概要版

文献情報

文献番号 201412013B
報告書区分 総合
研究課題 温泉利用が健康づくりにもたらす総合的効果についてのエビデンスに関する研究
課題番号 H24-循環器等(生習)-一般-001
研究年度 平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関) 前田 豊樹(九州大学病院別府病院 大学病院) 
研究分担者(所属機関)   
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
開始年度 平成24(2012)年度
終了予定年度 平成26(2014)年度
研究費  
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
九州大学病院別府病院は温泉地別府において温泉の医用効果を研究してきた歴史を有する。現在、高齢者に向けた非侵襲性治療の整備が急務であり、温泉治療はその現状にあった統合医療の一つである。本研究は、九州大学病院別府病院が、別府市、別府市医師会との共同で進める疫学調査を中心に、臨床研究、動物実験、細胞実験を合わせて駆使し、温泉の医用効果を検証し、わが国の医療における温泉医療応用を推進することを目的としている。
研究方法:
疫学研究:疾患既往歴と温泉利用状況をアンケート調査して、温泉利用の疾病罹患への影響を探るものである。65歳以上の別府市民2万人を対象とした。性別、年齢、給湯設備、温泉入浴頻度、温泉浸漬時間、温泉利用期間、温泉利用時間帯、生活習慣病をふくむ14疾患既往の有無をアンケート調査した。臨床研究:心筋症患者32名に対する2週間の入院温泉治療前後の心機能追跡と、入院鉱泥浴治療による疼痛緩和効果の検証、炭酸入浴剤利用による糖尿病患者のヒト血管内皮機能の変化の臨床研究を行った 動物実験:高血圧発症ラットに高食塩食を摂取させ、連日入浴させ高血圧発症抑制効果を検証した。細胞実験:ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を用い、42℃条件下でテロメア関連蛋白、ヒートショック蛋白、アポトーシス関連蛋白の発現の推移を観察した。
結果と考察:
アンケート疫学調査: 11,058通の有効回答を得た。性差、年齢分布が概ね全体像を反映していた。利用泉質は主に、単純泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉であった。温泉利用と既往歴の因果関係を探るのに、過去1年以内の疾患発症についての質問項目を設けた。疾患関連利用状況が、生涯既往と1年以内既往の両方で同様の結果であれば、温泉利用が疾患発症に何らかの影響を及ぼしたと予想される。最終的に、高血圧、高脂血症、うつ病、慢性肝炎、気管支喘息が候補として残った。高血圧や高脂血症の発症抑制は、虚血性心疾患、脳卒中、腎臓病、不整脈の発症抑止効果にもつながると予想される。泉質は、炭酸水素塩泉浴と塩化物泉浴に有用性が認められた。心筋症患者に対する温浴の効果:慢性心不全患者を対象に、入院温浴治療を行った。治療群において心機能マーカーであるBNPや炎症マーカーである高感度CRPが有意に低下した。血管拡張による循環動態への影響から、心不全に伴う有害な全身性の炎症性因子の排出を促進している可能性がある。糖尿病患者における炭酸入浴:24名の糖尿病患者を対象に、炭酸入浴剤入りの湯(~200ppm 炭酸ガス)に連日4週間入浴(16名)した。その結果、脈波伝導速度の低下とHbA1c8.0%以下の患者での血管拡張が観察された。これは末梢の動脈硬化の伸展抑制に有効と思われる。線維筋痛症患者への鉱泥浴の鎮痛効果:慢性疼痛性疾患である線維筋痛症患者16名に対する鉱泥浴の鎮痛効果を検証した。疼痛、うつ状態スケールの改善、CRPの低下を認めた。特に疼痛は半減した。鉱泥浴は、深部体温がよく上昇し、40℃10分の温浴でも著明な発汗が続く。このことが、疼痛原因物質の体外排出を促していると思われる。ラット温浴実験:ダール食塩感受性ラットを4週間高食塩餌とし、ケージで温浴させ、連日温浴群で高血圧発症が部分的に抑制された。その効果は心筋HSP90上昇と平行していた。これは、温浴による高血圧抑止効果と継続的温浴により心筋細胞機能の回復、長寿化の可能性を示唆している。ヒト臍帯静脈内皮細胞高温培養実験:42℃培養でテロメラーゼ蛋白や熱ショック蛋白発現の上昇やリン酸化p53の出現、抗アポトーシス効果が誘導された。これは一種のフォルミシス効果である可能性がある。
結論:
温泉浴に高血圧、高脂血症、うつ病、慢性肝炎、気管支喘息の予防効果、動脈硬化の伸展抑止効果、慢性疼痛緩和効果、心機能の改善効果、抗老化効果が伺えた。前述の疾患は、健康寿命、QOLに影響を及ぼす疾患である。というのも、これらは、虚血性心疾患、脳卒中、慢性腎臓病、動脈硬化性閉塞症、呼吸不全、肝硬変、肝がんの素地となるからである。これらの疾患は、超高齢社会において、予防と治療の一層の充実が求められている。わが国は火山国であり、温泉は至る所に存在する。この地の利を生かし、温泉を医療に応用することは、高齢者に優しく、医療費負担も少ないという、本邦が目指すべき医療の姿といえよう。
公開日 2015年09月11日
研究報告書

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公開日・更新日

公開日 2016年05月13日
更新日 -

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表紙

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目次

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総合研究報告書

総合研究報告書  [13.148MB]

研究成果の刊行に関する一覧表
 

公開日・更新日

公開日 2015年09月11日
更新日 -
行政効果報告(助成研究成果追跡資料)

