食品中に残留する農薬等の規格基準に係る分析法における不確実要素に関する調査研究

文献情報

文献番号
200734007A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中に残留する農薬等の規格基準に係る分析法における不確実要素に関する調査研究
課題番号
H17-食品-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 英明(東京農工大学大学院共生科学技術研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17、18年度に、Codex及び諸外国の取り組み状況等の国際的情勢を調査し、それに基づき、食品中の残留農薬分析法を標準化し、不確かさ推定法を通知した。本年度は、その実証試験を実施する。また、特に最近広く使用されるLC/MS分析では標準添加法が行われているが、そのバリデーション法の確立及び不確かさ推定法を提示する。以上により、食品検査において分析値の不確かさの提示が要請されている国際動向に応えられるようにする。同時に、微生物試験に関する状況についても調査を進め、必要に応じて要素技術開発を進める。
研究方法
平成18年度にまとめた「食品中の残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(食安基発第1115001号)(H19.11.15通知)に従って、エチオンなど10種類の農薬とホウレンソウなど5種類の作物の計50の組み合わせについて、分析法を検証した。標準添加法については、LC/MSによる農薬等の一斉試験法I及びIIから選定した15種類の農薬を、オレンジ及び大豆に添加して得た試料について、LC/MS分析を行い、添加濃度と測定精度の関係を調べた。微生物試験に関してはPercoll密度勾配遠心分離後の各画分を簡便迅速且つ高精度に採取する装置開発のための基本設計仕様を検討した。
結果と考察
ガイドラインに従った分析法に関して、選択性については各作物で測定の妨害となるピークは認められなかった。回収率は全ての試料でガイドラインの目標値70~120%に収まった。また,今回の添加濃度での併行精度RSD の目標値は15%以下,室内精度は20%以下であるが,何れの組み合わせもこの目標値を満足した。標準添加法では、例えばチフェンスルフロン-メチルの添加濃度とピーク面積の相関を調べた結果、添加濃度が検出限界に近くなると、ノイズの影響が大きくなることが確認された。微生物生菌分離に関しては、多チャンネル採取管アセンブリー、及びマイクロフロー制御プレートの設計、製作、機能試験を行い、良好な結果を得た。
結論
食品中の残留農薬分析に関して、ガイドラインの実効性を検討し、その妥当性が実証されたこと、標準添加法に関して、添加濃度が検出限界に近い場合の測定精度に及ぼす影響について有用な知見が得られたことなど、各分担課題とも、所期の目標を達成し、科学技術的にも行政的にも有意義な成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200734007B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中に残留する農薬等の規格基準に係る分析法における不確実要素に関する調査研究
課題番号
H17-食品-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 英明(東京農工大学大学院共生科学技術研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品検査における化学分析結果が、国際的に正当性を得るには、その分析値の不確かさを提示することが要請されている。本研究は、食品中の残留農薬等の分析に関して、その要請に応えることを目的としており、国際動向の調査に基づき、整合性・合理性のある不確かさ推定法を提示する。また、特にLC/MS分析で通常採用されている標準添加法に対して、バリデーション法の確立及び不確かさ推定法を提示する。さらに副次的課題として、微生物試験法における状況についても調査し、対応を検討する。
研究方法
Codex残留農薬委員会及び分析及びサンプリング法委員会、Eurachem/CITAC、等で討議ないし作成された文献を邦訳し、それらを参考に「食品中の残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(食安基発第1115001号)(H19.11.15通知)をまとめた。そして、このガイドラインに従ってエチオンなど10種類の農薬とホウレンソウなど5種類の作物の計50の組み合わせについて、分析法を検証した。標準添加法では、LC/MSによる農薬等の一斉試験法I及びIIから選定した15種類の農薬を、オレンジ及び大豆に添加して得た試料について、LC/MS分析を行い、添加濃度と測定精度の関係を調べた。微生物試験では、非培養法と培養法を同じ基準でバリデーションするために重要な生菌分離技術について調査し、音波分離、濾過法、密度勾配遠心分離法について検討した。
結果と考察
ガイドラインに従った分析法の検証の結果、選択性、回収率は全て目標値を満足した。マトリクスの影響を除くために使用される標準添加法では、回帰直線の信頼区間を計算する方法を適用し、その不確かさと検出限界を求める方法を検討し、添加濃度、前処理の精度が大きく影響することを明らかにした。微生物試験では、Percoll密度勾配遠心分離法が有望と判断し、その各画分を簡便迅速且つ高精度に採取する装置開発のための基本設計仕様を明らかにした。
結論
食品中の残留農薬分析に関して、ガイドラインの実効性を検討し、その妥当性が実証されたこと、標準添加法に関して、添加濃度が検出限界に近い場合の測定精度に及ぼす影響について有用な知見が得られたことなど、各分担課題とも、所期の目標を達成し、科学技術的にも行政的にも有意義な成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200734007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
化学分析結果の不確かさの推定は、統計的解析操作の上では、信頼性区間の推定と変わらない。特に、食品分析で「不確かさ」を議論する場合は、その個々の分析結果が、統計的解析に耐えるように、誰が実施しても同じ結果が得られるようなプロトコールに基づいて得られたものか、という点が重要である。それには、分析を繰り返し実施して、その統計的バラツキを実測することが必要である。本研究でも、そうした実測の結果に、提唱したガイドラインの妥当性を実証している。したがって専門的に十分意義のある結果となっている。
臨床的観点からの成果
本研究は、臨床的観点からの成果は特にない。
ガイドライン等の開発
食品分析において、分析結果が国際的に正当性を得るには、その分析値の不確かさを提示することが要請されている。この要請に応えることは行政的に緊急の課題であった。本研究は、この課題遂行のために実施され、以下に記すガイドラインを通知した。不確かさの推定法に関して、国際的には所謂トップダウン法が推奨されている。対比されるボトムアップ法の検証も必要と思われるが、行政科学的には、前者のみでも十分機能し、有用な成果と判断される。
その他行政的観点からの成果
分析法における不確かさを推定する前提は、その分析法がバリデーション(妥当性確認)されていることである。本研究ではCodex残留農薬委員会及び分析及びサンプリング法委員会、Eurachem/CITAC、等で討議ないし作成された文献を邦訳し、それらを参考に、「食品中の残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(食安基発第1115001号)(H19.11.15通知)としてまとめた。これによって、各試験所が、自主的に不確かさの推定ができるようになったことは、行政的に大きな成果である。
その他のインパクト
日本薬学会、日本防菌防黴学会、などにおける研究発表を通じてパブリックコメントを得るようにしたが、特別に公開シンポジウムに企画には至っていない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
食品分析における妥当性確認に関する著書の共同執筆等。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
日本薬学会(2007.3)での研究発表「標準添加法の不確かさについて」(松田、他)、日本防菌防黴学会(2007.5)での特別講演「微生物検査法における生菌分離技術の開発」(松岡)など。
学会発表(国際学会等)
1件
AOACインターナショナル(2007.9)での研究発表。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-