難治性疾患の医療費構造に関する分析的研究

文献情報

文献番号
200500837A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患の医療費構造に関する分析的研究
課題番号
H17-難治-040
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座)
  • 櫻井 恒太郎(北海道大学大学院医学研究科医療情報学分野)
  • 近藤 克幸(秋田大学医学部附属病院医療情報部)
  • 五十嵐 徹也(筑波大学病院医療情報部)
  • 高林 克日己(千葉大学医学部附属病院企画情報部)
  • 赤澤 宏平(新潟大学医歯学総合病院医療情報部)
  • 木村 通男(浜松医科大学医療情報部)
  • 原  量宏(香川大学医学部附属病院医療情報部)
  • 近藤 博史(鳥取大学病院医療情報部)
  • 中島 直樹(九州大学病院医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大学病院の一定期間の医事会計請求用データベースから、121の難治性疾患で診療中の患者の医療費請求額を保険診療請求上の診療区分ごとに月別に抽出、解析することによって、難治性疾患ごとの医療費の実態とその診療費構造を把握し、難治性疾患の医療行政施策に資することを目的とした。
研究方法
10国立大学病院の2005年4月?10月の6か月分の医事会計データから、保険病名のテキスト検索より該当疾患名を持つ患者を抽出し、外来延べ162,349人日、入院延べ172,226人日を得て分析を行った。
結果と考察
1ヶ月あたりの請求額上位5疾患は多い順に入院では劇症肝炎、重症膵炎、原発性肺高血圧症、特発性拡張性心筋症、混合性結合組織病であった。また外来ではライソゾーム病、原発性免疫不全症候群、原発性肺高血圧症、再生不良性貧血、モヤモヤ病の順であった。手法の課題として、1)複数の難治性疾患を有する場合に医療費をどちらに区分するかの情報が存在しない、2)院外処方薬剤費は別途抽出する必要がある、3)難治性疾患と併存する無関係な疾患を同時治療する場合、医療費がどの疾患にかかるものかどうかの判定情報が存在しないことなどが明らかとなった。さらに今年度の参加病院はすべて独立大学法人関連施設であることから得られたデータの代表性も限定的なものにとどまった。
結論
難治性疾患ごとの医療費の実態とその診療費構造を一定の条件下で外来・入院ともに医事会計情報から行為点数・行為明細などを含むレセプト生成中間ファイルを得ることは技術的に可能であることが確認された。しかし、手法にはいくつかの解決すべき課題があり特に、同一外来診療あるいは入院診療において難治性疾患と併存する難治性疾患とは無関係な別疾患を同時に治療している場合に、医療費が難治性疾患にかかるものかどうかの判定情報が存在しないことが問題である。これを既存の情報システム上の併存する病名情報とそれに行われると推定される医療行為との対応表を作成することにより概算推計は可能であるが、結果の信頼性を検証する手段がない。そもそも各難治性疾患に対して行われる医療とそうでない疾患に対して行われる医療との区分情報は、オーダシステムの入力段階で入力されない限り十分な信頼性をもったデータとして活用することができないため特定の疾患に関わる医療費の推定および分析には本手法の限界があることが認識された。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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