SLEなど難治性自己免疫疾患に対する自家、同種造血幹細胞移植の安全性及び有効性の検討に関する研究

文献情報

文献番号
200500843A
報告書区分
総括
研究課題名
SLEなど難治性自己免疫疾患に対する自家、同種造血幹細胞移植の安全性及び有効性の検討に関する研究
課題番号
H15-難治-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学系研究院 病態修復内科学)
  • 高上 洋一(国立がんセンター中央病院 薬物療法部)
  • 三森 明夫(国立国際医療センター 膠原病科)
  • 當間 重人(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターリウマチ性疾患研究部)
  • 神田 善伸(東京大学医学部附属病院 無菌治療部)
  • 澤田 俊夫(群馬県立がんセンター)
  • 高添 正和(社会保険中央総合病院 内科)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 健康科学看護学専攻生物統計/免疫・予防保健学)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学系研究科 免疫病態内科学講座)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部 内科学講座 )
  • 河野 修興(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 病態制御医科学講座)
  • 平家 勇司(国立がんセンター研究所 薬効試験部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
52,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
クローン病(以下CD)は慢性の炎症性腸疾患である。一般的に生命予後は良好と考えられているが、一部の重症・治療難反応例では著しくQOLが低下し、時に致命的となる。以前から自己造血幹細胞移植のCDに対する有効性は知られていたが、最近Burtらが12人の難治性CD患者に自己造血幹細胞移植を行い11人が寛解導入に成功し、その効果も1年以上持続していると報告した。これらの知見を基にCDに対する自己造血幹細胞移植の安全性と有効性を検討する臨床試験を計画した。
研究方法
本研究の対象は、臨床的・組織学的に証明された60歳未満のCD患者で、各種治療にもかかわらずCDAIスコアが250以上400以下の治療抵抗性症例とする。シクロフォスファミド(CY)で自己造血幹細胞を採取し、CY、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン(リンフォグロブリン、ATG)を用いた前処置による自己造血幹細胞移植の安全性を評価する。主要評価項目は移植後28日までの生着及び前処置毒性とする。副次的評価項目は移植後6ヶ月・12ヶ月・24ヶ月時点の全生存率、末梢血幹細胞動員療法前、移植前後6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月でのCDAIスコアの経時的変化、移植後6ヶ月以内の感染症発症率、末梢血幹細胞動員成功率(CD34陽性細胞数≧2x106/kg)、及びプロトコール治療完遂率とした。
結果と考察
平成17年度に本研究計画書が虎の門病院倫理委員会にて承認され、現在1例が登録され、試験進行中である。CDの標準的な治療は抗炎症剤、抗生物質、免疫抑制剤などである。また、腫瘍壊死因子α(TNFα)の阻害剤であるインフリキシマブも有効であることが示されている。しかしながらいずれも根治的な治療法ではなく、またこれらの治療に全く反応しないか、反応した後に再燃する一部の重症例では、致死率は10%を超えるともいわれている。またこのような症例では著しくQOLの低下した生活を強いられており、新しい治療法が模索されている。自己造血幹細胞移植は、免疫修飾/抑制療法の延長であり、理論的にはCDを引き起こす原因となっている免疫担当細胞を排除し、新しく輸注された造血幹細胞が正常な免疫システムを再構築すると考えられる。
結論
既存の治療法に難治性となったCDに対する自己造血幹細胞移植の安全性と有効性を検討する臨床試験を開始した。

