血液新法に伴う輸血管理体制と安全管理・適正使用マネジメントシステムの構築

文献情報

文献番号
200637017A
報告書区分
総括
研究課題名
血液新法に伴う輸血管理体制と安全管理・適正使用マネジメントシステムの構築
課題番号
H16-医薬-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字血液センター)
  • 今中 雄一(京都大学大学院医学研究科 医療経済学)
  • 大塚 節子(岐阜大学医学部附属病院 輸血部)
  • 紀野 修一(旭川医科大学附属病院 輸血部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医療管理学)
  • 窪田 良次(香川大学医学部附属病院 輸血部)
  • 佐川 公矯(久留米大学医学部附属病院 臨床検査部)
  • 坂本 久浩(茜会昭和病院)
  • 高松 純樹(名古屋大学医学部附属病院 輸血部)
  • 半田 誠(慶應義塾大学医学部附属病院 輸血センター)
  • 比留間 潔(東京都立 駒込病院 輸血・細胞治療科)
  • 程原 佳子(滋賀大学医学部附属病院 輸血部)
  • 松崎 道男(虎の門病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成15年施行の「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」と平成17年改訂の
「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」、平成18年に新規保険収載の
「輸血管理料」の求める「安全かつ適正な輸血医療」を具体化するため、本研究班では輸血
管理体制や輸血療法委員会活動等を調査し、実践的な「輸血療法委員会運用マニュアル」案
の有用性について検討した。
研究方法
初年度、前年度と同様の方法、対象の輸血医療の総括的なアンケート調査を実施した。
300床以上で血液製剤使用量が3000単位以上の全医療機関777を含む1355の病院に調査
趣意書を郵送し、Web上または郵送等による回答を依頼した。輸血管理体制及び輸血療法
委員会の活動状況、2006年度の自己血輸血を含む血液製剤の使用量、輸血の使用患者数、
血液製剤の廃棄量などを調査した。また、輸血管理料の取得状況、取得できない医療機関
で達成し得ない基準などについて調査した。
結果と考察
64.4%の872施設より回答を得た。輸血検査・輸血用血液の一元管理体制は、86.5%で
確立していた。アルブミン等の血漿分画製剤管理は89.3%が薬剤部であったが、輸血部門
がアルブミンの使用状況を把握しているのは、前年度の33.7%から68.4%が急増していた。
輸血療法委員会は93.6%の施設に設置されていたが、その中心となるべき専任の輸血責任
医師が存在する医療機関は14.0%とまだ少ないことが判明した。
 「輸血療法委員会運用マニュアル」案については、使用するが27.9%、一部修正後に利用
するが49.1%と概ね肯定的な評価であった。
「輸血管理料」ⅠまたはⅡを、各々、108施設(13.0%)、189施設(22.7%)が取得していた。
また、輸血療法の実績は、輸血管理料取得の基準の一つである赤血球及び自己血輸血の
使用量に対する新鮮凍結血漿またはアルブミンの使用量の比率は、輸血管理料の基準値に
全体的に近づいていた。
結論
上記結果より、輸血管理料の取得を目指して適正な輸血医療の意義が徐々に浸透しつつ
あり、その具体化の手引きとして上記のマニュアル案が重要であると考えられた。
各医療機関における輸血療法委員会、各地域の合同輸血療法委員会を活性化して、輸血
医療の現状と課題を解析し、適正な輸血医療を推進すべきであると考えられた。
日本輸血・細胞治療学会の主導により、本形式によるアンケート調査を今後も継続し、
輸血医療の発展のために活用していく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200637017B
報告書区分
総合
研究課題名
血液新法に伴う輸血管理体制と安全管理・適正使用マネジメントシステムの構築
課題番号
H16-医薬-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字血液センター)
  • 今中 雄一(京都大学大学院医学研究科 医療経済学)
  • 大塚 節子(岐阜大学医学部附属病院 輸血部)
  • 紀野 修一(旭川医科大学附属病院 輸血部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医療管理学)
