概要版

文献情報

文献番号 201205033A
報告書区分 総括
研究課題 先天代謝異常症等の治療のために特殊調合した調製粉乳(特殊ミルク)の効果的な使用に関する研究
課題番号 H24-特別・指定-026
研究年度 平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関) 大浦 敏博(東北大学大学院医学系研究科発生発達医学講座小児病態学分野) 
研究分担者(所属機関) 岡野 善行(兵庫医科大学)、山口 清次(島根大学 医学部小児科)、重松 陽介(福井大学 医学部)、高柳 正樹(千葉県こども病院)、藤原 幾磨(東北大学大学院 医学系研究科 小児病態学分野)、濱崎 祐子(東邦大学 医療センター大森病院 小児腎臓学講座)、虻川 大樹(宮城県立こども病院 総合診療科)、熊田 知浩(滋賀県立小児保健医療センター 小児科)、金森 豊(国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部)、佐藤 智英(女子栄養大学 短期大学部) 
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
開始年度 平成24(2012)年度
終了予定年度 平成24(2012)年度
研究費 4,950,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
 先天代謝異常症等の治療における特殊ミルクの適応や効果的な使用方法について調査研究を行い、より適切な治療を進め、先天代謝異常症等に罹患している児における障害の発生予防に寄与することを目的とする。
研究方法:
1)特殊ミルクの適応疾患とその問題点の整理  糖質、アミノ酸、有機酸、脂肪酸、尿素回路の各代謝異常症、小児腎疾患、内分泌疾患、消化器疾患、神経疾患、小児外科疾患ごとに特殊ミルクの適応について、病態生理およびこれまでの治療成果等に関する文献を収集・解析し、医学的に整理する。  対象となる特殊ミルクは「代謝異常児特殊ミルク供給事業」により登録品として国の補助を受け無償で提供される25品目と登録外品として全額企業の負担で供給される13品目である。 2)食事療法ガイドラインの作成  すでに作成されている先天代謝異常症に加え、小児腎疾患及び小児神経疾患における特殊ミルクを用いた食事療法に関する基本や効果的に食事療法をすすめるための指針をまとめる。
結果と考察:
 昭和55年に先天代謝異常児の健全育成のために開始された特殊ミルク供給事業は国の補助と乳業メーカーの協力のもと、30年以上にわたり特殊ミルク(登録品目)の安定供給に寄与し、わが国の先天代謝異常児の予後の改善に大きく貢献してきたことが明らかとなった。国庫補助の対象外だが、小児慢性腎臓病、難治性てんかんの治療にも特殊ミルク(登録外品目)が有効であり、多く使用されていることも示された。    今後の特殊ミルク安定供給に向けて、以下の課題が明らかになった: 1)特殊ミルクに関係する制度  登録品及び登録外品は食品衛生法における食品として位置づけられ、乳・乳製品の規格が該当するが、先天代謝異常等の疾患の治療をも目的とする特殊ミルクの特性に配慮した規格ではない。特殊ミルクが現状では、医薬品、登録品、登録外品の3つの枠組みに分散しており、今後はこれらを包括的に取り扱う新たな枠組みが必要である。 2)成分組成  特殊ミルクは精製原料を使用することが多く、その精製過程で多くの微量栄養素が欠落する。食品添加物として調製粉乳への使用が許可されていない微量成分については、補充する手段がなく、欠乏リスクが懸念される。 3)改良・新規開発  最新の乳児栄養学の知見に基づいて開発・改良を行なうには、人的・経済的負担が大きいことに加え、市販品ではないためにそれら費用を助成金申請時の製造原価に算入させることが出来ない実情にある。改良・開発のためには、経済的支援が必要と考えられる。 4)製造・供給  登録特殊ミルクの出荷量は増加傾向にあるが、補助の限度額は本事業発足当時の製造原価半額を目安にしており、製造原価の半額が補助の限度を大幅に上回る品目も存在する。また、国庫補助事業の特殊ミルクの対象年齢は、20歳までに限られており、20歳以上で登録特殊ミルクを必要とする患者に対しては、企業の全額負担により供給(全体の約13%)しており、安定供給上の課題がある。  登録外特殊ミルクは企業の全額負担で供給されているが、小児慢性腎臓病の治療に必要な低カリウム・中リンフォーミュラおよび難治性てんかんに用いられるケトンフォーミュラは使用量も多く、安定供給を継続させるための新たな方策が必要である。  また、災害や突発的な事故により製造が不可能となった事態に備え、拠点倉庫の分散化や在庫量の十分な確保、海外からの緊急輸入などの手段も確保しておく必要がある。  最後に、患者指導に有益な特殊ミルクを用いた食事療法のガイドラインを作成し、疾患ごとに具体的な献立表も示した。さらに広く特殊ミルクの知識を啓発する為、冊子「特殊ミルクの適応症と食事療法ガイドライン」を作成し、特殊ミルクを扱う関係各所に配布することとした。  従来、特殊ミルクの研究は先天代謝異常症領域に対するものが先行していたが、本研究はその他の小児科関連学会(腎、内分泌、消化器、神経、外科等)の専門医と連携・協力して行った初めての調査研究である。更に厚生労働省の供給事業である特殊ミルク共同安全開発委員会とも連携し、乳業メーカーの意見を聴取しつつ研究を進めることで、わが国の特殊ミルクをめぐる専門家による研究体制が初めて組織された。  本研究では特殊ミルクの制度上の位置づけ、微量栄養素の欠乏、改良開発および製造・供給上の課題、対象年齢の拡大など様々な問題点が明らかにされた。これらの解決に向けて関係学会とも協力し、長期的視野に立ち、継続的に取り組む必要がある。
結論:
 30年以上にわたる特殊ミルク事業は先天代謝異常症患児の予後改善に大きく寄与した。今後、本研究で明らかとなった安定供給上の課題の解決に向けて取り組んでゆく必要がある。
公開日 -
研究報告書

