneのうち6個がnon-coding RNAに由来するものと考えられた。
結論
トログリタゾンを用いた肝毒性モデルにおいて、non-coding RNAが薬物肝毒性に強く関与している可能性が示唆された。これはnon-coding RNAが薬物肝毒性に関与することを示唆した初めての成果である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-19
更新日
-