  • 窪田 良次(香川大学医学部附属病院 輸血部)
  • 佐川 公矯(久留米大学医学部附属病院 臨床検査部)
  • 坂本 久浩(茜会昭和病院)
  • 高松 純樹(名古屋大学医学部附属病院 輸血部)
  • 半田 誠(慶應義塾大学医学部附属病院 輸血センター)
  • 比留間 潔(東京都立 駒込病院 輸血・細胞治療科)
  • 程原 佳子(滋賀大学医学部附属病院 輸血部)
  • 松崎 道男(虎の門病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」、「輸血療法の実施に関する指針」
及び「血液製剤の使用指針」、「輸血管理料」の求める「安全かつ適正な輸血医療」の実践に
資する輸血の管理・使用マネジメントシステムを構築するため、本研究班は、3年間に
わたり、輸血医療の総括的アンケート調査を実施した。
研究方法
輸血管理体制および輸血療法委員会の活動状況、さらに、自己血輸血を含む血液製剤の
使用量及び廃棄量、輸血使用患者数などの輸血療法の実績に関して調査した。また、「輸血療法委員会運用マニュアル」案を同封し、有用性や実用性に関する意見を求めた。そして、
平成17年度に輸血管理料の取得希望予定について、平成18年度に輸血管理料の取得状況、
取得できない理由などについて調査した。
 対象は3年間共通の医療機関、すなわち、300床以上で血液製剤使用量が3000単位以上
の全医療機関777を含む1355の病院とし、調査趣意書を郵送し、Web上または郵送など
による回答を依頼した。
結果と考察
初年度、前年度、最終年度に各々、61.2%、63.2%、64.4%の施設より回答を得た。以下
最終年度の結果を主に示す。
86.5%の施設で輸血の一元管理体制が確立していた。アルブミンなどの血漿分画製剤は
89.3%が薬剤部の管理だったが、輸血部門がアルブミンの使用状況を把握している施設が
68.4%と前年度の33.9%に比べ、急増していた。
 輸血療法委員会が93.6%の施設に設置されていたが、同委員会の中心となるべき専任の
輸血責任医師が存在する施設は14%となお少なかった。
 「輸血療法委員会運用マニュアル」案を、使用する27.9%、一部修正後に利用する49.1%
と概ね肯定的な評価であった。
輸血管理料Ⅰを108施設(13.0%)、輸血管理料Ⅱを189施設(22.7%)と全体の1/3以上の
医療機関が既に取得していた。また、前年度と比べ、新鮮凍結血漿、アルブミンの使用量
が有意に減少していた。
以上より、適正輸血の必要性が浸透しつつあり、上記のマニュアルが具体化するため
の手引きとして重要であると考えられた。
結論
「安全で適正な輸血医療」を実践するため、「輸血療法委員会運用マニュアル」が重要で
あり、各医療機関の輸血療法委員会及び各地域の合同輸血療法委員会による、輸血療法の
現状の解析、適正な輸血医療の推進が今後の最重要課題と考えられた。
また、日本輸血・細胞治療学会の主導により今後も同種調査を継続し、輸血医療の発展
のために活用していく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「安全かつ適正な輸血医療」の実施状況把握のために輸血管理体制及び輸血療法委員会の活動状況、自己血輸血を含む輸血療法の実績、「輸血療法委員会運用マニュアル」案の有用性等を3年にわたりアンケートし、各年、対象1355病院の60%以上より回答を得た。輸血部門によるアルブミン使用状況把握は68%と急増し、アルブミン及び新鮮凍結血漿の使用量が減少し、輸血管理料ⅠまたはⅡを計297施設が取得していることから、適正輸血の意義が浸透しつつあると考えられた。また、各地域の合同輸血療法委員会の有用性も確認された。
臨床的観点からの成果
最終アンケート結果では、輸血の一元管理体制の確立が87%、輸血療法委員会の設置が94%であり、アルブミン管理は89%が薬剤部だが、輸血部門によるアルブミンの使用状況の把握は68%と急増していた。輸血管理料Ⅰを108施設(13%)、輸血管理料Ⅱを189施設(23%)が取得していた。但し、専任の輸血責任医師が存在する施設は14%と少なかった。「輸血療法委員会運用マニュアル」案は77%が概ね肯定的に評価した。以上より、適正輸血の意義が浸透し広く実践されつつあること、上記マニュアルの有用性が確認された。
ガイドライン等の開発
先ず、研究班の班員相互のディスカッション及びパブリックコメントに基づき、「血液製剤適正使用マネジメントガイドライン」案を作成し、同案の有用性についてアンケート調査した。多数の施設が賛同されたが、「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」と重なる内容のガイドラインは混同され易いとの意見もあり、輸血療法委員会活動について参考となる「輸血療法委員会運用マニュアル」案を作成した。同案はアンケートでも肯定的に評価されたことから、日本輸血・細胞治療学会のホームページ等で公開を検討したい。
