ヒト睡眠・覚醒リズム障害の分子生物学的成因解明とテーラーメイド治療法開発に関する基盤的研究

文献情報

文献番号
200500759A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト睡眠・覚醒リズム障害の分子生物学的成因解明とテーラーメイド治療法開発に関する基盤的研究
課題番号
H15-こころ-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
内山 真(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村均(神戸大学大学院医学系研究科分子脳科学)
  • 尾崎紀夫(名古屋大学大学院医学研究科精神医学)
  • 海老沢尚(東京大学大学院医学系研究科睡眠障害学)
  • 三島和夫(秋田大学医学部精神科学教室)
  • 角谷寛(京都大学大学院先端領域融合医学)
  • 尾関祐二(滋賀医科大学精神医学講座)
  • 田ヶ谷浩邦(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
  • 亀井雄一(国立精神・神経センター国府台病院精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
睡眠・覚醒リズム障害は頻度が高く、心身の保健に対し重大な脅威となっているばかりでなく、学業や就労上の問題や産業・交通事故の原因となり国民生活に大きな影響を与えている。したがって、睡眠・覚醒リズム障害の治療法・予防法の開発は急務である。本研究の目的は、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、睡眠相前進症候群、交代勤務症候群などのヒトにおける睡眠・覚醒リズム障害の分子生物学的成因および生理学的基盤を解明し、遺伝素因の多様性に応じたテーラーメイド治療法を開発することである。本年度は3年計画の最終年度にあたるため、
研究方法
健常人および多様な睡眠・覚醒リズム障害患者における朝型・夜型特性を標準化されたフォーマットを用いて調べるとともに、時計遺伝子を分子生物学的に解析し、時間特性および睡眠・覚醒リズム障害に関与する遺伝子マーカーを明らかにした。個人の時間特性や睡眠・覚醒リズム障害の病態特性にあったテーラーメイド治療法開発のため、朝型・夜型の時間特性の生理学的基盤を明らかにし、各種の睡眠・覚醒リズム障害について、時間生物学的治療法の有効性を明らかにした。
結果と考察
睡眠・覚醒リズム障害患者の時計遺伝子解析より、CK1eの自己リン酸化の低下を通じて睡眠・覚醒リズム障害の発症を抑える新たな多型S408Nを見出した。一般健常人においてhClock遺伝子の3111C homozygotesで夜型指向性が強く、睡眠時間の短縮と日中の眠気の増大が認められることを明らかにした。睡眠・覚醒リズム障害において体内時計機能の柔軟性欠如が発症要因であることを明らかにした。さらに、生理学的検討から、体内時計は、分子レベルで発現する約24時間のリズムにより、メラトニン、コルチゾル等のホルモン分泌リズムや深部体温リズムを駆動し、これらを介して睡眠・覚醒リズムに影響を与えていることが示された。
結論
時計遺伝子の規定する時間特性がヒト睡眠・覚醒リズム障害において大きな役割を果たしていることが、分子生物学的研究、および生理学的研究、臨床多数例検討を通じて明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-06-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200500759B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト睡眠・覚醒リズム障害の分子生物学的成因解明とテーラーメイド治療法開発に関する基盤的研究
課題番号
H15-こころ-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
内山 真(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 均(神戸大学大学院医学系研究科分子脳科学)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学研究科精神医学)
  • 海老沢 尚(東京大学大学院医学系研究科睡眠障害学)
  • 三島 和夫(秋田大学医学部精神科学教室)
  • 角谷 寛(京都大学大学院先端領域融合医学)
  • 尾関 祐二(滋賀医科大学精神医学講座)
  • 田ヶ谷 浩邦(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 亀井 雄一(国立精神・神経センター国府台病院精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において、睡眠・覚醒リズム障害は頻度が高く、心身の保健に対し重大な脅威となっているばかりでなく、学業や就労上の問題や産業・交通事故の原因となり国民生活に大きな影響を与えている。したがって、睡眠・覚醒リズム障害の治療法・予防法の開発は急務である。本研究の目的は、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、睡眠相前進症候群、交代勤務症候群などのヒトにおける睡眠・覚醒リズム障害の分子生物学的成因および生理学的基盤を解明し、遺伝素因の多様性に応じたテーラーメイド治療法を開発することである。
研究方法
健常人および多様な睡眠・覚醒リズム障害患者における朝型・夜型特性を標準化されたフォーマットを用いて調べるとともに、時計遺伝子を分子生物学的に解析し、時間特性および睡眠・覚醒リズム障害に関与する遺伝子マーカーを明らかにした。個人の時間特性や睡眠・覚醒リズム障害の病態特性にあったテーラーメイド治療法開発のため、朝型・夜型の時間特性の生理学的基盤を明らかにし、各種の睡眠・覚醒リズム障害について、時間生物学的治療法の有効性を明らかにした。
結果と考察
睡眠・覚醒リズム障害患者の時計遺伝子解析より、CK1eの自己リン酸化の低下を通じて睡眠・覚醒リズム障害の発症を抑える新たな多型S408Nを見出した。一般健常人においてhClock遺伝子の3111C homozygotesで夜型指向性が強く、睡眠時間の短縮と日中の眠気の増大が認められることを明らかにした。これは、健常人においても、時計遺伝子が睡眠・覚醒リズムの特性を規定していることを示すものである。睡眠相前進症候群を常染色体優性遺伝型式で発症する本邦での2家系を見出し、原因候補遺伝子に関する解析を行った。睡眠・覚醒リズム障害において体内時計機能の柔軟性欠如が発症の要因であることを明らかにした。末梢レベルでの時計遺伝子の発現と臓器機能について明らかにした。さらに、生理学的検討から、体内時計は、メラトニン、コルチゾル等のホルモン分泌リズムや深部体温リズムを介して睡眠・覚醒リズムに影響を与えていることが示された。
