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文献情報

文献番号 201235033B
報告書区分 総合
研究課題 遺伝子及び成分化学情報の多変量解析に基づく生薬及び漢方処方の品質評価法に関する研究
課題番号 H23-医薬-若手-015
研究年度 平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関) 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部) 
研究分担者(所属機関) 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部) 
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
開始年度 平成23(2011)年度
終了予定年度 平成24(2012)年度
研究費  
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
近年の急速な高齢化と疾病構造の変化に伴い,代替医療及びセルフメディケーションの担い手として,漢方医学が注目を浴びている.漢方医学における治療の本体は数百種に及ぶ生薬であるが,これらは天産品であるため基原植物種,産地,気候条件,栽培年数,加工・調製法などの違いにより,品質にバラツキが生じるという不安定な要素を含んでいる.本研究では,これまで限られた数の指標成分の分析により行われている生薬の品質管理の場に,近年,進歩の著しいケモメトリクスの手法を取り入れる事により,基原植物,生育環境,加工調製法など,品質の変化に寄与する因子を化学成分の総体として規格化(グループ化)することを目的とした.
研究方法:
汎用生薬であるシャクヤク及びカンゾウからなる最も単純な漢方処方の一つである芍薬甘草湯をモデル処方に選定した.先ず,各地産のシャクヤク及びカンゾウの試料を多数収集し,塩基配列解析を行い,基原植物及び遺伝子型の情報を整備した.また,同じ試料の水性エキスについて 1H-NMR スペクトル測定を行い,成分情報を網羅的に取得した.得られたデータマトリックスを PCA 解析に供し,成分パターンの分類を行うとともに,PLS-DA 解析を用いて,産地情報や遺伝子情報との相関関係を調べた.さらに,各成分パターンを有するシャクヤク及びカンゾウを用いて芍薬甘草湯を調製し,それぞれについて,1H-NMR スペクトルデータを測定し,多変量解析に供することにより,原料生薬の成分パターンと漢方処方の成分パターンとの相関関係を調べた.
結果と考察:
核 rDNA の ITS 領域の塩基配列解析の結果,シャクヤクは,南方系,北方系の 2 種に大別された.一方,カンゾウは,全ての試料がG. uralensis を基原としていることが明らかになり,さらに,葉緑体 DNA の trnH-psbA IGS 領域の塩基配列から,T-1, -2, -4 の 3 つの遺伝子型に分類された.また,西北カンゾウは東北カンゾウに比べ遺伝的多様性が大きいことが示唆された.1H-NMR スペクトルデータを用いた PCA 解析では,シャクヤクの成分プロファイルは,各産地別(中国,北海道,新潟,奈良)に分類された.因子負荷量の解析及び標準品とのスペクトルデータの比較から,それぞれの産地に特徴的な成分として,ペオニフロリン,アルビフロリンなど,8 化合物が同定された.一方,カンゾウは,PCA 解析において,明確な分類は見られず,成分変異の連続したパターンを示した.そこで,産地情報あるいは遺伝子型の情報を加え,PLS-DA 解析を行ったところ,東北カンゾウと西北カンゾウとを分類することが出来た.また,各遺伝子型による分類も可能であり,因子負荷量の解析から,T-4 型の遺伝子型を持つ試料が,他のものに比べ,グリチルリチン含量が高いことが明らかになった.日本薬局方では,カンゾウの規格基準の一つとして,グリチルリチン 2.5% 以上の含有を定めている.本研究では,カンゾウ試料の約 8 割を T-4 型の遺伝子型を持つものが占めており,局方の規格基準により,自ずとグリチルリチン含量の高い遺伝子型を持つものが市場で選択されていることがうかがえた. 各成分パターンを有するシャクヤク及びカンゾウより調製した芍薬甘草湯の PCA 解析では,第一主成分軸と第二主成分軸によるプロットが,原料であるカンゾウの成分パターンを反映し,第三主成分軸と第四主成分軸によるプロットがシャクヤクの成分パターンを反映する結果となり,シャクヤクとカンゾウを混合して抽出したことによる成分変化は,今回の結果からは,認められなかった.カンゾウ由来の成分が,シャクヤクのものに比べ,より累積寄与率の高い主成分軸で表現された理由としては,主成分分析では,数値の大きい変数が強調される傾向が見られることから,より多様な成分を含有するカンゾウの影響が強く表れたものと思われる.
結論:
今回の研究結果から,生薬の抽出エキスを混合物のまま,1H-NMR スペクトルを測定し,そのデータから,品質の違いをパターン分類出来る可能性が示された.また,因子負荷量を詳細に解析することで,品質の違いに寄与している成分の同定にも成功している.このことは,これまで生薬を規格化する上で,主に含量や特異性に基づいて定められていた指標成分を,より品質の違いに直結した成分に変更する道を開くものである.天産品であるが故に,品質にバラツキが生じやすいという不安定な要素を持つ生薬を,このような手法で規格化することは,臨床現場で用いられる生薬の品質の同等性確保に貢献し,より再現性の高い医療の実現に寄与するものと期待される.
公開日 2013年05月14日
研究報告書
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公開日・更新日

公開日 2014年03月11日
更新日 -

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