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文献情報

文献番号 201205026A
報告書区分 総括
研究課題 原発事故に伴う放射線に対する健康不安に対応するための保健医療福祉関係職種への支援に関する研究
課題番号 H24-特別・指定-021
研究年度 平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関) 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部) 
研究分担者(所属機関) 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)、山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)、寺田 宙(国立保健医療科学院 生活環境研究部)、志村 勉(国立保健医療科学院 生活環境研究部)、奥田 博子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)、金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター)、堀口 逸子(順天堂大学 医学部 公衆衛生学教室)、倉橋 俊至(渋谷区保健所)、宮崎 真(福島県立医科大学 放射線健康管理学講座) 
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
開始年度 平成24(2012)年度
終了予定年度 平成24(2012)年度
研究費 9,000,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
福島県による県民健康管理調査によれば東京電力福島第一原子力発電所事故後、外部被ばく線量は99%以上が10mSv以下であり、厚生労働省による内部被ばく線量評価においても平均で0.1mSv程度と避難措置、飲食品のモニタリング対策等が有効に機能し被ばく線量は限定された範囲にある。 一方、福島県のみならず全国においても放射線に対する高い不安の声がある。その背景には事故当初からの情報発信のあり方も大きな問題であったと思われ、多くの関係者を交えて双方向でコミュニケーションを図ることが必要である。そのような中、地域の保健医療福祉職が住民から放射線による健康影響等に関する相談を受けた際に適切に対応するための知識や技能を習得するため、事故に伴う放射線による健康影響等に関する研修を含めた支援のあり方について検討することを目的とした。
研究方法:
東京電力福島第一原子力発電所事故後の福島県内の公衆衛生課題の抽出を試みた。これらをもとに原発事故に伴う放射線に対する健康不安に対応するため、放射線・放射能に対する基礎知識を有し、住民からの質問に対し対応できる人材の養成を目指し、「原子力災害時の健康不安対応モデル研修」の教材を開発し、実際に研修を開催し、対応に必要な知識・技能の習得のあり方について検証した。それらの結果を踏まえ、自治体の保健師等が放射線に対する健康不安に対応するための知識・技能を習得する際の支援のあり方についてまとめた。 あわせて、事故後浮き彫りとなった原子力災害時の公衆衛生上の課題、および事故を契機として改正が進められた各種法令や地域防災計画などについても概説した。
結果と考察:
福島県内の実情として、放射線問題に対する対応だけで無く、生活習慣に関与する疾患の発症予防に向けて、地域の医師会や市町村の保健担当者などと連携し、住民と関係スタッフが一体となって一次予防への関心を底上げしていくことの重要性が指摘された。そのような中で放射線・放射能に対する基礎知識を有し、住民からの質問に対し対応できる人材の養成を目指すには、担当する者からの信頼を得ることは必須であり、人材となるべき現地の保健福祉担当者のニーズをしっかりと吸い上げ、それに応えることが信頼形成に繋げるために重要であることが指摘された。 原発事故後の地域での保健医療福祉関係職種が関わる放射線リスク・コミュニケーションの困難さを分析した結果、抽出された課題として、(1) 福島県内の保健医療福祉関係職種自身が、放射線リスクやその対策に関して何が正しいのか困惑している。 (2) 現場での問題解決モデルがイメージされ難い。問題解決が現場に押し付けられ、重責となっていると認識されている。(3) 福島県外では、放射線防護対策の実施による放射線リスクの制御の成功により、問題への関心が低下している。このことが、福島県の復興阻害となることが懸念される、などが、あげられた。 このような背景のもと、この事態を打開するために、リスク・コミュニケーションの視点を取り入れた、双方向で受講者間のコミュニケーションを促進し、人々の考え方がそれぞれ異なることの再認識を起点として課題解決に取り組むアプローチを取り入れた研修モデルを作成し、試行した。その結果、福島県内の保育士対象のモデル研修ではよく受け入れられ、プログラム内容が概ね支持された。研修中に抽出された福島県内の保育士が日常業務で課題と考えていることのトップ2は,職場内での意見の違いへの対応、保護者への対応であり、放射線・放射能に関するだけで無く、コミュニケーションのあり方が課題であった。地域活動支援でのニーズとデマンドとのギャップがあり、このうち、外部からの人的資源の活用を阻害する要因を解消するには、地域メディエイターの養成と活用が考えられる。
結論:
本研究班では、放射線に対する健康不安に対応するためのモデル研修を作成し実施した。放射線・放射能に関する基礎知識の伝達は今後も継続して必要であることが認められたが、それ以上に保健医療福祉職に対するリスク・コミュニケーションについて、日頃よりその概念だけで無く具体的な技術を含め習得する必要性が示された。 また原子力災害における公衆衛生対応については、当該災害の広域性を勘案しつつ、平時からの人的、物的な体制の構築と、迅速な情報把握に基づく住民避難が急務であり、とりわけ一連の対策を円滑に進めるためには、訓練等を通じた国、都道府県、市町村の連携体制の確認と強化が求められる。 今後長期的に向き合っていかざるを得ない、低線量・低線量率放射線の健康リスクに関し、健康リスク要因の一つとして、ほかのリスクと同様に多角的にとらえ、より健康的な生活が営まれるように一次予防に目を向けた保健医療対応と支援が継続かつ着実に実施されることが望まれる。
公開日 2015年06月12日
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更新日 2013年10月31日

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