その他行政的観点からの成果
「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」の施行、「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改訂、「輸血管理料」の新設等による「安全で適正な輸血医療」の誘導効果等、行政施策の有用性を検証し、新たな課題を検討するため、本研究班の輸血医療の総括的なアンケート調査研究は有用であった。
その他のインパクト
「安全で適正な輸血医療」を実践するため、各医療機関の輸血療法委員会及び各地域の合同輸血療法委員会による、輸血療法の現状の解析、適正な輸血医療の推進が重要であり、その活性化のための政策が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
髙橋孝喜、稲葉頌一、半田 誠、他
平成16年度輸血関連総括アンケート調査報告―輸血部門の管理体制および輸血療法委員会に関する調査―
日本輸血学会雑誌 , 52 (3) , 414-421  (2006)
原著論文2
髙橋孝喜、稲葉頌一、半田 誠、他
平成17年度輸血関連総括アンケート調査報告―輸血部門の管理体制および輸血療法委員会に関する調査―
日本輸血・細胞治療学会雑誌 , 53 (3)  (2007)
原著論文3
Okamura Y, Fujie T, Maruyama H, Handa M,et al
Prolonged Hemostatic Ability of Poly(ethylene glycol)-Modified Polymerized Albumin Particles Carrying Fibrinogen-gamma Chain Dodecapeptide
Transfusion  (2007)
原著論文4
Okamura Y, Handa M, Suzuki H,et al
New strategy of platelet substitutes for enhancing platelet aggregation at high shear rates: cooperative effects of a mixed system of fibrinogen gamma-chain dodecapeptide- or glycoprotein Ibalpha-conjugated latex beads under flow conditions
J Artif Organs , 9 (4) , 251-258  (2006)
原著論文5
Okamura Y, Takeoka S, Teramura Y,et al
Hemostatic effects of fibrinogen gamma-chain dodecapeptide-conjugated polymerized albumin particles in vitro and in vivo
Transfusion , 45 , 1221-1228  (2005)
原著論文6
半田誠
輸血管理料と血液製剤の適正使用、注目の領域
医学のあゆみ , 219 (10) , 801-806  (2006)
原著論文7
半田誠
輸血医療の進歩と課題、適正な成分輸血:血小板製剤
日本内科学会雑誌 , 93 (7) , 1308-1314  (2004)
原著論文8
石田明、上村知恵、橋詰賢一、他
血小板輸血後に敗血症性ショックを呈し、Morganella Morganii菌による輸血後感染症が強く示唆された一例
日本輸血学会雑誌 , 50 (5) , 726-729  (2004)
原著論文9
栗原和子、堺夕美子、平川道子、他
自己血採血患者への支援システム--クリニカルパスとオリエンテーションビデオを使用して--
自己血輸血 , 17 (1) , 48-54  (2004)
原著論文10
佐川公矯
自己血輸血ガイドライン改訂3版(案)の改訂点
自己血輸血 , 18 (2) , 158-163  (2005)
原著論文11
佐川公矯
将来のガイドラインへの考察
高折益彦編著新自己血輸血(改訂第3版)、克誠堂出版、東京 , 250-268  (2006)
原著論文12
佐川公矯
輸血の危機管理 大量出血
外須美夫編、真興交易㈱医書出版部、東京 , 210-223  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-