結論
ヒト睡眠・覚醒リズム障害の生物学的成因として、時計遺伝子の規定する時間特性が大きな役割を果たしていることが、分子生物学的研究、および生理学的研究、臨床多数例検討を通じて明らかになった。今後、こうした内因性の特性に応じた時間生物学的介入法の開発をさらに進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500759C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究課題において睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群では、時計遺伝子に存在する発症を促進するミスセンス多型、および抑制するミスセンス多型がそれぞれ独立して関与していることが明らかにされた。時間生物学治療を開発する上で、生来の朝型・夜型などのように個体の時間特性の多様性を踏まえるべきことが明らかになった。ヒト睡眠・覚醒リズムの分子生物学的解明に関して、時計遺伝子の分子基盤の解明、睡眠相後退症候群および非24時間睡眠覚醒症候群の分子生物学的基盤について目標を達成できた。
臨床的観点からの成果
臨床的な観点からは、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群について、申請時の目標を達成できた点が特記される。特に、これまで世界的に多数例臨床検討が行われていなかった視覚障害のない非24時間睡眠覚醒症候群について、連続例検討を通じて病態を明らかにした点は特記されるべきである。
ガイドライン等の開発
本研究においては、診断治療ガイドラインなどの作成は当初より研究目的に含まれていなかったが、臨床的に得られた睡眠・覚醒リズム障害に関する知見は、今後作られることが予想される睡眠・覚醒リズム障害の本格的診断・治療ガイドラインには、本研究の知見が生かされることになろう。
その他行政的観点からの成果
本研究は、以下のような未来の行政的な施策につながる。時計遺伝子解析により個人の体内時計の特徴を知り、その特徴にあった生活パターン、就労スケジュールを組み立て、健康の増進と産業事故の防止をもたらすことが可能になる。睡眠・覚醒リズム障害が個人の社会活動に及ぼす影響をとらえることができる。睡眠に関する体質を遺伝子レベルでとらえ、個人の睡眠に関する健康管理にこれを生かすことができる。
その他のインパクト
これらは、一流国際誌に発表され、国際的教科書にも取り上げられ世界的に注目を受けた。さらに、本研究課題で得られた研究成果については、いくつかの国際学会において、教育講演やシンポジウムに主任・分担研究者が海外から招聘された。さらに、全国紙を始めとするマスメディアに何度も大きく取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
60件
その他論文(和文)
32件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
95件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hayakawa T, Uchiyama M, Kamei Y,et al
Clinical analyses of sighted patients with non-24-hour sleep-wake syndrome: a study of 57 consecutively diagnosed cases.
SLEEP , 8 , 945-952  (2005)
原著論文2
Mishima K, Tozawa T, Satoh K, et al.
The 3111T/C polymorphism of hClock is associated with evening preference and delayed sleep timing in a Japanese population sample.
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet , 133 , 101-104  (2005)
原著論文3
Suzuki H, Uchiyama M, Tagaya H, et al
Dreaming During Non-rapid Eye Movement Sleep in the Absence of Prior Rapid Eye Movement Sleep.
SLEEP , 27 , 1486-1490  (2004)
原著論文4
Takano A, Uchiyama M, Kajimura N, et al
A Missense Variation in Human Casein Kinase I Epsilon Gene that Induces Functional Alteration and Shows an Inverse Association with Circadian Rhythm Sleep Disorders.
Neuropsychopharmacology. , 29 , 1901-1909  (2004)
原著論文5
Echizenya M, Mishima K, Satoh K, et al.
Enhanced heat loss and age-related hypersensitivity to diazepam.
J Clin Psychopharmacol , 24 , 639-646  (2004)
原著論文6
Shibui K, Uchiyama M, Kim K, et al
Melatonin, cortisol and thyroid-stimulating hormone rhythms are delayed in patients with delayed sleep phase syndrome.
Sleep and Biological Rhythms , 1 , 209-214  (2003)
原著論文7
Tan X, Uchiyama M, Shibui K, et al
Circadian rhythms in humans’ delta sleep electroencephalogram.
Neurosci Lett , 344 , 205-208  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-