心筋組織再生を物理的・機能的に促進する新規再生治療用デバイスの開発

文献情報

文献番号
200906016A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋組織再生を物理的・機能的に促進する新規再生治療用デバイスの開発
課題番号
H20-再生・若手-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 充弘(大阪大学 医学部附属病院 未来医療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
弾性繊維の発現を制御する因子と、心筋の再生を誘導する因子を、固定もしくは徐放するマトリックスを構築し、不全心に移植することで、心臓の弾性を回復させ、さらに心筋組織を再生させる、新規な心筋再生用デバイスを開発する。
研究方法
現在、我々が行っている、心筋梗塞部位への筋芽細胞シート移植によって心機能の回復が認められた心筋組織について、遺伝子発現パターンの遺伝子チップ解析結果等から、心筋組織再生時に高発現する因子の抽出を行い、その心機能改善効果を検討した。
エラスチン産生促進因子については、線維芽細胞等にエラスチン産生を促進する候補因子を選択し、in vitroにおける効果の検討を行った。
さらに、心筋再生医療用の新規なマトリックスとして、終末糖化産物(AGEs)を応用した因子保持・徐放担体を作製した。そこで、糖化架橋したアルブミンと各種候補因子の組み合わせについて、その血管新生誘導効果ならびに心機能改善効果にについて検討を行った。
結果と考察
リボース化架橋アルブミンは、ラット下肢虚血部に移植後4週間で優位に血流の改善が認められた。さらに、ラット慢性期心筋梗塞部位への移植においても心機能の改善と左室の拡大を抑制した。さらに、本マトリックスの心機能改善効果を、各種因子と組み合わせることで、増強させることが可能となった。
本研究では、安全性と応用性を兼ね備えた材料として、生体由来であるアルブミンを基本材料とした。さらに、アルブミンに糖を付加するだけで、血管新生効果を持たせることを可能にした。この新規マトリックスは、マトリックス自体が血管新生誘導能を保持しており、再生医療用の血管新生材料として有用である。さらに心筋再生誘導因子と組み合わせることで、因子のもつ心筋再生効果を局所で効果的に発現させることが可能となった。
結論
心筋組織の修復を物理的、機能的に促す因子の選択とそれら因子を保持するマトリックスにより、新規の心筋再生デバイスを開発した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200906016B
報告書区分
総合
研究課題名
心筋組織再生を物理的・機能的に促進する新規再生治療用デバイスの開発
課題番号
H20-再生・若手-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 充弘(大阪大学 医学部附属病院 未来医療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
弾性繊維の発現を制御する因子と、心筋の再生を誘導する因子を、固定もしくは徐放するマトリックスを構築し、不全心に移植することで、心臓の弾性を回復させ、さらに心筋組織を再生させる、新規な心筋再生用デバイスを開発する。
研究方法
現在、我々が行っている、心筋梗塞部位への筋芽細胞シート移植によって心機能の回復が認められた心筋組織について、遺伝子発現パターンの遺伝子チップ解析結果等から、心筋組織再生時に高発現する因子の抽出を行い、その心機能改善効果を検討した。
エラスチン産生促進因子については、線維芽細胞等にエラスチン産生を促進する候補因子を選択し、in vitroにおける効果の検討を行った。
さらに、心筋再生医療用の新規なマトリックスとして、終末糖化産物(AGEs)を応用した因子保持・徐放担体を作製した。そこで、糖化架橋したアルブミンと各種候補因子の組み合わせについて、その血管新生誘導効果ならびに心機能改善効果にについて検討を行った。
結果と考察
選択したエラスチン産生促進因子について、ラット心臓由来線維芽細胞の培養上清に添加し遺伝子発現の変化をRT-PCRにて評価した結果、エラスチン遺伝子の発現が増強することが明らかとなり、エラスチン産生促進因子として有用であることが示された。
架橋アルブミンは、作製条件の違いによって、ゲル状やスポンジ状など異なる形態のものを作製することが可能となった。さらに、リボース化架橋アルブミンは、ラット下肢虚血部に移植後4週間で優位に血流の改善が認められた。さらに、ラット心筋梗塞部位への移植においても心機能の改善と左室の拡大を抑制した。また、本マトリックスの心機能改善効果を、各種因子と組み合わせることで、増強させることが可能となった。
選択した因子を、障害部位で効果的に機能発現させるためにはマトリックスの役割が重要となる。本研究では、安全性と応用性を兼ね備えた材料として、生体由来であるアルブミンを基本材料とした。さらに、アルブミンに糖を付加するだけで、血管新生効果を持たせることを可能にした。この新規マトリックスは、マトリックス自体が血管新生誘導能を保持しているという、極めてユニークな性能を持っており、再生医療用の血管新生材料として有用である。さらに心筋再生誘導因子と組み合わせることで、因子のもつ心筋再生効果を局所で効果的に発現させることが可能となった。
結論
心筋組織の修復を物理的、機能的に促す因子の選択とそれら因子を保持する、新規な心筋再生用デバイスを開発した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200906016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の最も大きな特色は、心臓の機械的補助をする弾性組織の産生を促進する因子と、心筋再生を誘導する因子を固定、徐放するようなマトリックスを移植することで、自己組織の修復能力を機械的、機能的に制御し、心筋組織を再生することである。つまり、細胞移植や細胞培養など必要とせず、自己体内で自己組織修復能により心筋を再生するデバイスの開発は、末期重症心不全治療における新しい方向性を見出すことが可能となる。
臨床的観点からの成果
本研究は、これまでまったく開発されてこなかった新規な治療法の開発であり、この研究が完遂し、臨床応用されれば、補助人工心臓・心臓移植を代表とする重症心不全治療に革命的な変革をもたらす可能性がある。本研究が目指す心筋再生デバイスの開発は、心臓移植や細胞治療などの特殊な治療法と異なり、一般病院でも可能で、汎用性の高い治療法になりうると考えられ、21世紀の新しい治療としてその重要性は極めて高いと思われる。
ガイドライン等の開発
本研究では、現状生物由来製品等を加工してその目的機能を発揮しているが、今後、さらなる技術改良により、生物由来製品等を含まないデバイスの開発を目指し、より安全性の高いデバイスの開発が可能となる。
その他行政的観点からの成果
心移植でしか救命できない重症心不全患者を救済することが可能となる。加えて、心臓移植と比較して安価な重症心不全患者に対する根治的治療法が可能となり、医療経済へも貢献すると期待される。本研究は、基礎的研究成果の社会還元にむけた一層の加速ならびに国際競争力の強化に資するものである。
その他のインパクト
わが国の心不全による年間死亡数は約4万3千人、特にend-stage心不全にあっては1年死亡率が75%とされる。心臓移植におけるドナー不足を勘案すると、重症心不全に対する心筋再生治療法の研究開発は急務である。本デバイスが実現する、細胞移植や細胞培養など必要とせず、自己体内で自己組織修復能により心筋を再生するデバイスの開発は、末期重症心不全治療における新しい方向性を見出すことが可能となる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saito A, Takekita K, Miki K, Sawa Y
Crosslinked and glycated albumin such as advanced glycation end products (AGEs) induce angiogenesis in rat ischemic hindlimb
on contribution  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-