ターミナルケアに対する意識に関する研究

文献情報

文献番号
199700294A
報告書区分
総括
研究課題名
ターミナルケアに対する意識に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 修二(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
末期医療には、尊厳死、安楽死、植物状態、QOL、インフォームドコンセント、リビングウイルなど様々な課題が含まれている。これらの課題の多くについては、広く議論を行い、社会的合意を形成するというような形で解決されるものと思われる。本研究の目的は、末期医療に対する意識等について、一般集団と医療従事者の実態およびそれらの相違を明らかにすることにある。同時に、「末期医療に関する意識調査等検討会」の議論の基礎資料を提供するものである。
研究方法
調査対象者として、一般集団は20歳以上の男女 5,000人を全国から無作為抽出し、医師は病院2,000人、診療所1,034人、緩和ケア施設70人の合計3,104人、看護職員は病院4,000人、診療所1,034人、緩和ケア施設525人、訪問看護ステーション500人の合計6,059人として、無作為抽出した施設から任意に選定した。調査方法としては、郵送により調査票を配布・回収し、督促も行った。未回収者の一部を再調査した。調査内容は末期医療に対する意識等とし、?末期医療の関心、?痛みを伴う末期状態における延命医療、?痛みを伴う末期状態における療養生活の場所、?持続的植物状態における延命医療、?リビングウィル、?医師と患者の話し合いおよび病状などの告知、?末期医療にかかわった経験、?疼痛管理の知識、?末期医療の悩みと疑問、?末期医療の課題を取り上げた。一般集団は?~?、医療従事者は?~?とした。なお、個々の内容は複数の質問項目からなる。調査の回収率は、一般集団、医療従事者ともに50%前後であった。
結果と考察
上記の?~?について、主な項目の結果の概要を以下に示す。?末期医療の関心について、「非常に関心がある」または「まあ関心がある」は一般集団が80%であり、それに比べて、医師と看護職員が90%以上と高かった。?痛みを伴う末期状態における単なる延命医療について、「やめた方がよい」は一般集団、医師と看護職員とも最も多く、「やめるべき」は13~16%、「続けるべき」は9~16%であった。?痛みを伴う末期状態における療養生活の場所について、「自宅で療養して、必要になれば病院または緩和ケア病棟」が一般集団、医師、看護職員ともに最も多く、「自宅で最後まで」は一般集団が9%であり、医師4%、看護職員5%よりも多かった。?持続的植物状態における単なる延命医療について、「やめた方がよい」は一般集団、医師、看護職員とも最も多く、「やめるべき」は11~28%、「続けるべき」は9~13%であった。?リビングウイルについて、「賛成できない」は一般集団、医師、看護職員とも少数であった。「書面までは不要」は一般集団が35%であり、医師18%、看護職員19%よりも多かった。?延命医療に関する医師と患者の話し合いについて、「不十分」または「行われていない」は一般集団54%であり、それに比べて、医師が76%、看護職員が67%と多かった。?痛みを伴う末期状態の患者の医療経験について、「ある」は医師が84%、看護職員が85%であった。なお、緩和ケア病棟を除いても同様であった。?WHO方式癌疼痛治療法について、「内容をよく知っている」または「ある程度知っている」は医師が46%、看護職員が22%であった。?末期医療の悩みと疑問について、「頻繁に感じる」または「たまに感じる」は医師、看護職員ともに90%程度であった。その内容としては、「患者への病名・病状の説明」、「在宅医療体制が不十分」、「痛みなどの症状緩和」などが高率であった。?末期医療の課題について、医師では、「卒前・卒後教育や生涯研修の推進」が最も多く、「末期医療に従事する医療従事者の確保」、「患者への相談体制の充実」、「在宅ケアの推進」、「緩和ケア病棟の増設」などが高率であった。看護職員では、「患者への相談体制の充実」と「在宅ケアの
推進」が最も多く、医師よりも高率であった。本調査は回答の精度をある程度に保つために大規模とし、郵送法を用いることとした。そのために、回収率が50%前後に止まったが、督促、未回収者への再調査など、最大限の可能な対応を行った。一般集団では個人を無作為抽出し、医療従事者ではその属する施設を無作為抽出した。調査内容は前述の?~?を取り上げたが、これは、「末期医療に関する意識調査等検討会」の議論に基づくものである。したがって、本調査は、現実の制約の中で正確な情報を得るために、ほぼ最良の方法で実施したとみなすこともできよう。末期医療に対する意識等については、一般集団、医療従事者ごとの研究はあっても、その比較を行った研究は見あたらない。今回、いくつかの項目で一般集団と医療従事者に差が見られたが、今後の議論上、参考になるものと思われる。また、医療従事者における末期医療の経験と知識の実態などは、今後の対策を考える上で貴重な資料となるものと思われる。「末期医療に関する意識調査等検討会」などを含めて、本調査結果を基礎の1つとして、わが国の末期医療の在り方について広く議論が行われることを期待したい。
結論
末期医療に対する意識等について、大規模調査を行うことによって、一般集団と医療従事者の実態およびそれらの相違を提示した。

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