文献情報

文献番号 201412013C

成果

専門的・学術的観点からの成果 培養実験でヒト臍帯静脈上皮細胞を42℃高温下で培養すると37℃の通常培養に比べ、テロメア関連蛋白の発現上昇とテロメアラーゼ活性の上昇を見た。また、高血圧モデル動物において、反復温浴による炎症性サイトカインの血中レベルの低下と心筋細胞でのテロメアラーゼ活性上昇を確認した。慢性心不全患者において、温浴による血中サイトカインの現象を確認できた。これらのことから、温熱による抗炎症効果と抗老化効果を示していると考えられる。
臨床的観点からの成果 温泉地別府市の65歳以上の高齢者対象の疫学的調査により温泉入浴が、高齢者における高血圧、高脂血症、うつ病、気管支喘息、慢性肝炎の発症を抑制する可能性が示唆された。治療効果として、鉱泥浴による線維筋痛症患者の疼痛軽減効果が確認できたこと、寝たきり患者の温泉タンク浴による難治性の仙骨部の褥瘡の治癒促進を見たこと、足湯による慢性腰痛の軽減効果、人工炭酸泉浴の糖尿病患者の末梢血管拡張効果を確認したことが挙げられる。以上から温泉浴の治療効果として創傷治癒促進、慢性難治性疼痛緩和効果が確認された。
ガイドライン等の開発 該当せず
その他行政的観点からの成果 該当せず
その他のインパクト 平成27年3月25日、平成24年度から平成26年度までの本研究の3年間の総括を、別府市市役所で記者報告した。この模様は、NHK大分、TOSで九州地域に放映された。同内容は、大分県地方紙の大分合同新聞、読売新聞九州地方版に掲載された。 平成28年12月13日 NHK全国ネットで、本研究成果の一部を紹介した。 平成28年12月25日 大分合同新聞で本研究結果を踏まえて、温泉の医用効果について紹介した。 平成29年6月20日  別府市姉妹都市提携記念訪問でニュージーランド ロトルア市にて本研究             成果の英語講演を行った。

発表状況

分類 種類 件数 備考
原著論文 和文 1件  
英文等 7件  
その他の論文 和文 0件  
英文等 2件 症例報告
学会発表 国内学会 2件 うち1件は招待シンポジウム
国際学会等 3件  
その他の成果 特許 出願 0件  
特許 取得 0件  
施策への反映 0件  
普及・啓発活動 3件 前項(その他のインパクト)参照

特許

分類 特許の名称 発明者名 権利者名 特許番号 出願年月日 取得年月日 国内外の別
               

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

  著者名 タイトル 雑誌名 開始頁
-終了頁
掲載論文のDOI(デジタルオブジェクト識別子)
原著論文 1 Toyoki Maeda1, Guan Jing-Zhi, Masamichi Koyanagi, et al.  Vascular endothelial cell surviving through under prolonged elevated temperature shows persistent or transient up-regulation of telomerase and stress-associated proteins  Applied Cell Biology   48-54  2014    
原著論文 2 oyoki Maeda1, Guan Jing-Zhi, Masamichi Koyanagi, et al.  X-irradiation alters the telomerase activity and the telomere length distribution of cultured human vascular endothelial cells  Applied Cell Biology  25-32  2014    
原著論文 3 Jing-Zhi Guan, Wei Ping Guan, Toyoki Maeda, et al.  Changes in telomere length distribution in low-dose X-ray-irradiated human umbilical vein endothelial cells  Molecular and Cell Biochemistry  396     129-135  2014  10.1007/s11010-014-2149-5 
原著論文 4 Toyoki Maeda1, Guan Jing-Zhi, Masamichi Koyanagi, et al.  Altered expression of genes associated with telomere maintenance and cell function of human vascular endothelial cell at elevated temperature  Molecular and Cell Biochemistry  397     305-312  2014  10.1007/s11010-014-2198-9 
原著論文 5 Jing-Zhi Guan, Wei Ping Guan, Toyoki Maeda, et al.  Patients with multiple sclerosis show increased oxidative stress markers and somatic telomere length shortening  Molecular and Cell Biochemistry  400     183-187  2015  10.1007/s11010-014-2274-1 
原著論文 6 Toyoki Maeda, Naoki Makino  Hot-spring-bathing accelerates wound healing of pressure ulcer of an unconscious patient  Applied Cell Biology  1-3  2015    
原著論文 7 Toyoki Maeda, Naoki Makino  Hot spring footbath is effective for low back pain  Applied Cell Biology  4-5  2015    
原著論文 8 前田豊樹、牧野直樹、前川真貴子、木本泰孝堀内孝彦  線維筋痛症患者の自宅人工炭酸浴による臨床検査地変化の検討  九州リウマチ  36     83-89  2016    
原著論文 9 Toyoki Maeda, Yoshihiro Kudo,Takahiko Horiuchi, Naoki Makino   Clinical and anti-aging effect of mud-bathing therapy for patients with fibromyalgia  Molecular and Cell Biochemistry         -       10.1007/s11010-017-3233-4 
原著論文 10 Toyoki Maeda, Koshi Mimori, Sadao Suzuki, Takahiko Horiuchi, Naoki Makino  Preventive and promotice effects of habitual hot spa-bathing on the elderly in Japan.  Scientific Reports  133-   2018  10.1038/s41598-017-18488-3 

公開日・更新日

公開日 2015年09月11日
更新日 2018年06月02日

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