乳幼児食品中の有害物質及び病原微生物の暴露調査に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200734003A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児食品中の有害物質及び病原微生物の暴露調査に関する基礎的研究
課題番号
H17-食品-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 吉池 信男(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで、食品からの有害化学物質等の成人の摂取量調査は実施されてきたが、成人とは著しく異なる食品摂取をする乳幼児に対して系統的な摂取量調査は行われていない。乳幼児は、一般に成人よりも化学物質や有害微生物に対する感受性が高く、成人の調査結果を外挿することは適当でないと思われる。本研究は、調製粉乳、ベビーフードなどの乳幼児用食品について、摂取時期・摂取量の把握を行い、乳幼児における食品からの有害化学物質の摂取量や有害微生物等への暴露の可能性を把握し、乳幼児が摂取する食品の安全対策を進めるための基礎的データの収集を行うと共に、それぞれの暴露リスクの検討を試みることを目的とする。
研究方法
有害化学物質:市販乳幼児食品中の実態調査を行った。無機化合物の無機ヒ素は、水素化物変換-コールドトラップ-原子吸光法により定量した。有機化合物のフランはヘッドスペース-GC/MS法を用い、不均質な固体試料は氷冷下ホモジナイズし、均質化して定量した。
有害微生物:エンテロバクター・サカザキを中心に研究した。FDA法に準じたMPN法により、市販調製粉乳の汚染実態調査を行った。本菌感染症例の現地調査、分離菌株の細菌学的分析、調製粉乳の調乳および管理における本菌の制御方法の検討を行った。
摂取量調査:乳幼児食品の摂取量は、関連文献及び、国民健康・栄養調査のデータを活用した。乳幼児2,400名を対象とする乳幼児の食生活に関する全国実態調査のデータを用いて解析を行った。乳児用粉乳の調整・管理はアンケート調査によりNICUを持つ病院の実態を調査した。
結果と考察
有害化学物質:無機ヒ素で、やや高い値の乳幼児用食品があったが、摂取量推定から、問題ないレベルの汚染と結論した。フランは乳児用食品の一部で比較的高値を示したが、存在量と毒性から、リスクは低いと推定された。
有害微生物:エンテロバクター・サカザキは、市販の乳児用調製粉乳からわずかであるが検出された。国内で1例本菌による新生児脳炎が確認されたが、感染経路は特定できなかった。調製粉乳は70℃の高温水で調乳することにより感染の恐れは低減される。
結論
乳幼児の食品摂取量調査結果を合わせて有害化学物質や有害微生物に関し、それぞれの暴露リスクの検討を試みた。検討した有害物質については高いリスクは認められなかった。有害微生物対策に乳児用調製粉乳は70℃の高温調乳が有用である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200734003B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児食品中の有害物質及び病原微生物の暴露調査に関する基礎的研究
課題番号
H17-食品-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 吉池 信男(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
  • 豊福 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで、食品からの有害化学物質等の成人の摂取量調査は実施されてきたが、成人とは著しく異なる食品摂取をする乳幼児に対して系統的な摂取量調査は行われていない。乳幼児は、一般に化学物質や有害微生物に対する感受性が高く、成人の調査結果を外挿することは適当でないと思われる。本研究は、乳幼児用食品について、摂取時期・摂取量の把握を行い、乳幼児における食品からの有害化学物質の摂取量や有害微生物等への暴露の可能性を把握し、乳幼児が摂取する食品の安全対策を進めるための基礎的データの収集を行い、暴露リスクの検討を試みることを目的とする。
研究方法
有害化学物質:無機ヒ素とフランの試験法を検討し、乳幼児食品中の実態調査を行った。無機ヒ素は、水素化物変換-コールドトラップ-原子吸光法により定量した。有機化合物のフランはヘッドスペース-GC/MS法を用い、不均質な固体試料は均質化して定量した。
有害微生物:海外で問題となっているエンテロバクター・サカザキを中心に研究した。FDA法に準じたMPN法により、調製粉乳の汚染実態調査を行った。本菌感染症例の現地調査、製造所における汚染経路の解明、分離菌株の細菌学的分析、調製粉乳の調乳および管理における本菌の制御方法の検討を行った。
摂取量調査:乳幼児食品の摂取量は、関連文献及び、国民健康・栄養調査のデータを活用した。乳幼児2,400名を対象とする乳幼児の食生活に関する全国実態調査のデータを用いて解析を行った。乳児用粉乳の調整・管理はアンケート調査によりNICUを持つ病院の実態を調査した。
結果と考察