公開日・更新日

公開日
2006-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200500843B
報告書区分
総合
研究課題名
SLEなど難治性自己免疫疾患に対する自家、同種造血幹細胞移植の安全性及び有効性の検討に関する研究
課題番号
H15-難治-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学系研究院 病態修復内科学)
  • 高上 洋一(国立がんセンター中央病院 薬物療法部)
  • 三森 明夫(国立国際医療センター 膠原病科)
  • 當間 重人(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターリウマチ性疾患研究部)
  • 神田 善伸(東京大学医学部附属病院 無菌治療部)
  • 澤田 俊夫(群馬県立がんセンター)
  • 高添 正和(社会保険中央総合病院 内科)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 健康科学看護学専攻生物統計/疫学・予防保健学)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学系研究科 免疫病態内科学講座)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部 内科学講座)
  • 河野 修興(広島大学大学院歯薬学総合研究科 病態制御医科学講座)
  • 平家 勇司(国立がんセンター研究所 薬効試験部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SLEなどの難治性自己免疫疾患に対して、一般に、Steroid、cyclophophamide(CY)、methotrexate等に加えて、近年、モノクローナル抗体などを用いた治療法が試みられ、その有効性は数段高まっている。しかし、依然として一部の症例では生命および社会的予後は不良である。このような難治例に対して、大量CY投与後自己移植を行うCD34純化自己末梢幹細胞移植術の有効性が主に欧米から多数例で報告されている。本邦においてはわずかに数例の経験に止まっており、当研究班においてこの自家移植の有効性と安全性の評価を行う。同種移植が治癒を目指すには確実と考えられるが、その高い移植関連死亡率は許容できない。その高い毒性は主にレシピエントおよびドナーのTリンパ球に起因する。安全性を高める目的にてこれらのリンパ球を抑制するAlemtuzumabを移植前処置に用いた移植療法を開発する。ただしAlemtuzumabは未承認薬であり、医師主導臨床治験を実施中である。
研究方法
全身性強皮症(SSc)14例、ウエゲナー肉芽腫1例、皮膚筋炎1例に対して、自家移植を行った。末梢血幹細胞採取は(CY) 2g/m2 x 2日間+G-CSFで行い、CD34陽性細胞分離はCliniMACSによる自動分離システムで行い、移植前処置は、CY 50mg/kg x 4日間とした。Alemtuzumabの臨床治験では、対象をやや重症、重症または最重症再生不良性貧血の症例とし、ドナーはHLA一致もしくは一座不一致血縁者およびHLA一致非血縁者とした。移植前治療はAlemtuzumab、Fludarabine、CYとした。
結果と考察
自己造血幹細胞移植については皮膚病変をもったSSc症例14例全例でmRodnan TSSにおいて25%以上の改善が見られた。間質性肺炎については、9例中6例で動脈血酸素分圧の上昇を認めた。 Alemtuzumabの医師主導型臨床治験については、2004年 12月4日症例登録を開始し、既に第一段階の3例の症例登録が行われ、現在第2段階の症例登録が行われている。
結論
自己免疫疾患に対する自家移植の有効性と安全性を検証した。より安全な同種移植法を導入するために、Alemtuzumabの医師主導型臨床治験が開始され、既に3例が登録された。

公開日・更新日

公開日
2006-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500843C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性自己免疫疾患に対する自己造血幹細胞移植の安全性と有効性を評価した。特に全身硬化症の肺病変や皮膚病変に対する有効性が明らかとなり、生命予後を大きく改善することが示された。しかし、自己造血幹細胞移植の毒性は無視できず、現在の所、国内では死亡例は出ていないものの、海外では5-10%の移植関連死亡が問題となっている。加えて、病的Tリンパ球除去の目的に行われるCD34純化の費用また自家移植自体が保険診療では施行困難な点がこの治療の一般化を困難としている。
臨床的観点からの成果
造血器疾患において自己免疫的機序がその発症機序である再生不良性貧血に対する同種造血幹細胞移植の安全性を向上させる目的にて、レシピエント、ドナー双方の免疫を抑制するヒト化モノクローナル抗体であるalemtuzumabの承認申請を目的とした医師主導型臨床治験を行った。プロトコールの立案から医薬品統合機構での事前相談を終えて、2004年12月から症例登録を開始した。順調に症例登録が進んでいるが、現在では、本研究班の平成18年度の継続ができなかったため、一時的に症例登録を中断している。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
同種移植領域での新規薬剤の開発は、症例数が限られ、多数の併用薬を必要とし、原疾患および治療内容から有害事象が多発する理由から、企業治験の実施は困難な領域であった。その結果、欧米では普通に使用されているものの本邦では使用できない薬剤が多数存在しており、alemtuzumabもその一つである。我々が行っている医師主導臨床治験は、特に国内未承認薬の導入という点では前例のないものであり、特に企業治験が困難な移植領域にて行っている点も含めて国民医療福祉への貢献は絶大である。
その他のインパクト
国内未承認薬の承認申請を目的とした初めての医師主導型臨床治験である。新薬の開発治験における公的資金である厚生科研費の使用の是非、また治験薬提供者の治験への協力体制(どこまでの協力が得られるのか)、得られた結果の帰属、世界中から集まる有害事象報告への対応など、様々な問題があったが、一つ一つ解決し、治験開始にこぎつけた。特に未承認薬が多く存在する移植領域での新規薬剤の医師主導の開発治験であり、今後行われる後発の医師主導または企業治験の指標となる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
119件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
61件
学会発表(国際学会等)
55件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-