ファイルリスト

公開日・更新日

公開日 -
更新日 2013年10月31日

行政効果報告(助成研究成果追跡資料)

文献情報

文献番号 201205033C

成果

専門的・学術的観点からの成果  昭和55年に先天代謝異常児の健全育成のために開始された特殊ミルク供給事業は国の補助と乳業メーカーの協力のもと、30年以上にわたり特殊ミルク(登録品目)の安定供給に寄与し、わが国の先天代謝異常児の予後の改善に大きく貢献してきたことが明らかとなった。さらに国庫補助の対象外だが、小児慢性腎臓病、難治性てんかんなどの治療にも特殊ミルク(登録外品目)が有効であり、多く使用されていることが示された。
臨床的観点からの成果  今後の特殊ミルクの安定供給に向けて(1)特殊ミルクの制度上の問題、(2)微量栄養素欠乏など成分組成の問題、(3)改良・新規開発における経済的問題、(4)製造・安定供給上の問題、対象年齢の拡大の必要性など様々な課題が明らかにされた。これらの解決に向けて関係学会とも協力し、長期的視野に立ち、継続的に取り組む必要がある。
ガイドライン等の開発  患者指導に有益な特殊ミルクを用いた食事療法のガイドラインを作成し、疾患ごとに具体的な献立表も示した。さらに広く特殊ミルクの知識を啓発する為、冊子「特殊ミルクの適応症と食事療法ガイドライン」を作成し、特殊ミルクを扱う関係各所に配布することとした。
その他行政的観点からの成果  特殊ミルクを必要とする疾患の食事療法基準が整理され、具体的な食事療法のガイドラインを作成したことで患児の障害の発生予防が期待される。また、特殊ミルクの有効性についてエビデンス評価を行い、適応疾患の整理を行ったことで、今後代謝異常児特殊ミルク供給事業がより効果的・効率的に運営される資料となる。
その他のインパクト  従来、特殊ミルクの研究は先天代謝異常症に対するものが先行していたが、本研究はその他の小児科関連学会(腎、内分泌、消化器、神経、外科等)の専門医と連携・協力して行った初めての調査研究である。更に厚生労働省の供給事業である特殊ミルク共同安全開発委員会とも連携し、乳業メーカーの意見を聴取しつつ研究を進めることで、わが国の特殊ミルクをめぐる専門家による研究体制が初めて組織された。

発表状況

分類 種類 件数 備考
原著論文 和文 0件  
英文等 0件  
その他の論文 和文 5件  
英文等 0件  
学会発表 国内学会 2件  
国際学会等 0件  
その他の成果 特許 出願 0件  
特許 取得 0件  
施策への反映 0件  
普及・啓発活動 1件 H27年12月13日フクラシア東京ステーションにて日本小児連絡協議会治療用ミルク安定供給委員会主催の第2回治療用ミルク安定供給のためのワークショップを開催し、約80名の参加を得て、成功裡に終了した。

特許

分類 特許の名称 発明者名 権利者名 特許番号 出願年月日 取得年月日 国内外の別
               

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

  著者名 タイトル 雑誌名 開始頁
-終了頁
掲載論文のDOI(デジタルオブジェクト識別子)
                 

公開日・更新日

公開日 -
更新日 2016年06月14日

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