有害化学物質:無機ヒ素とフランの試験法を確立した。無機ヒ素で、やや高い値の乳幼児用食品があったが、摂取量推定から、問題となるレベルではないと結論した。フランは乳児用食品の一部で比較的高値を示したが、存在量と毒性から、リスクは低いと推定された。
有害微生物:エンテロバクター・サカザキは、市販の乳児用調製粉乳からわずかであるが検出された。国内で1例本菌による新生児脳炎が確認されたが、感染経路は特定できなかった。調製粉乳は70℃の高温水で調乳することにより感染の恐れは低減される。
結論
乳幼児の食品摂取量調査結果を合わせて有害化学物質や有害微生物に関し、それぞれの暴露リスクの検討を試みた。乳幼児期の食品のリスク評価は、我が国ではこれまでに十分に行われておらず、一つのアプローチを示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200734003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食品からの有害化学物質等の成人の摂取量調査は実施されてきたが、成人とは著しく異なる食品摂取をする乳幼児に対してこれまで系統的な摂取量調査は行われていない。乳幼児は、一般に成人よりも化学物質や有害微生物に対する感受性が高く、成人の調査結果を外挿することは適当でないと思われる。そこで、調製粉乳、ベビーフードなどの乳幼児用食品について、摂取時期・摂取量の把握を行い、乳幼児における食品からの有害化学物質の摂取量や有害微生物等への暴露の可能性を把握し、それぞれの暴露リスクの検討を行った。
臨床的観点からの成果
乳幼児食品の摂取量は、関連文献及び、国民健康・栄養調査のデータを活用した。乳幼児2,400名を対象とする乳幼児の食生活に関する全国実態調査のデータを用いて解析を行った。乳児用粉乳の調整・管理状況に関してはアンケート調査によりNICUを持つ病院の実態を調査した。国内のエンテロバクター・サカザキの感染事例1例を確認した。
ガイドライン等の開発
CODEXの乳幼児用調製粉乳の国際規格作成作業部会(2007年6月カナダにて開催)の議論にあたり、研究班の調査結果である国内の調製粉乳のエンテロバクター・サカザキの汚染実態と感染事例に関するデータを参考とした。
その他行政的観点からの成果
乳児用調製粉乳の調乳にあたっては、70℃以上の高温水を用いることという内容が記載されることになったが、その根拠となるデータを提供した。
その他のインパクト
読売新聞夕刊(2008年3月8日付)記事にて、粉ミルクの細菌対策について取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nagaoka M H, and Maitani T
Analysis of inorganic arsenic in foods by hydride generation-cold trap-atomic absorption spectrophotometry.
Metal Ions in Biology and Medicine , 9 , 75-77  (2006)
原著論文2
Yoshida I, Isagawa S, Kibune N et al.
Rapid and improved determination of furan in baby foods and infant formulas by headspace GC/MS.
J. Food Hyg. Soc. Japan , 48 , 83-89  (2007)
原著論文3
豊福肇,窪田邦宏, 森川馨
乳児用調製粉乳(Powdered Infant Formula)の摂取による乳児のSalmonella アウトブレイク
国立医薬品食品衛生研究所報告 ,  (124) , 74-79  (2007)
原著論文4
Asakura H, Morita-Ishihara T, Yamamoto S et al.
Genetic characterization of thermal tolerance in Enterobacter sakazakii.
Microbiol Immunol , 51 (7) , 671-677  (2007)
原著論文5
五十君靜信、朝倉宏
乳児用調製粉乳中のEnterobacter sakazakiiによる感染
食品衛生学雑誌 , 48 (3) , 229-233  (2007)
原著論文6
Nagaoka MH, Hanaoka K, Usui M et al.
Nitric Acid-based Partial-digestion Method for Selective Determination of Inorganic Arsenic in Hijiki and Application to Soaked Hijiki.
J. Food Hyg. Soc. Japan , 49 (2) , 88-94  (2008)
原著論文7
Nagaoka MH, Nishimura T, Matsuda R et al.
Evaluation of a Nitric Acid-based Partial-digestion Method for Selective Determination of Inorganic Arsenic in Rice.
J. Food Hyg. Soc. Japan , 49 (2) , 95-99  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-